MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

然修録103(ミワラ<美童>学級の学問日誌)R3.8.8(日) 朝7時配信

#### サギッチの座学「奇怪な病魔! {怠慢|たいまん}な健康欲と、{危|あや}うい権勢欲」{然修録|103} ####


 『{何故|なぜ}、{お偉いさん|エリート}は、道を誤るのか』 《怠慢な健康欲が、エリートたちの適応力を、{蝕|むしば}む》《危うい権勢欲が、エリートたちの血を、{惑|まど}わせる》
   少年学年 サギッチ 少循令{猛牛|もうぎゅう}

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。

      **{主題と題材と動機|モチーフ}**

   《 {主題|テーマ} 》

 何故、{お偉いさん|エリート}は、道を誤るのか。  

   《 その{題材|サブジェクト} 》

 怠慢な健康欲が、エリートたちの適応力を、蝕む。
 危うい権勢欲が、エリートたちの血を、惑わせる。
 
   《 この主題と題材を選んだ{動機|モーティブ} 》

 オオカミ先輩の後裔記……*未知*なる{理解を絶する狂気|クレイジー}との遭遇!
 文明{民族|エスノ}の掘り屋の技師長が、自ら「クレイジー!」と断ずる彼ら文明界の{お偉いさん|エリート}たち……。
 高い教養を身に着けているはずのエリートたちは、何故血迷ってしまうのか。これは、文明の{奴|やつ}らに限らず、その原因を、知っておく必要がある……と、思った。

      **題材の{講釈|レクチャー}**

   《 怠慢な健康欲が、エリートたちの適応力を、蝕む 》

 息恒循が、この怠慢な健康欲に、警告を発している。

 恒令の一日目(日曜日)、七養……その一つ目。
 「時令(季節)に{順|したご}うて{以|もっ}て元気を養う」
 夏は夏らしく、冬は冬らしく、天候に逆らわず、季節を肌身で感じる生活をする。

 恒令の四日目(水曜日)、五省……その三つ目。
 「氣力に{缺|か}くるなかりしか」
 物事を成し遂げようとする精神力は、十分であったか。

 イギリスの社会学者で、警句と逆説の大家、そして詩人でもある{G・チェスタートン|Gilbelt Keith Chesterton}(一八七四~一九三六)の論説……その痛切な社会批判を読んで、直ぐに、以上の二つの自反材料が、頭に浮かんだ。
 その*痛切*な論説が、これだ。

 「医者の話の誤りは、健康の観念と養生の観念とを結びつける点にある。健康は養生とどういう関係があるのだろうか。
 むしろ健康は不養生と関係がある。
 (中略)
 健康は、みずから努力する必要のない、医者が与えてくれるもの、あるいは薬屋で買う薬品によって受動的に到達する状態であるというような幻想を与えてはならない。
 健康は、創造的な生活方法に依存するのであり、変化してやまない環境から絶えず起こってくる予想できない挑戦に対して、人間がどのように反応するかということに係るのである。
 安全・快適を{是|こ}れ求め、苦痛と努力をひたすら避けようとする過度の関心は、経済的・生物学的に危険性を有するものであり、事実、社会的・民族的自殺にひとしいということを認める勇気がなければならない。
 個人の適応力を高め、遺伝的悪化を防ぐ方法を発見しないならば、将来われわれは生命の健全さと、その多くの価値を犠牲にして、ただ命を延ばそうとして、いたずらに一の保護法から他の保護法へと{狂奔|きょうほん}するにすぎぬことになるであろう」

 痛切……とは、解説の必要のない論法のことだと思う。
 逆説……とは、まだ「逆説」という言葉が無かった明治時代、この逆説のことを、「*奇怪*に{以|もっ}て{反|かえ}って道理ある説」と、言っていたそうだ。

 「自然治癒力の退化の原因は、自力養生力の低下が原因だッ!」と、いうことだ。
 他力……薬や注射に、頼り過ぎる。{即|すなわ}ち、自然力の鍛錬{陶冶|とうや}を、{怠|おこた}ったということだ。それが{故|ゆえ}に、身体、生理、精神、心理、性理、命理が、悲劇を{蒙|こうむ}る。
 健康のための真の妙薬とは、養生のために、その鍛錬陶冶の材料となるものでなければならない。それ即ち、病弱、愚鈍、貧乏、多忙といった、{所謂|いわゆる}逆境と呼べる境遇。
 その*逆境*こそが、正に、G・チェスタートンが言う、「変化してやまない環境から絶えず起こってくる予想できない挑戦」なのだ。

 これを、植林された樹木の健康に、{譬|たと}えることができる。銘木を育てるためには、苗木を、荒れた土地に植え、しかも、見るからに{犇|ひし}めいているような、密植でなければならない。
 これ正に、逆説!
 この逆を、元に戻そう。
 苗木を、よく{耕|たがや}され、培養された{沃土|よくど}……即ち、豊かな、肥沃な土壌に、{疎植|そしょく}するということ。
 で、その結果は、どうなのだろう。
 なんとーォ!!
 ゆったりと、密を避けて植えてしまうと、直ぐに、ダメになる。
 最初は、すくすくと伸びる。
 でも、*ひ弱*で、虫害や風水害で、{脆|もろ}くも、直ぐに、枯れてしまう。無事に育って伐採してみると、その切り口は{粗笨|そほん}……荒くて、スカスカで、木材としては、「役に立たん!」と、相成る。
 これも、痛切な逆説……奇怪な道理だと思う。

 人間も、幼いころに甘やかされたり、{放|ほ}ったくられたりして、{躾|しつけ}を放棄されて育ってしまうと、大人になったときに、斯う言われてしまう。
 「頭を使え! 考える頭が無いんなら、黙ってろッ! 手を出すなッ! まったく、使いものにならん{奴|やつ}だ」……と。
 斯う言われた次の瞬間から、何をやっても、周囲のすべての人から、何も言われなくなってしまう。これと、まったくよく似た{場合|ケース}がある。長年の修行が実って、認められた瞬間だ。
 認められたのか、{将又|はたまた}見放されたのか……それを判別できない人間のことを、「馬鹿」と呼ぶ。言わずもがな、馬や鹿には、まったく迷惑な話だ。

   《 危うい権勢欲が、エリートたちの血を、惑わせる 》

 名誉と、権力……。
 大人に近づくに{順|したが}って、その**欲**が、俄かにそして、時に矢庭に、増大してゆく。驚くべきことに、才能、知力、成功などを、努力や幸運によって掴んだ人たちほど、その欲望は、強く{漲|みなぎ}る。
 女性にしてみても、日本では、大奥という社会組織。大陸中国では、則天武后などの高位な婦人たち……等など。残念ながら、「女性は例外♪」とは、どうにも、言えそうにない。

 {順|したが}ってというか、国家という組織も、国民という個人も、この〈欲〉に{冒|おか}された政治により、強く支配されるようになる。
 すると、この〈欲〉を欲する国民たちもまた、猫も杓子も、*政治*屋になりたがる。
 片や、人というものは、不思議と、{斯|こ}う言うのだ。
 「誰が、あんな奴を選んだんだァ! 大臣ってのは、馬鹿ばっかりじゃないかァ!」……と。
 その実……実際に、その大臣になてみると、なんと漏れなく、その*馬鹿*になってしまう。この*漏れなく*が、言い過ぎではないということの、いい{論的証拠|エビデンス}が一つ、ここにある。

 その*ここ*とは……敗戦後の政界。
 遂にというか、「やっちまった!」というか、{兎|と}にも{角|かく}にも野党が、政権を取ってしまった。飛ぶ鳥を落とす勢いで、中国共産党に大挙して挨拶旅行をしていた社会党……その、俗にいう〈片山内閣〉のことだッ!
 権精力の象徴の**大臣**という呼称を、毛嫌いしていたその野党の面々……国民はみな、「大臣っていう呼称は、これで、無くなるなーァ!!」と、誰もが、信じて疑わなかった。
 事実、野党当時の彼らも自ら、そんな声を挙げていたそうだ。
 ところがだッ!
 実際に政権を取って、大臣に就任してみると、「あら不思議ーぃ!!」
 みんな、{嬉々|きき}として、「おれは、大臣だぢょ! わたしは、大臣なんですからねぇ!」と、まァ、なんだか知らないけど、みんながみんな、得々として大臣たる自分を誇って、自慢に余念が無いという顛末だったみたいだ。
 まァ所詮、「その程度のもんだ」ってことを、自ら、ご親切に、証明して見せてくれたという{訳|わけ}だ。

 では、この**大臣**!
 一体全体、本来、どういうものなのだろうか。
 それは、飽くまで政治の世界に限っての話だけれども、大臣とは、国民の中の{選|え}りすぐりのエリートたちを代表する、究極の*エリート*でなければならない。なので、政治屋のことを、昔から……「聖職」と、呼ぶのである。
 {何故|なぜ}聖職と呼ばれるかと言えば、その職分が、国民生活と直結して、多大な関係を持っているからだ。
 なので、当然だけど、世の中が乱れれば乱れるほど、大臣たるは、鍛え抜いて体得した{勝|すぐ}れた精神脳力を有している……それ正に、**{曲者|くせもの}**でなければならない。
 (そんな{凄|すご}い人が、政治屋になんか、なるはずないじゃん!)と、常識ある人なら、そう思って、当然だ。
 それでも、アメリカの著名な政治学者、ジェームス・バーナムという人は、共産主義を一旦は肯定する構えで徹底研究し、結果的に、共産主義に絶望したそのとき、彼の著書『マキャヴェリアンズ』の中で、こんなことを論じている。

 「即ち、理由の{如何|いかん}を問わず、ある社会のもっとも確実な現実の相違は、その社会のエリートの相違である。
 その社会がどういうエリートを持っているか、そのエリートがどういう実質を持っているかによって、きまる。
 政治学とは、このエリートを{如何|いか}に組織するかの学問であり、革命とは、そのエリートの社会に{於|お}ける急激な交代・変化を、言うのである。
 それは、エリートがエリートたるの使命や責任を忘れて、私欲{安逸|あんいつ}に{耽|ふけ}り、その実力を失って、世人の{軽蔑|けいべつ}や反感をかうに至る時に、必ず起こるものである。
 真の政治的自由とは、このエリートに対する正しい批判、及び反対を行う精神や力を、国民が持つことである」

 今どきの政治屋が馬鹿ばっかなのは、子どものおれにだって判るけど、このバーナムさんの論考を読んで、如何にも平易で解り{易|やす}くて、妙に納得できるのは……はてさて、喜ぶべきか、{嘆|なげ}くべきなのか……。 
 
      **{蛇足|スーパーフルーイティ}**

 本当は、オオカミ先輩の後裔記で、一番気にかかったのは……。
 「*未知*なるジジッチョの、不可思議な狸寝入りだァ!」……みたいな(ポリポリ)。
 オオカミ先輩は、その狸寝入りを、瞑想と表現していた。瞑想と言えば、*ひと頃の*ヨッコ先輩の、{十八番|オハコ}!
 でも、寺学舎の座学で、その瞑想が説かれることはなく、代わりに題材にされたのが、{成唯識論|じょうゆいしきろん}と、{莫妄想|まくもうそう}なのだった。
 莫妄想は、それなりに、然修録で論じ合った。
 でも、唯識のほうは、その言葉を記憶に留める程度の浅い学びで、{未|いま}だに立ち往生している。
 ……何故、誰も、取り上げないのか。
 その理由は、恐らく、たぶん、絶対にだけど、おれらが大の苦手とする……あれ。
 小難しいからだァ!
 ……と、思ったので、これを主題にすることは、パスすることにした。
 (ポリポリ♪)と、頭の中で、頭を{掻|か}くおれ……是まさに、(アセアセ)。

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後裔記106(ミワラ<美童>学級の冒険日記)R3.8.7(土) 夜7時配信

#### オオカミの歩学「偏屈の進化! 銭湯演説とアース焼却炉の秘密」{後裔記|106} ####

 《偏屈に{類型|パターン}あり! 和の{民族|エスノ}》《忍び寄る{危機|デインジャラス}! 偏屈に思い{遣|や}りあり》《聴衆はスパイの皆さん! ジジッチョの銭湯演説♪》
   学徒学年 オオカミ 齢13

 体得、その努力に{憾|うら}みなかりしか。

   《 偏屈に類型あり! 和のエスノ 》

 まァ、おれから説明するのが、筋だろう。
 言わずもがな……サギッチの後裔記。
 あいつも、考察の腕を、まァ*随分*とまでは言わないまでも、*随分*と、上げたもんだなッ! ……(ポリポリ)。
 結局、ジジッチョは、瞑想から戻って来たかと思うと、直ぐにむくっと立ち上がり、そのまま、長屋の端っこのムロー先輩たちの住戸から、出て行ってしまった。
 なので、ジジッチョが、六年前に何を体験したのか、おれも含めてみんな、聴けず仕舞いとなってしまった。
 瞑想の前は、あれほど機嫌よくベラベラとよく喋っていたのに、まるで人が変わったかのように、無言で、愛想笑いの一つも見せず、立ち去ってしまったのだ。
 マゴッチョ君も、どうやら、面{喰|くら}ったみたいだ。{如何|いか}にも、{如何|いかん}ともし{難|がた}く……といった感じで、ジジッチョにくっついて、一緒に出て行ってしまった。

 あの二人は、和の{民族|エスノ}なのだ……たぶんだけど。
 でも、間違いない。
 しかも、文明の{奴|やつ}らと通じているような心配も、必要ない。{寧|むし}ろ、逆だ。おれら自然{民族|エスノ}の、しかも{鷺|サギ}助屋に近いほどの嫌悪と敵意を、文明の奴らに対して、抱いている。
 だが、今思い出してみると、文明の奴らに関わる{話題|トピック}になると、パタッと{饒舌|じょうぜつ}が{已|や}み、巧みに話題を、すり替えてしまう。
 それが、まったくのごく自然で、今思い出して、よくよく考えてみて、やっと気づくことができるという……まったく見上げた、**{曲者|くせもの}**の{仕業|しわざ}に違いなかった。

   《 忍び寄る危機! 偏屈に思い遣りあり 》

 ジジッチョたちが立ち去った後、おれは{暫|しばら}く、沈黙の{体|てい}だった。何を言葉にすればいいかが判らず、しかも、特にその必要も、感じられなかった。
 でも、沈黙とか瞑想とかが、どうも……どうにもこうにも苦手みたいな……おれたち、ムロー学級!
 {俄|にわ}かに、騒々しく……成りゆく。
 その口火を切ったのは、意外にも、*その*ムロー先輩だった。

 「賢明な爺さんだ。孫っちにしてみても、さすがは、その爺さんの弟子と言うだけのことはある。
 心得ている。
 ジジチョウは、俺たちの身の上を、気{遣|づか}ってくれたのだ。それは、俺が言ったことを、ちゃんと熟考してくれていれば、直ぐに判ることだ。どうしてこの島で、次の百年ごとの戦乱も、次の天地創造も、どちらの話題も、{禁句|タブー}なのか……。
 情報を共有するということは、己に迫っている危険も、共有させてしまうということだ。だからこの島の人たちは……和の民族っていう人{等|ら}は、何を語るにしても、慎重なのだ。
 しかもだ。その{危|あや}うい情報を共有することによって、共有したが{故|ゆえ}に、その危うさが、突如! 増大してしまう……ってことだって、あるんだ。
 だからだ。
 この島で生きるということは……それを、俺たちに置き換えて考えてみれば、この島に{居|お}る間は、目立たぬように、言動には慎重に慎重を重ねて、気づかぬふりをして、と同時に、誰からも気づかれないように、最善の注意を払わねばならぬ。
 ……と、いうことだ」

 続けて、スピア、言った。
 「じゃあ、ジジッチョは、その危うい情報を共有しちゃったから、今、身の上が、危うい状況にあるってことーォ??」
 「まァ、そうだ。たぶん」と、ムロー先輩。
 「じゃあ、あのマゴッチョも、危ういってことォ?」と、これは、ムロー先輩の同居人……ツボネエ!
 「これこれ、ちゃんと、シノマゴ君と呼んであげなさい。てか、ジジッチョとは、なんだッ! ジジチョウ様……とまでは言わんが、せめて、ジジチョウさんと、お呼びしろッ!」と、{堅物|カタブツ}ムロー先輩。
 「お言葉を、返すようなんだけどさァ。あたいら、{面倒|めんど}っちいのが苦手だって、知ってるよねぇ?」と、出たーァ!! マザメだ。
 「わかった。好きにして、よし♪」と、ムロー先輩。
 あっさり、降伏!
 「わかったんかい! しかも、あっさり……」と、サギッチ。
 やっぱり、そう思うよなァ……(ほれほれ、ほれみいやーァ♪)と、陰湿に心の中で思うおれ。

 「そうと決まったら、銭湯だねぇ♪
 あの黒い顔は、日焼けじゃない。炭っしょ!
 じゃあ、銭湯に直行するはずが、ここにちょっとだけ、寄り道したってことだよねぇ? だったら、行こうよ、銭湯♪」と、これは……そう、言わずもがな、頼れる後輩……スピア!
 「{危険|デインジャラス}、好きだもんねぇ。アニキーぃ♪」と、ツボネエ。
 「わざわざスパイの溜まり場に行って、デインジャラスを共有する必要が、どこにあるんだァ! 大衆浴場も、大衆病院も、スパイにとっちゃーァ、欲しい情報の宝庫だろうがーァ!!」と、ムロー先輩。
 ここは、正論を{楯|たて}に、*断固拒絶*!の構え……。
 (まァ、当然だけど……)と、思うおれなのだった。

   《 聴衆はスパイの皆さん! ジジッチョの銭湯演説♪ 》

 で、その銭湯の脱衣場……。
 ジジッチョが、{残響音|エコー}をバリバリに利かせて、喋り出した。

 「じゃあ、手短に。
 湯冷めすると、明日の仕事に、響くでなァ。
 明日と言っても、炭鉱に、今日も、明日もない。
 延々と、労働が続く。
 眠らない、黒い職場……。
 じゃから、夜明けとも、無縁なのさ。
 まァ、それは、それ……{閑話休題|さても}じゃ。
 二つ、ある。
 一つ。次の天地創造で、この星は、荒れる。
 もう一つは、この星の、完全消滅についてだ。
 あれは、六年前のことだった……。

 わしは、{日|ひ}の{本|もと}の内地で、掘っとった。
 列島の、南西辺りだ。
 子どもたちは、炭坑節を、歌っとった。
 若い技師が、わしのところに駆けて来た。
 そして、言った。
 『技師長!
 文明野郎たちの穴と、貫通しちまいまいまい……ですです! めっちゃ、横柄な{奴|やつ}らです。
 まるでおれたちが、非国民みたいに、言いやがる。
 世界中に指名手配された、まさに凶悪犯人の扱いですよ。
 なんなんですかァ……アイツらァ!』

 ……と、その言葉を聞いて、わしは、直感した。
 文明人たちが、この星を、{亡|ほろ}ぼす。
 わしは、その掘り屋の文明人とやらに、直接、問うた。
 『どういう{料簡|りょうけん}だ。貴様らァ!』……となァ。
 すると、文明の掘り屋の技師長は、{斯|こ}う答えた。

 『横方向の地底網には、地上のゴミを運び入れる運搬装置……ベルトコンベヤーや、チェーンコンバヤーが、連なる。
 縦方向に掘られたクレイジーな穴は、この星のマグマへと延びてゆく。せっかく数十種類に分別された個々の自律したゴミゴミが、再び、グチャグチャに一緒に混ぜられて、シャブシャブの溶岩の中に、放り込まれて、溶け込んでゆく……。
 ヨコ方向は{兎|と}も{角|かく}としても、タテ方向の穴のクレイジーな使い道は、オレのボンクラ頭で考えたって、絶対に知られちゃなんねぇ、国家機密ってもんだろォ?
 それが、一つ裏の道には入った日にゃあ、国家機密もダーァダーァの垂れ流しってもんよォ!
 
 オレ{等|ら}文明界のお偉いさんたちゃーァ、確かにスパイをバンバン飛ばして、{余所|よそ}さんの極秘の計画にゃーァ敏感なんだが、逆に、余所さんから来なすったスパイさんたちまで、律儀に*おもてなし*をしちまうっていう、どうしようもないナイーブ症候群の重症患者ってわけさ。
 まァ……それは、それ。
 *それ*で済まされねぇのは、そっちじゃねぇんだ。
 タテ穴のクレイジーの話を耳にしたら、おまえさんなら、どうするよォ! 今じゃ、家庭ゴミの分別だけで、廃棄ゴミと再生ゴミを{併|あわ}せて見ろよッ! 30種類に迫る勢いなんだぜぇ。
 そんなに苦労して分別したリサイクルゴミが、またぜんぶ一緒に、マゼコジャにされて、巨大なアース焼却炉に、ポイッ♪ ……だなんて、そんな裏切りの現実を知っちまったら、どうするよォ!

 オレたちゃーァ……さァ。
 分別専用の部屋に、ゴミ箱を30個に並べてさァ。朝も早よから、せっせとゴミを洗ってさァ。水に浸してラベル{剥|は}がして、ハサミで切り開いて、材質見て、色も見てさァ。真面目に、30個のゴミ箱に、分別してんのさァ。
 しかもさァ!
 その分別したゴミを、いざ捨てる段になったら、こんどは、七面倒臭いルール、ルール、ルールさッ!
 人をバカにしたクレイジーな秘密を知っても、まだそこまでする律儀な人間が、どこに{居|い}るっていうのさァ! もし居たとしたら、そいつこそが、見上げたクレイジーさァ♪
 分別も、リユースも、リサイクルも、ゴミを原料ペレットに戻しっちまうっていう魔法みたいなリジェネレーションも、なんもかんも、{面倒|めんど}っちいことはすべて、結局は、お偉いさんたちのクソ!みてぇな、無意味で無駄な大義名分のためだけに過ぎないのさァ。
 そのうち、オレたち人間も分別されて、集められたら、陰でグチャグチャに混ぜられて、生きたまま、*半永久*の地球焼却炉に、**ポイーッ♪**……てなもんさァ♪』

 まァ……そういうことだ。
 そのときは、気づかんかったんだが……。
 なんでわざわざ、地球に*半永久*っていう、期間限定の言葉を、付け加えたんだろう……って、後になって、どうにも、気に掛かりはじめっちまってなァ!
 {奴|やつ}……その、文明野郎の掘り屋の技師長は、気づいたのさ。この星の消滅は、そう、遠くないってことをなァ。
 ひょっとすると、それは、次の天地創造よりも、早いのかもしれん……となァ」

 ここで……。
 湯冷めの危険を肌身で感じ取ったんだろう。
 ジジッチョは、そこで、話を切ってしまった。
 {俄|にわ}かに、{現|うつつ}の陽が{傾|かし}ぎ、息恒循の伝霊が、{考推|こうすい}の刻を、告げてくるのだった。 

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一学102 ミワラ<美童>の然修録 R3.8.1(日) 朝7時配信

#### 一学スピアミ「悪夢に悪い記憶! 要領が良ければ解放される?」{然修録|102} ####

 『悪夢から解放されない……悪い記憶ばかりが甦ってくる。そのメカニズムと対処法』 《思い出される記憶と、出てこない記憶……その違いは、どこにある?》《手順書を作って、実行……要領がいい人は、それを、必ず成功させる》
   少年学年 スピア 少循令{猫刄|みょうじん}

 一つ、学ぶ。

      **{主題と題材と動機|モチーフ}**

   《 {主題|テーマ} 》

 悪夢から解放されない……悪い記憶ばかりが甦ってくる。そのメカニズムと対処法。   
 
   《 その{題材|サブジェクト} 》

 思い出される記憶と、出てこない記憶……その違いは、どこにある?
 手順書を作って、実行……要領がいい人は、それを、必ず成功させる。

   《 この主題と題材を選んだ{動機|モーティブ} 》

 サギッチの後裔記……。
 オオカミ先輩が、戻って来ない。
 妄想から、戻って来ない……と、いう意味。
 この世の悪いことばかりを、思い出してるんだと思う。
 例えば……特に、航海の後悔!
 同時に、きっと、あの世の魅力的な世界の映像が、映し出されているに違いない。
 優しい綺麗なおねえさん、アマテラス。
 悩ましい色気を漂わせる、アメノウズメ。
 まァ、そんなところだろう。
 なんで、もっとマシな、もっと夢とか希望とか目標みたいな、前向きな精神状態だったころの自分を、思い出せない?
 オオカミ先輩が興味を持っていた、〈オッサン{追|お}ん出しゲーム〉……何事も、要領よくやる訓練……は、どうなったァ?
 手順書を作って、万が一の、予期せぬ事態が起きたときの対処方法……{所謂|いわゆる}〈逃げ道〉も計画に盛り込んで、イザ! ……実行したんだよねぇ?
 で、実行し終わったんだから、要領よくやることの、締め括り……なんじゃないのォ? みんな、四人全員生きて、ムロー先輩たちが降り立った島に上陸できたっていうのに、それって、失敗なのォ?
 成功と、ちゃうんかい!
 だとしたら、今、オオカミ先輩は、どうするべきぃ?
 言わずもがな……みたいな(ポリポリ)。

      **題材の{講釈|レクチャー}**

   《 思い出される記憶と、出てこない記憶……その違いは、どこにある? 》

 「おまえん{家|ち}に咲いてた濃い桃色の花、綺麗だったな。ありゃ、なんて花だァ?」
 「{嗚|あ}ー{呼|あ}、日日草かなァ。たぶん♪」
 ……と、まァ。こんな会話って、あるよねぇ?
 これ、前にワタテツ先輩が、然修録に書いていた……〈脳の言語系〉って、やつだよねぇ? 言葉を介して、記憶の中に保管されているイメージにを呼び起こす。何故、そんなことが出来るのか。
 それは、事前に、記憶の中のイメージを整理して、様々な言葉と関連付けをし終えているからだ。だから、外からの言葉を介して、記憶の中のイメージを結び付けることができる。
 これが、思い出される記憶……{即|すなわ}ち、*思い出すことが可能*な記憶……と、いうわけだ。

 次。
 「でも、バジルは、悲惨だよな。テントウムシに喰われて、人間様が食うところなんて、{殆|ほとん}ど無いじゃないかァ! でも、ルッコラは、いいじゃん、いいじゃん♪ ぜんぜん、食われてないしぃ。
 コリアンダーでもいいけど、あれは、ちょっとね。味に、癖があるからな。やっぱ、ルッコラが、正解だねぇ♪」
 「てか……ルッコラーァ??」
 ……と、まァ。こんな会話になることだって、ある。
 自分の家の庭に{生|は}えているのに、そのイメージが、〈ルッコラ〉という言葉で、{繋|つな}がってくれないのだ。
 でもそこで、なんとか記憶の中の庭のイメージと結びつけようと、〈ルッコラ〉について、*うっかり*、あれやこれやと質問を浴びせてしまうと、(こいつ、面倒臭いやつだなァ!)なんて印象を、与えかねない。
 質問で使った言葉が、相手の頭の中に空間配置されているイメージと照合されて、(あったーァ!!)とか、(無いなーァ??)くらいで済んでいるうちは、まだいい。
 でもそれが、どうにも{上手|うま}く照合できずに、記憶を{遡|さかのぼ}ったりして、時間配置されている記憶を、掘り返す事態となってしまう。
 すると、そこに、不満や摩擦が生じる。俗にいう……「{兎角|とかく}大人の会話は、**カド**が立つ」……なんてことにも、なりかねない。

 どんな言葉や話を聞かされても、自分の記憶の中の悪いイメージにしか結びつかないというのは、そもそもその言葉を、最初から、悪いイメージにしか結びつけていないということだ。
 なので、オオカミ先輩が、質の悪い妄想から抜け出せないのは、普段からやっておくべき頭の中の整理整頓と関連付けを、怠っていたってことだ。
 何を言われても、直ぐにカリカリ、プリプリと怒りだす人が{居|い}る。それも、相手が悪いんじゃなくって、自分の頭が悪いからだ。
 頭を要領よく使うためには、普段から記憶の中のイメージを整理整頓して、一つの言葉から、様々な角度で、良くも悪くも、いろんな記憶の中のイメージに結び付けておかなくてはならない。
 そこまでできて、やっとその次が、発想……創造力の出番!と、相成るのだ。

 こんな話がある。
 卵がある。
 頭の中に記憶されたイメージの整理整頓と、一つの言葉との多用な関連付けが、不充分な人の場合……。
 卵顔という言葉があるように、卵は卵であって、*あの*形以外には、有り得ないのである。
 では、頭の中を、苦労して整理整頓片付け清掃をやり{遂|と}げたその末、{遂|つい}に〈発想〉……即ち〈創造力〉の域に達した人の場合……。
 コロンブスの逸話が、いい例だ。
 アメリカ大陸を発見して帰国、歓迎のレセプションの席上、{嫉妬|しっと}や*やっかみ*が、渦巻いていた。
 「猫でも船に乗せられて西へ西へと行きゃあ、アメリカ大陸にぶつかってたってもんさ。{奴|やつ}が優秀だったわけでも、運が良かったわけでもない。誰がやったって、*そうなってた*ってだけの話さッ!」……みたいな陰口が、飛び交っている。
 そんなヒソヒソ話を小耳に挟んだ、*やんちゃ*なコロンブス!
 {斯|こ}う言い放った。

 「さても皆さん♪
 ここに、卵があります。
 これを、テーブルの上に立たせることが、できるでしょうか」
 ……と。
 「出来るもんかァ!」
 「それこそ、運だめしだなッ♪」
 ……等など。会場は、騒然。
 無論、どうやったって、運がどれほど良くったって、平面に卵を立たせるなんて芸当は、土台無理な話なのだ
 ところが……コロンブス!
 卵の底を、テーブルの角に、コツン♪ コツン♪ とぶつけて、少しだけ壊したかと思うと、矢庭に、難なくテーブルの上に立たせて見せた。そして、言った。
 「さて、皆さん。
 誰かがやった後では、それが、どんなに奇想天外なことであっても、(なんだ。なんてことないじゃん!)と、誰にだってできそうなことに、思えてしまうものなのだ。
 でも、最初に、誰よりも先に、そこ……コツン♪ コツン♪ に気づいて、それを自ら、誰よりも先に行動に移すということは、案外難儀で、めっちゃたいへんものなのです」……と。

 卵の底を{平|たいら}にすれば、テーブルの上に立つ……なんてイメージは、誰にだって頭の中にあるはずだ。だのに、みんな、コロンブスに言われて初めて、そのことに気づいた。
 どの言葉とも繋がっていない〈卵が立つ〉という記憶の中のイメージが、コロンブスの言葉で、初めて{繋|つな}がったのだ。

 顕在意識……言葉と繋がっていて、いつでも思い出せる。
 潜在意識……言葉と繋がりが無く、どうしても思い出せない。
 命……遺伝子に組み込まれている、ご先祖様の記憶。

 では、言われて初めて繋がる、自力では思い出せないイメージはァ?
 そういう記憶のことを、〈前意識〉というそうだ。
 まァ、〈言葉で意識する、ちょっと前〉……みたいな意味なんだろう。
 と、なると……。
 どうしても思い出せない潜在意識って、{何故|なぜ}ぇ? どうしてぇ? ……そう。三歳くらいまでの幼児期の記憶って、なかなか思い出せないものだ。いっぱい聞かされて、いっぱい経験したことは、間違いのない事実のはずなのに。
 その証拠に、それらのイメージは、すべて、潜在意識のなかに記憶されているのだ。

   《 手順書を作って、実行……
     要領がいい人は、それを、必ず成功させる 》

 やると決めたからには、成功させなくてはならない。
 そう決めて、やり{始|はじ}めたら、{是|ぜ}が非でも、成功させなければならない。
 頭でだけ考える習慣を拭いきれない敗者たちは、必ず{斯|こ}う言う。
 「失敗は、成功のもと♪」……有り得ん!
 失敗は、失敗だ。
 仮に、本当に、失敗は成功のもとだとしても、失敗してからそのことに気づいても、{最早|もはや}{既|すで}に、手遅れというものなのだ。
 離島疎開して以来、〈要領〉という言葉を、何度読まされたことか。それは、カラダが覚えて、カラダが記憶して、初めて行動へと繋げることができる。即ち、要領……その、実態は?
 それは、〈五感が感じる刺激〉! なのだ。

 そのことに気づかせてくれたのは、オオカミ先輩が然修録で委細を披露してくれた、あの、〈オッサン追ん出しゲーム〉の{美童|ミワラ}たち……{俄|にわ}か地底住みの、ぼくたちと同じ地上住み系統の自然{民族|エスノ}……そう、あの生意気な、五人組だッ!
 あいつらは、要領が良くなるための極意を、何故か、承知していた。何度でも、何回でも、{兎|と}に{角|かく}*やってみる*。それが、結局は、一番の早道なのだ。
 いくら小難しい理屈を言ったり、言葉巧みな能書きを垂れたところで、そんな{輩|やから}たちは、要領の〈よ〉の字も、{掴|つか}んでなんかいない。
 繰り返し、繰り返し、ただひたすら*やってみる*ということは、〈そのたびごとに、どんなふうにコマを動かすと、こうなって、こんな不都合があって、こんな良いこともある〉っていう{事細|ことこま}かなデータを、すべて*指が記憶する*ということなのだ。

 そこで、一つ気づく。
 記憶という所作は、実は、頭なんか、ひとつも使ってなんかいない。五感のみによって、記憶しているのだ。
 その証拠に……。
 たまたま、うまくいったことって、よくあるよねぇ?
 じゃあ、次から、それとまったく同じことが、出来るようになるはずだよねーぇ?? でも、実際は、どうしたことか、何故か、できないんだよねーぇ!! ……みたいな。
 頭で覚えたことを再現できるんだとしたら、根拠や理由なんか解らなくったって、そのときの状況と、何をどうしたかっていう{遣|や}り方や方法さえ頭が覚えておいてくれれば、次も絶対に、成功するはずだよねぇ?
 それが、絶対に、失敗してしまう。
 その訳は、もう、言わずもがなだよねーぇ♪

 やってるうちに、{身体|からだ}が覚えて、{終|しま}いには必ず、成功する。なんか、不思議だと思わない? 頭の野郎は、何をやっても、その{実|じつ}無関心で、その都度、その都度、ご破算にしてしまう。
 でも、身体は、ちょっとづつ、ちょっとづつで、本当に地道なんだけど、やるたびに、そのたびごとに、そのときのデータを、すべて、蓄積してくれている。
 頭は、そんなふうに身体が地道に蓄積してくれている行動のデータを、いろんなことをやって失敗したあとになってから、そのときの都合に合ったデータを探し出して、〈出来ないことの言い訳〉に利用しているだけなのだ。
 人間を含めて、動物たちは、何故、みんながみんな揃って、〈五感で記憶する〉という機能を退化させずに、この数千年、数万年の間、護り続けてきたのだろう。
 それは、五感で感じたことを、そのまま記憶しておくということが、生きていくうえで、最も重要な本能であることを、悟ったからではないだろうか。

 赤ちゃんは、言葉は知らなくても、自分のお母さんの顔は、どんなに{犇|ひし}めき合っている雑踏のなかでも、容易に、見分けてしまう。これは、電脳……コンピューターが、最も苦手としている、{理解|インプット}不能なアルゴリズムでもあるのだ。
 なので、言葉を介さず、命の力だけで、ただ無心に行動して、修羅場を{潜|くぐ}り抜けたのだとしたら、そのときに覚える*喜び*という感情は、鋭く、また恐ろしく{強靭|きょうじん}で、しかも、表には出てこない、正に、{曲者|くせもの}の{糧|かて}として備蓄される最高峰の*情緒*であると、言い切れるのではないだろうか。

 ぼくたちの命は、言葉を、持たない。
 だから、五感で感じた成功の喜びを、そのまま、命の記憶領域に、ただ、{刻|きざ}み込むだけなのだ。
 でも、実は、その命の記憶領域に保管されているイメージこそが、直観の根拠を{司|つかさど}り、生きるという命の{生業|なりわい}のなかで、最も重要な役目を秘めた三次元配置の記憶データなんじゃないのかなって思う。
 その三次元のイメージ記憶を何かの言葉に結びつけて呼び起こすことが、〈*コツ*が解る〉ということ……{所謂|いわゆる}、要領を掴むということ……{即|すなわ}ちそれが、**直観力**というものなのではないだろうか。

 ぼくたち子どもにとって、一番大事なことは……習慣。
 習慣……それは、クセ。
 自反するクセ。
 己を正すクセ。
 成功するクセ。
 ……この三つの{癖|くせ}を身に着けなければ、天命の成就は{疎|おろ}か、知命の覚醒すら、{危|あや}ういのだ。
 
      **{蛇足|スーパーフルーイティ}**

 以上のことは、読んだだけで終わってしまえば、まったくの無意味のまま、終わってしまう。
 それも、「クセが着く」ということだ。
 でも、同じ*クセ*でも、それは、〈自反クセ〉でも、己を正す〈格物クセ〉でも、{況|ま}してや〈成功クセ〉でもない。
 それは、〈失敗クセ〉という名の、{疫|えき}病神からの贈り物なのだッ! 
 
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一息105 ミワラ<美童>の後裔記 R3.7.31(土) 夜7時配信

#### 一息サギッチ「予感? アマガエルの卵、サクラの花びら、ズリズリ山」{後裔記|105} ####

 《心配事が一つと、悪い予感が一つ》《サクラの花びらと、アマガエルの卵》《意味不明を連発するムロー先輩……ジジチョウを、探せ!》《ズリズリ山と、ジジチョウと、シノマゴ!》
   少年学年 サギッチ 齢9

 一つ、息をつく。

   《 心配事が一つと、悪い予感が一つ 》

 若干一名を除いて、「心身共に、概ね復活!」と言ってもいいような、そんな日常が、はじまった。
 ムローが、言った。
 「骨も折れて{居|お}らんし、外傷は、数こそ多いが、どれもこれも{掠|かす}り傷と切り傷ばかり。起き上がれん言い訳など、どこにもない。
 まァ、寺学舎の野外実習で、自反と格物が足りんかったっちゅうこどだな。時間は、充分にある。ここでたっぷり自反して、足りとらん格物を、補えばいい」
 「『{放|ほ}っとけーぇ!! 寝かしときゃいいのさァ♪』……みたいなァ?」と、スピア。
 「頭引っ込めて口だけ出す*デンデンムシムシ*みたいなーァ??」と、ツボネエ。
 「あんたさァ……まァ、いいけどさァ。てか、でんでん虫に、失礼だろッ! こいつは、岩陰に隠れて背中に苔が{生|む}してる、ゲンゴロウさッ♪」と、マザメ先輩。
 (それって、ゲンゴロウに、失礼じゃないのォ?)と、思うおれ。

 本来、スピアの野郎が口を開くと、そのすぐ後に口を挟んで{然|しか}りのおれなんだけんども、そのときは{何故|なぜ}か、そうはしなかった。
 実は、ある予感……すべてとは言わないが、少なくともおれにとっては、限りなく*悪い*ほうに近い予感が、おれの空き倉庫だらけの頭ン中の{可成|かな}りの部分を、占めていた。
 {故|ゆえ}に、口数も……少ない……おれ。
 この島で目覚めた日の翌未明、顕在意識から潜在意識へのバトンタッチが終わろうかというそのとき、ムロー先輩が発したある言葉に、スピアが、ヒクッ! ヒクヒク……っと反応し、一瞬、目をパチッと見開いた。
 すると、スピアの野郎、何か心配事が、すぅーっと消えてゆくかのように、そのまま、層脳の記憶の世界へと、沈み込んでいってしまった。おれの顕在意識にしたって、そのあとのことは、一切、何も、見てもいなければ、聞いてもいない。

 で、スピアの野郎が反応した言葉と、その言葉から連想した悪い予感……そこは、外せないよねぇ?
 はいはい……{斯|こ}うだ。
 反応した言葉……それは、〈技師長〉。
 連想、開始♪
 技師長→熟練→年配→(予感……ひょっとしてぇ? たぶん……それは、間違いなく)→爺さん!
 {況|いわん}や!
 シンジイ、ジジサマ、ジジチョウ?
 あの野郎は、限りなく無意識に近い{夢現|ゆめうつつ}の中で、おれと同じ連想を、したはずだ。そして、斯うも思ったはずだ。
 (やったーァ!! 爺さんじゃーん♪ この島の爺さんからは、何を吸い取れるかなーァ♪ また、歩学かなーァ。出て来い、シャザーン♪ ……元い。出て来い、ジジッチョサーン♪)……みたいな(爆アセ、爆アセ)。
 で、どうなったーァ??

   《 サクラの花びらと、アマガエルの卵 》

 深い眠りに落ちる寸前、ムロー先輩は、{斯|こ}う言った。
 「震撼! ……と、正にそのときのジジチョウは、六年前の震撼という感覚を、どうにか言葉で伝えようと、{辛苦|しんく}にも近い努力をしているかのようだった」
 ここで、久々に、言わせてもらう。
 「なんーじゃ、そりゃ!」
 スッキリ♪
 てか……失礼!
 これじゃあ、状況、呑み込めないよねぇ?
 「技師長の六年前……」という、ムロー先輩が発した{何気|なにげ}ない言葉を、{何故|なぜ}かどうしても記憶から拭い去れないおれら三人……だったが、この数日、オオカミ先輩の復活を、ただただ、待った。
 難破した同志四人揃って、心に突っ掛かっているその拭い去れない*記憶*の真相に、迫りたかったのだ。おれら{美童|ミワラ}にしては、なんとも有り得ない、悠長な展開。
 その{訳|わけ}は、みんなの挙動の一つひとつから、見て取れることができた。

 その……〈おれの場合〉編!
 散った桜の花びらが、小川にプカプカと浮かんで、サラサラと流れて来る。その一枚に、アマガエルを摘まんで、{載|の}せてみる。ビミョーォ!! 何をするにしても、気が乗らない。
 だからって、アマガエル君の同意も得ずに、桜の花びらに載せちまったって訳でもないんだけんどもーォ!! 
 マザメ先輩も、スピアの野郎にしても、なんだか、脳ミソが、{川面|かわも}に浮かんでるアマガエルの卵……グジョグジョで、とろとろとした未確認浮遊物になっちゃったって感じで……。
 なんていうか、ぼんやりとして、何をするにしても、挙動不審に、見えるのだった。
 で、オオカミ先輩はァ?
 依然!
 布団を被って……ピクリともせず。

   《 意味不明を連発するムロー先輩……ジジチョウを、探せ! 》 

 なので……って、それ{即|すなわ}ち、疲れを知ってしまった子どもが四人……そのうち、軽症の三人のこと。マザメ先輩と、スピアの野郎と、おれ。
 その三人が、ムロー先輩を{促|うなが}して、おれらの心に引っ掛かっている*言葉*の真相の究明に、{愈々|いよいよ}というか、{漸|ようや}くというか、*やっとこさ*っていうか、{兎|と}にも{角|かく}にも{遂|つい}に、重い腰を、上げることとなった。
 言わずもがな、スピアの野郎の目は、さりげなくギンギラギン!

 長屋に沿って延びている、不陸な砂利道。
 川筋の上流側の長屋の端っこから歩いて{下|くだ}ってゆくと、右側に枝分かれする{獣道|けものみち}が、見えてくる。その道は、その先に{聳|そび}えている{禿|はげ}山へと、延びている。
 そのまま、真っ直ぐに{下|お}りてゆくと、下り切った辺りの右側に、銭湯がある。獣道と反対側、分かれ道で立ち止まって、左のほうを向くと、そこは、長屋の下流側の端っこ……ムローとツボネエが借りている、一間しかない一住戸だ。
 まァ、一応、角地の一等地ってことで……。

 その日の朝、横になっているムロー先輩を、わざわざ叩き起こした。そして三人……{雁首|がんくび}を揃えて、意思表明!
 (まったくぅ! 今日は、いきなり、どうしたというんだァ。朝から、{面倒めんどう|}っちい{奴|やつ}らだなァ。はてさて、そうは言っても、仕方がない。技師長は、今日、今の時間、どこに行けば会えるんだかーァ!!)
 ……と、そんなことを、何気に考えているような、そんな顔を見せながら、ムロー先輩は、{暫|しば}し思案をしていたが、{俄|にわ}かにムクッ!っと立ち上がると、{斯|こ}う言った。
 「ジジチョウは、ズリズリ山の帰りに、必ず、ここに寄る。だが、それがいつのことかは、判らん。必ず今日会うためには、銭湯しかない。ジジチョウは、その日の仕事を終えると、シノマゴを連れて、必ず、銭湯にやって来る。
 そこを、狙うしかない。もし、夜勤明けなら、まさに、今だッ!  日勤なら、普通に考えれば、夕方狙いだが、職分の高い爺さんだ。長い時間を働くことに、価値を置いては{居|お}らん。即ち、いつなんどき、銭湯に現れるか……まったく、予測不能だ。
 決まりだッ!
 夕方まで、張り込むぞ。
 よし♪ イザ! ……それが、いい♪
 イザイザ! 銭湯ーォじゃーァ!!」
 ……みたいな(ヤレヤレ)。
 正に、意味不明!
 {禿|はげ}山だから、ズリズリ山?
 だからさァ……。
 ジジチョウって、誰よォ!
 てか、シノマゴって、だれぇ!
 待て待て……**誰**とは、限らない。
 だったら、シノマゴって、なにぃ!

   《 ズリズリ山と、ジジチョウと、シノマゴ! 》

 そんな感じで、*マゴマゴ*としていたおれたち……。
 幸い……と、そんな甘い希望的観測とは無縁のおれたちは、終日銭湯に張り込み、ヘトヘトになって川筋の一等地に建つ長屋の端っこの{居候|いそうろう}を決め込んでいる部屋へと戻ってくると、そににはなんと、見知らぬ爺さんと少年が一人、そして{何故|なぜ}か、そこにオオカミ先輩が加わり、何やら親し気に、談議の真っ最中だった。
 で、その、オオカミ先輩が、言った。
 「遅いよッ! ジジチョウの六年前の話、先に聴いてもよかったんだけどさァ。わざわざ、親切に、気{遣|づか}って、おまえらが戻って来るのを、待ってたんだ。
 但し! その前にだ。
 おまえらが、好き勝手に質問をおっぱじめたら、夜が明けっちまうからなァ。だから……さッ! ムロー先輩の口から出た意味不明の数々……の、中から二つか三つ、おれが、答えてやる。
 ズリズリ山とは、{硬|ボタ}山のことだ。ズリとは、炭鉱で掘り出された鉱石のうち、石炭として使えない石っころ……即ち、捨て石のことだ。
 そこでジジチョウは、炭鉱技師たちの中の、{長|おさ}。だから、技師長ってわけだ。
 シノマゴ君は、ジジチョウの弟子でもあり、お孫さんでもある。だから、*弟子の孫*だ。孫弟子って呼ぶと、弟子の弟子かァ!って、誤解されるから、デシノマゴが、正しいんだ。
 でも、ジジチョウは、国際派の爺さんだから、英語みたく、単語の頭文字の{発音|プロナウンス}を省略する習慣が、染みついている。なので、ギシチョウは、{飽|あ}くまで正しく、「デシノマゴ」と、言って{居|お}られるのだ。
 ところが、「デ」の発音が無意識に省略されてしまうから、聞くほうとしては、「シノマゴ」と聞こえてしまう……と、いう具合の{顛末|てんまつ}だ。
 ところでおまえらッ!
 そこに、いつまで突っ立ってるつもりなんだァ?
 早く、座れ!」

 オオカミ先輩が喋っている間、その爺さんは、黙って目を閉じ、{胡坐|あぐら}をかいて、手は自然に、その{脚|あし}の上にそっと、載せてあった。
 禅……{莫|まく}妄想……瞑想?
 {否|いや}、そんなことより、おれら三人は、直感した。
 この爺さんは、元祖!ヒト種……。
 和の{民族|エスノ}だ。
 そして、もう一つ。
 それは、直感ではなく、直観のほうだ。
 ムロー先輩が言っていた、「文明の{奴|やつ}らの潜入調査員」……ではない! と、いうことだ。
 潜在意識が、層脳のあらゆる記憶を、瞬時丹念に調べ上げた結果、そう、確信できたのだ。
 しかも、ほかの二人……マザメ先輩も、スピアの野郎も、どうやら、異論はなさそうだった。
 唯一、判読できなかった顔が、{一|ひと}。
 それは……オオカミ先輩。
 (やれやれ)と、思うおれ……だった 

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一学101 ミワラ<美童>の然修録 R3.7.25(日) 朝7時配信

#### 一学オオカミ「寛容の精神とは。真意を{汲|く}んで受け{継|つ}ぐ{曲者|くせもの}たち」{然修録|101} ####


 『寛容の精神とは何か』 《曲者や{一廉|ひとかど}の武士が備えていた心構えと、その兵法の比較》《陽明学真意の世界への懸け橋となった佐藤一斉、その橋を護り{継|つ}いだ先人{先達|せんだつ}の{為政|いせい}の人たち》
   学徒学年 オオカミ 少循令{石将|せきしょう}

 一つ、学ぶ。

      **{主題と題材と動機|モチーフ}**

   《 {主題|テーマ} 》

 寛容の精神とは何か。  
 
   《 その{題材|サブジェクト} 》

 曲者や一廉の武士が備えていた心構えと、その兵法の比較。
 陽明学真意の世界への懸け橋となった佐藤一斉、その橋を護り継いだ先人先達の為政の人たち。

   《 この主題と題材を選んだ{動機|モーティブ} 》

 ムロー先輩が、マザメの後裔記の中で、{斯|こ}う言っていた。
 「おねえさん先生は、美しすぎるから、あの程度で許されて、生き延びて命{辛々|からがら}、戻って来ることができたのだ。それがもし、俺らなら、秒殺で、{肥溜|こえだ}めの底だッ!」

 *時代*は、そんな怖ろしい急な斜面を、転がり落ちているのかァ! 忙しくて、当たり前だ。**心構え**も、なっちゃない!

 マザメが、然修録の中で、佐藤一斉という人物のことを、斯う書いていた。
 ……その一斉先生が、故郷の岩村藩のために、なんと! 憲法を作った。『重職心得箇条』が、それ。
 そのなかに、斯うある。
 「重職たるものは、{如何|いか}ほど忙しくとも、忙しいと言はぬがよきなり」
 これを、分解して説くと……。
 忙しいと言うな。心に随分な余裕を持たねば、難題や大事を取り計らうことなどできぬ。つまらぬこと、余計なことまで、すべて自分でやり過ぎてしまうから、暇が無くなる……{云々|うんぬん}。

 その*時代*の一番の悲劇は、幕末維新には多く{居|い}た佐藤一斉のような**人物**が、今は{居|お}らん! と、いうことだ。

      **題材の{講釈|レクチャー}**

   《 曲者や一廉の武士が備えていた心構えと、
     その兵法の比較 》

 日本最古の兵法教訓の書『闘戦経』に、斯うある。
 「{懼|おそ}れを持ち過ぎてはいけない。
 孫子十三扁、{懼|おそれ}の字を{免|まぬが}れざるなり」

 日本最古の兵法教訓の書を書いた平安時代の兵法の大家、大江家の頭首は、世界最古の兵法書に学んでいる。
 その『孫子』に書かれている兵法とは、{如何|いか}に要領よく勝つかに徹していると、言われている。例えば……。
 「兵は{詭|き}道なり……戦争とは相手を{騙|だま}すこと」
 結論。
 兵法の究極は、戦わずして勝つこと。
 その根底に、懼れの念あり。

 ここで、どうしても、比較してみたくなる。
 日本古来の戦い方……正に、真逆である。
 例えば、我らが祖先と密かに{噂|うわさ}されている平家に雇われた水軍の海賊たち……その戦いっぷりの{理念模範|パラダイム}が、『平家物語』に書かれている。
 「遠からん者は音にも聞け……」{即|すなわ}ち、先陣を切って敵に向かってゆき、互いに名乗り合う。
 「兵は正直であれ……戦争で相手を騙してはいけない」と、言わんばかりに……{是|これ}正に、『孫子』と真逆だッ!

 戦場で先頭をゆくということは、最前線。最も、命を落とし{易|やす}い。それでも、先を競って前へ、前へ……。命よりも、己の名を{遺|のこ}すことを、また{御家|おいえ}の名誉を、重んじていたのだ。
 『孫子』が言う*懼れの念*の、{欠片|かけら}もない。
 自分の命への執着も、{殆|ほとん}どない。
 正に覚悟……戦うための心構えが、出来ている。

 それは、幕末維新の志士たちにも、よく{顕|あらわ}れている。
 志士たちは、処刑される前や討入りする前に、遺書の代わりに、よく{辞世|じせい}の句を詠んで、それを残した。
 例えば、吉田松陰の辞世の句「{留魂録|りゅうこんろく}」には、斯うある。
 「身はたとひ{武蔵|むさし}の{野辺|のべ}に{朽|くち}ぬとも{留置|とどめおか}まし{大和魂|やまとだましい}」
 たとえ己の肉体が朽ち果てようとも、国を愛し、その行く末を{憂|うれ}うこの大和魂だけは、この世に留めておきたい……。
 死への恐れなど、まったく感じさせない。
 正に、驚くべき覚悟……と、まだ、ここで驚いてはいけない。死と正面から向き合い、あらゆるものと戦う心構え……その、最期の瞬間。
 自分の首を{刎|は}ねようとする役人に、斯う言ったそうだ。
 「ご苦労様です」
 しかも、淡々と……。

 まさか、覚悟を持って死ねとも言えないし、言われても、困る。でも、いろんなことを、少しくらい覚悟を持って事に臨んでも、いいのではないだろうか。
 やる前から、失敗したりダメだったときにどうしようかと、ビクビクと*懼れて*悩んでばかりいるような気がする。
 無事に……とはいかないまでも、生きて航海を終えたから言うわけではないが、不安に押し{潰|つぶ}されて、引き下がったり引きこもったりすることが、多いのではないだろうか。
 「もう、逃げ場はない。やるっきゃない! なんとしても、これを、*俺が*、やり{遂|と}げなくてはならない」という覚悟を持って、事にぶち当たる……これが、本来、事に臨むときの基本。
 その基本の中でも、初歩的と言うべき心構えではなかったか……。

   《 陽明学真意の世界への懸け橋となった佐藤一斉、
     その橋を護り継いだ先人先達の為政の人たち 》

 佐藤一斉は、儒学を修めた秀才として名を{挙|あ}げ、幕府直轄の今でいう国立大学であるところの昌平坂学問所の教授に任じられ、のちに、今でいう学長に当たる学頭の座に就いた。
 『重職心得箇条』は、彼の出身地である{美濃|みの}国岩村藩から依頼があったもので、家老などの藩の要人たちが務めるべき{政|まつりごと}の教訓を、佐藤一斉が自ら撰述したものだ。
 その内容は……。
 「平生、嫌いな人をよく用いるというこそ重職の手腕である」
 「胸中を寛容、広大にして人を受け{容|い}れるという心構えが大切である」
 と、こちらもまた、『闘戦経』と同様、曲者や一廉の武士が備えていた心構えというものを、正に*寛容*というべき精神に{則|のっと}り、これを尊重し備え持つことを、郷里の藩の重臣たちに求めている。

 佐藤一斉の偉大な功績は、二つあると思う。
 一つに、こうした教育の卓越した能力があったのだと思う。
 その証拠に、師の弟子には、佐久間象山や渡辺崋山、大塩平八郎といった俊秀の才が{列|れっ}し、一斉の{薫陶|くんとう}を{蒙|こうむ}っている。
 また現代では、小泉元首相が、この『重職心得箇条』の一節を持ち出して、外務省を{格|ただ}そうとたことも、よく知られている。また、佐藤一斉の主著『{言志四録|げんししろく}』の一節も、部下の訓示に持ち出したりもしていたそうだ。

 二に、陽明学の第一人者としても、よく知られていたということだ。
 日本の儒学の学頭であるから、学ぶべきその根本は、中国宋の時代に、朱子が儒学の古典を体系化した{所謂|いわゆる}朱子学であって、{然|しか}りである。
 然し実際は、明代になって王陽明が、この朱子学に異を唱え、独自で発明した行動儒学説である陽明学を、日本人の心の学問の下敷きとした。
 下敷きと言えば、統一ドイツの新憲法が、日本の『教育勅語』を下敷きにしたという話を聞いたことがある。それほど、江戸期から明治期の日本の心の教育は、優れていたと認めざるを得ない。

 寺学舎の座学でお馴染みだったその陽明先生は、明代当時、どんな論を掲げたのか。我らムロー学級八名は、格物で四苦八苦するばかりで、一向にその先が見えてこない。
 言葉だけなら、知っている。
 {知行合一|ちこうごういつ}。
 人間の内なる{良知|りょうち}に{順|したご}うて、善道を実践することを主眼とする。
 一斉の弟子、大塩平八郎も、この*善道を実践することを主眼*とした結果、世直しのために、幕府に対して諫言の実力行使に打って出たのだろう。

 その後……昭和の時代。
 再び、一斉が現れる。{是|これ}、安岡教学。前述の小泉元首相も含めて、多くの政治家が、この安岡先生に{私淑|ししゅく}したと言われる。
 例えば、佐藤栄作元首相が、沖縄返還という戦後最も重要な局面の決断に迫られたとき、この安岡先生の教示を仰いだと、今に伝わっている。
 我ら{美童|ミワラ}にしても、儒学全般や陽明学を学ぶ際には、この安岡教学の教訓語録のお世話になることが多い。無論、シントピック・リーディングという観点を怠らないという意味で、大学の教授陣の書も、積極的に参考にしている。
 ただ、心の指針……覚悟、心構え、行動の学といった心の学問においては、安岡教学に匹敵する語録は他に無いと、内心感じている。
 
      **{蛇足|スーパーフルーイティ}**

 「子どもは疲れない」とよく言われるが、それが真実だとしたら、どうやら、おれはもう、子どもではないようだ。
 疲れたびーぃ!! 
 
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一息104 ミワラ<美童>の後裔記 R3.7.24(土) 夜7時配信

#### 一息マザメ「お尻フリフリと*あたい*が投げた問い、その結末」{後裔記|104} ####


 《手……ではなく、お尻をフリフリして別れを告げたケツ……元い。ツケが回って、今も尾を引く悲劇の真相!》《ムロー学人が語る……あたいが投げた三つの問い》《層脳……潜在意識に{委|ゆだ}ねる》
   学徒学年 マザメ 齢12

 一つ、息をつく。

   《 手……ではなく、お尻をフリフリして別れを告げたケツ……元い。ツケが回って、今も尾を引く悲劇の真相! 》

 (まったくぅ!
 {呑気|のんき}にタバコ吹かして、ビールもどきの穀物ジュース、ちびちびやってるバヤイかよォ!
 てか、なんで男どもってのは、こうも持久力が低いのかねぇ。{鷺|サギ}の野郎は、どうでもいいとして……座森屋の御曹司は、書記だろッ! こういうバヤイ……。
 無論、ツボネエに記憶が役の書記は期待できんしーぃ。あたいだって、眠いわさァ! でも、問うた手前……てか、本当に知りたいから{訊|き}いたんだけどーォ……(ポリポリ)みたいな。
 まァ、どのみち、興味が無い{話題|トピック}は、記憶には残らないわけだし、もし目覚めたときに、頭ん中が真っ白だったら、それはそれってことで……。
 で、さァ。
 あたいって、ムロー先輩の話、ちゃんと聴こうとしてんのか……それとも、*眠る言い訳*を考えてんのか……。
 てかさァ。
 いつまでも*プカチビ*やってないでさァ。
 早く、{喋|しゃべ}りなさいよねーぇ!!)

 ……と、{苛立|いらだ}ちパッツンパッツンの、{莫|まく}妄想♪
 船出早々から続くイライラは、不眠症を引き起こし、船出直前に起こった下痢の兆候は、ケツの穴が大衆の面前で硬直してからというもの、以来ずっと、{頑|かたく}なに、便秘を貫いている。

   《 ムロー学人が語る……あたいが投げた三つの問い 》

 **一**に、
 「この島は、どうやってできたのか」

 {遥|はる}か昔、この辺一帯の海は、密林だった。
 その上に、海が{被|かぶ}さった。
 次に、海底に沈んだ密林から、溶岩が、海面の上にまで噴き出した。
 すると、小さな島が一つ、できた。
 するとまた、海底密林の別の場所で、噴火が起こった。そこにもまた、小さな島が一つ、できた。
 すると今度は、その二つの島の{間|あいだ}辺りの海底密林が、噴火した。この三度目の噴火は、三ケ所のなかでも最も大規模で、三度目の噴火で起きた島の山頂から流れ出て{止|や}まぬ溶岩は、ほかの二つの島の冷えた溶岩に{被|かぶ}さり被さりしながら、その後も、再三の噴火を繰り返した。
 {終|しま}いには、三つの島が陸続きとなり、一つの大きな島になった。古い溶岩の上に棲みついた陸上や海底の生きものたちは、どんなに溶岩に攻め立てられ痛めつけられようとも、その古いほうの二つの小さな島を、見捨てるようなことは決してしなかった。
 溶岩が被さるその数ミリの寸前まで、その島で頑張り、生き続ける……。
 そして{終|つい}に、赤黒い溶岩が、島のすべてを{覆|おお}い隠すと、生きものたちの命も、その存在を、この世から隠してしまうのだった。

 だが……その溶岩が冷えるのを、どこかに隠れて{強|したた}かに待っていたかのように、風が、波が、そして、鳥たちの体内を通って、下痢気味の液体に潜み……{或|ある}いは、羽根の一枚一枚に隠れて……草花の種がァ! 小さな虫たちがァ! 再び、この島にやってくるのだった。
 やって来る生きものは、種や虫たちばかりではない。空から、海から、{将又|はたまた}陸から、新たなる天敵が、次から次へと、襲い掛かって来る。
 そしてやっと、土着の動物や魚たちが、住まう手立てををやっと手にしたころ、また再び、赤黒い溶岩が、すべてを覆い隠す。そんな、不本意で不条理な繰り返しを、何百年、何千年と繰り返す。
 理不尽な、繰り返し……それを、習慣化させないために、生きものたちは、新たなる生きる手立ての発明を目指して、自らを変えはじめる。
 低地に天敵が多ければ、高地へ。
 地上で食われてしまうなら、地底へ。
 陸地に{餌|えさ}が{乏|とぼ}しければ、水際へ、海面へ……そして遂には、海に、潜る。
 昼が危うければ、夜に、行動する。
 これが、本当の、**進化**ってやつだッ!

 この島の植物も、虫たちも、森の動物たちも、鳥も、人も、そうやって、この島で、生きてきた。
 {所謂|いわゆる}、土着……{留|とど}め鳥や、{留|とど}め{人|びと}たち。
 この島は、そうやって、幾多のドラマを、映し続けてきたのだ。

 **二**に、
 「自然人が{企|くわだ}ててる人工知能チップについて、どう評価するか」

 {奴|やつ}らは、目まぐるしく、ボディーを進化させてきた。
 電子計算機→汎用機→タイムシェアリング→パーソナル・スタンドアロン→ワールド・ワイド・ウェブ→ノートPC→タブレット型長距離通信→巻物型オンライン→スタンドアロンチップ→リモートチップ……現在に、到る。
 データやアリゴリズム……{即|すなわ}ち、〈1+2=3〉で{譬|たと}えるなら、〈1と2〉や〈+と=〉を記憶する媒体も、急速な進化を見せた。
 紙テープ→パンチカード→ディスクパック→大判検索ファイル……そして、コンパクトディスクにUSB……少々古めかしくも、今{猶|なお}、現役!
 抜けと思い込みが多い十進法の人間の頭脳から、{誤り|バグ}が多い電脳二進法に翻訳する互換性専用言語も、両者の弱点を、互いが{嘲|あざけ}り、トラブルの責任を、互いが{擦|なす}り付け合いながらも、文明界の身勝手な要求に後押しされて、無責任のまま、変異増殖を続けてきた。
 その、{互換性専用言語|プログラム}……マシン語→アセンブラァ→フォートランに、PL/1→コボル→簡易という名の安易言語……現在に到って、はてさて!
 {況|いわん}や、コンピューターの知識や常識が無くても、誰にでも簡単に好き勝手なアルゴリズムを作って、電脳に記憶させることが出来るようになってしまったという{訳|わけ}だ。

 そこが、十万円、百万円♪ ……人生の分かれ道!
 ……と、相成った。
 リモートチップは、文明エスノの連中の脳髄に埋め込まれるようになった。
 これが、*電脳人間*の**誕生**だ。
 しかも、そのリモートチップは、データやプログラムの記憶のみならず、アルゴリズムまで、自ら作り出せるようになってしまったのだ。
 即ち!
 人間たちが、長年苦労して{培|つちか}ってきた〈1+2=3〉を、無情にも! いとも簡単に、〈1+2=0〉にすることが出来るようになったということだ。
 その電脳人間が、今や、文明人を、{操|あやつ}っている。それを逆手にとって、電脳人間を操り、文明エスノを改心させ、三つの亜種を、再び一つの〈ヒト種〉にしようと考えたのが、我らが自然エスノ……座森屋の血統だ。
 {所謂|いわゆる}……潜入班の、調査員。
 ヒノーモロー島の朗読室……調査学校の、卒業生たちだ。
 結果は……ザペングール島の、おねえさん先生。
 和のエスノにまで、その妖精のような清い心と{澄|す}んだ{身体|からだ}の美しさが、音となって聞こえ{亘|わた}っていたそうだ。それが、包帯とマスクと{杖|つえ}がなければ、人前には出られないような、{憐|あわ}れ無惨な{体|からだ}にされてしまった。
 {最早|もはや}、鷺助屋が唱え続けている過激な最終手段しか、道は、残されていないのかもしない。 

 **三**に、
 「次の百年ごとの戦乱から、次の天地創造まで、どうやって起こってゆくのか」

 この島で、その{話題|トピック}は、{禁句|タブー}だ。
 考えても見ろッ!
 自然……ネイティブな俺たちでさえ、潜入班という組織を{創|つく}り、調査員を文明界に送り続けているのだ。電脳人間を生み出したほどの頭脳を持つ文明人たちが、そこを、{疎|おろそ}かにするはずがないだろう。
 {故|ゆえ}に、この島に住まう人間たちは、顔や姿を観たり話を聴いたりしただけでは、和の人なのか文明エスノの調査員なのか、まったく、判断がつかんのだ。
 だから俺ら……俺とツボネエは、この島で、和のエスノとして、この半年間を、{堪|た}え忍んできたのだ。そこは、今後、おまえらも、{胆|きも}に銘じろッ! そこを、俺たちが抜かれば、おねえさん先生の{如|ごと}きでは、済まん。
 おねえさん先生は、美しすぎるから、あの程度で許されて、生き延びて命{辛々|からがら}、戻って来ることができたのだ。それがもし、俺らなら、秒殺で、{肥溜|こえだ}めの底だッ!

 だがそれも、この島で、技師長と出逢うまでの話さ。技師長の六年前の話を……。

   《 層脳……潜在意識に{委|ゆだ}ねる 》

 「ねぇ!」
 (はァ?)
 「ちゃんと、覚えたーァ??」
 (まーァ……)
 「まったくーぅ!! 眠っちゃったら、あんただけが、頼りなんだからねぇ! 解ってるーぅ??」
 (まーァ……)
 「はいはい。あんたに{訊|き}いたあたいが、バカでした。
 あたい、眠るから、あとは、宜しくーぅ♪
 目が覚める前に、今、ムローから聴いたこと、ちゃんと教えなさいよねぇ!
 メモるのは、あたいが、やってあげるからさーァ♪
 てか、目覚めて直ぐに、映し出さないでよねぇ!
 何分か何十分かは、ぼーッとしてんだからさァ!
 よろ、よ・ろ・ひ、くーぅ……ケッキョーォ♪ ホーォ……ケッキョーォ♪」
 (まーァ……)

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一学100 ミワラ<美童>の然修録 R3.7.18(日) 朝7時配信

#### 一学マザメ「忙しくしていると、無能者に{観|み}られてしまう。{何故|なぜ}か」然修録 ####


 『無能者は、忙しい。何故か!』 《余裕がないから、忙しいと言う》《貧乏暇なしでも、忙しくはない》《超多忙な大臣は、博士にもなる》《戦火の陣中でも、文武両道成る》《闘病でも、〈忙しい〉を掛け持ちする》
   学徒学年 マザメ 少循令{悪狼|あくろう}

 一つ、学ぶ。

      **{主題と題材と動機|モチーフ}**

   《 {主題|テーマ} 》

 無能者は、忙しい。何故か! 
 
   《 その{題材|サブジェクト} 》

 余裕がないから、忙しいと言う。
 貧乏暇なしでも、忙しくはない。
 超多忙な大臣は、博士にもなる。
 戦火の陣中でも、文武両道成る。
 闘病でも、〈忙しい〉を掛け持ちする。

   《 この主題と題材を選んだ{動機|モーティブ} 》

 ここのところ、あたいらは、忙しかった。
 ふと、ウリ坊の大努力を、思い出す。
 言わずもがな、スピアの後裔記。
 ウリ坊がやっていた大努力とは、息恒循でいうところの{内努|うちゆめ}……恒令の三番目、火曜日だ。
 その内努のなかに、{斯|こ}うある。
 「他者が寝るところは半分にし、他者が食うところは半分にする」と。
 同じ寝るところや食うところが半分でも、努力している人は、有能と言われ、忙しくしている人は、無能者に観られてしまう。
 内努のなかに、斯うもある。
 「研究によって己の美質を発見し、能力を発揮する」と。
 なるほど、確かに、有能だ。
 では、〈忙しい〉のほうはというと、〈心を{亡|なく}くす〉と書く。心=脳……なるほど、確かに、*無脳*だッ!
 寺学舎の座学では、{字面|じづら}だけを追うことを、{諫|いさ}めていた。これも、当時誰かが、然修録か後裔記に書いていたと思う。
 〈忙〉の文字の意味ではなく、〈忙しい〉という言葉が、本当に意味しているものとは、一体全体、なんなのか……。 

      **題材の{講釈|レクチャー}**

   《 余裕がないから、忙しいと言う 》

 悩みごとの一つに、〈忙しい〉というのがある。
 この言葉、恥ずかしい悩みごとのはずなのに、なんと!よく耳にすることか。
 「忙しくて、勉強する{暇|ひま}がない!」……と、猫も杓子も、{二言|ふたこと}目には、「忙しい」「忙しい」だ。
 江戸後期の世情を伝える書によく出て来る人物の一人に、佐藤一斉がいる。一七七二~一八五九。
 儒学者で、幕府の儒官を務めた。郷里は、{美濃|みの}岩村藩(岐阜県岩村町)。漢文の経書に訓点を{施|ほどこ}した人物としても有名。返り点、送り仮名、振り仮名を付けて、あたいら子どもでも、直ぐに読めるようにしてくれた、大発明家!
 これ、世にいう*一斉点*。
 その門弟も、渡辺崋山や佐久間象山と、{錚錚|そうそう}たる顔ぶれだ。

 その一斉先生が、故郷の岩村藩のために、なんと! 憲法を作った。『重職心得箇条』が、それ。
 そのなかに、{斯|こ}うある。
 「重職たるものは、{如何|いか}ほど忙しくとも、忙しいと言はぬがよきなり」
 これを、分解して説くと……。
 「忙しいと言うな。
 心に随分な余裕を持たねば、難題や大事を取り計らうことなどできぬ。
 つまらぬこと、余計なことまで、すべて自分でやり過ぎてしまうから、暇が無くなる。
 {故|ゆえ}に、肝心なときに、対処する暇が無い。
 {終|しま}いには、『忙しやーァ!!』と、きたもんだッ!」

   《 貧乏暇なしでも、忙しくはない 》

 そんな重職の心構えが無くても、どんなに忙しくても……{即|すなわ}ち、暇が無くても、たとえ、どんなに貧しくても、*これ*一つさえ持っていれば、随分な大事、相当な大業を、成すことができる。
 *これ*ってーぇ?!
 **志**だ。

 幕末の歴史家で、飯田{黙叟|もくそう}という人物がいた。十六歳の貧乏少年だったころ、水戸の光國卿が書いた『大日本史』を読んで、感奮!
 大人になっても貧乏で、勤王の志を持ちながら、昼は有栖川宮家などに仕え、夜は父親の面倒に付き合うという、まさに、貧乏暇なしの多忙な日々……のなかで、なんと! 独力で、名高い『日本野史』全二九一巻を、完成させる。
 この黙叟先生も、勝海舟と同様、本を買う金などなく、『大日本史』を二冊づつ借りては書き写し、それを参考資料として、南北朝までを学んだ。『大日本史』は、その南北朝の時代で、終わっている。
 そこで、貧乏サラリーマンの黙叟青年! 『大日本史』の跡を継いで、近代史の叙述を、はじめる。これが、『日本野史』全二九一巻が、*名高い*と称される{所以|ゆえん}だ。

 「貧乏暇なしなんで、すいまへーん!!」……なんて言い{訳|わけ}、恥ずかしくて、口が裂けても言えないっしょ!

   《 超多忙な大臣は、博士にもなる 》

 明治維新前後の一八〇〇年代、イギリスの政治家も、凄かった!
 世界一多忙な大臣と言われた、エドワード・リットン卿。今風に呼ぶと、植民地担当大臣。仕事柄もあってか、大の旅行家。しかも、なんと、作家! その著作は、数十巻に及ぶ。
 同じくこの時代、多忙な大臣と言えば、やはり外務大臣。その、エドワード・グレー卿。
 この超多忙な政治家生活のなか、{蛙|カエル}の*研究*で一*家*を成し、小鳥の研究でも、名を成した。
 アメリカのテオドル・ルーズベルト大統領を迎えて、ロンドン郊外の森を散歩しながら、小鳥の生態や鳴き声を、事細かに説明したという。これには、当代世界中の政治家たちを、{床|ゆかし}がらせたそうだ。

   《 戦火の陣中でも、文武両道成る 》

 「忙しくて、勉強する{暇|ひま}がない!」という有名な言い訳を、最初のほうで紹介したけれど……。
 安土桃山時代から江戸時代にかけて……{所謂|いわゆる}、戦国の世。これまた多忙、直江山城主、直江兼続。多忙な戦火の{最中|さなか}、『古文{真宝|しんぽう}』上下二巻を、写本。しかも、細かい註釈の数々まで、実に丹念に書き写してある。更に、末尾に、斯うある。
 「対陣三越月にして成る」……と。
 戦乱渦中最前線の敵前陣中にて、三か月で写し取ったのだという。まったく、どんなに忙しくても、どんなに暇が無くても、勉強とは、どんなときにでも、どんなところでも、出来るものなのだ。
 
   《 闘病でも、〈忙しい〉を掛け持ちする 》

 はい♪ 闘病で超多忙と言えば、寺学舎の座学でお馴染み、陽明先生こと、王陽明。
 病躯を引きずって、将軍として内乱地を転々。その最中、真剣な読書、学問、教育、詩作、論述に絶え間が無い。その先生を追っ駆ける弟子たち……。
 一日の戦闘を終えると、夜営の{帷幕|いばく}……所謂作戦本部の中で、{篝火|かがりび}を燃やして、そこで書物を題材にして、弟子たちに講義を行った。
 弟子たちも、ヘトヘト。明朝、やっとのことで目を覚ますと、なんと、陽明先生! 既に、前線に進軍中……。
 
      **{蛇足|スーパーフルーイティ}**

 兵士たちは、戦局が厳しくなるに{順|したが}って、徐々に、小説とか新聞雑誌などの{紛|まぎ}らわしの読書から、哲学や原始仏教などの、真剣な読書へと変わっていくのだそうだ。
 生死を{賭|か}けた{窮地|きゅうち}に追い込まれると、本当に命のこもった、尊い本でなければ、納まらない……即ち、身にこたえないということだ。
 登山や単独太平洋横断なんかも、その手記の中に、同様の体験が綴られていることが多いそうだ。
 人間、動き回ると、腹が減る。腹が減れば、食欲が出る。同様に、多忙になると、却って求道心が旺盛になり、頭脳が、躍動する。
 なーんだァ……多忙、最高じゃん♪
 健康も要らない、富裕も要らない、才能も要らない、暇も要らない。それら{何|いず}れも、真剣な学問、求道、大成に、なんら一切、影響なし。
 故に、多忙、おおいに結構!

 ところで、決死の船出の前夜、オオカミ船長は、『ONEPIECE』を読んでいた。
 真剣な眼差しで……なんか微妙に、理解できるあたい♪
 
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一息103 ミワラ<美童>の後裔記 R3.7.17(土) 夜7時

#### 一息スピア「睡魔に宣戦布告したマザメ司令。ムローが火を噴く」後裔記 ####

 《ぼんやりステージ、{アルファー|α}波のぼくたち》《覚醒ステージ(ベータ波)に、揃い踏み!》《変身ムロー先輩が、楽園・味覚・理性を語る》
   少年学年 スピア 齢10

 一つ、息をつく。

   《 ぼんやりステージ、アルファー波のぼくたち 》

 最初に、覚醒ステージ({ベータ|β}波)に呼び戻されたのは、オオカミ先輩だった。
 さて、ぼく……睡眠ステージ({デルター|δ}波)に吸い込まれていく道すがら、何やら、ムロー学人の声が、聞こえてきた。
 「暫くここで、ゆっくりすればいい……」
 その声に、オオカミ先輩が、突如! 反応したのだ。
 依然。睡眠ステージ(デルター波)に吸い込まれていく道すがら、ムロー学人の声に続いて、何やら、オオカミ先輩の声も、聞こえてきた。
 「有難うございます、学師! でも、おれたちは、{最早|もはや}旅人。気力を養ったら直ぐに、また、船を出さなければならばならない。これは、門人の{仕来|しきた}りの旅なんかじゃない。使命……天命の旅だッ!」
 そこを、知命ではなく、天命という言葉を使ったところは、(オオカミ先輩、ナイスーぅ♪)の、無知運命期のムロー先輩に対する気配り……思い遣りだと、ぼくは拝察した次第です……(ポリポリ)。
 すると、ムロー先輩が、言った。
 「まだ、正常心に戻っては{居|お}らんだろうが、時間が無いので、伝えておく。
 おまえが、自ら決めた行動の論には、問題が、二つある。
 一つ。
 あとどれくらい生きるかを分母にして、この島にいつまで留まるかを決めろ。{明日|あす}の命も知れぬというなら、今すぐ、この島を、出て行けッ!
 二つ。
 おまえらの船のことだが……。
 船底に大穴が空き、蓄電池は放電し、燃料は、{尽|つ}きている。しかも、この島に、液体燃料は、無い。固体燃料なら、山ほど、山になっとるんだがァ……」

 ここで、また一人、覚醒ステージ(ベータ波)に、呼び戻される。サギッチだった。そして、その声が、聞こえてきた。
 「コケイ燃料ーォ??」
 「石炭だよーん……♪」と、こちらは逆に、ぼんやりステージ(アルファー波)まで秒読みの、ツボネエ。
 「石炭で走る船に改造しない限り、この島からの脱出は、不可能というわけだ。それなりの公算は、ある。聞きたいなら聴けばいいし、聴くなら、その話が終わるまでに、あの船をどうするかを、決めろッ!」と、依然、覚醒ステージに君臨する、ムロー先輩。
 すると、ツボネンちゃん……。
 「話題、決まっちゃうよーん♪ ほかには、無いよねーん??」
 まさに、そのときだった。 
 睡眠ステージ(デルター波)で{遊弋|ゆうよく}していた魔性の、{鮫|サメ}の、{乙女子|おとめご}様が、覚醒ステージ(ベータ波)まで、一気に、垂直急浮上!
 「話題、こっちで決めていいのォ? ねぇ! どうなのォ?」と、マザメ先輩。
 「どんな話題だって、ムローなら、大丈夫だよん♪ ねーぇ!?」……と、「どうにか」というか、「しぶとく」というか、覚醒ステージに気分だけは踏み{止|とど}まっている少女ツボネエが、言った。 無論、そのトロリンとした眼差しは、不安そうな面持ちを隠せないムロー先輩に、向けられていた。
 こうなると、燃料なんか無くても{俄然|がぜん}!パワー全開……の、マザメ先輩。応えて、{斯|こ}う言った。
 「言ったわねーぇ!! じゃあ、三つ。
 一に、この島は、どうやってできたのか。
 二に、自然人が{企|くわだ}ててる人工知能チップについて、どう評価するか。
 三に、次の百年ごとの戦乱から、次の天地創造まで、どうやって起こってゆくか。
 以上」
 「どうでもいいけどさーァ♪ スピアの兄貴、爆睡だねーぇ!!」と、ほぼ陥落寸前のツボネン城……ではなく、ツボネエ嬢♪
 「ぅんーなわけ、ねぇだろがいッ! この、タヌキ野郎のバヤイ……だろーォ?! スピア!」と、サギッチ。
 (余計なことを言いやがってぇ……まったく!)と、思うぼく。

   《 覚醒ステージ(ベータ波)に、揃い踏み! 》

 まァ、そこまで言われたら、仕方がない。
 「マザメ先輩には、逆らいたくない」というのは、寺学舎の男ども共通の不文律だけれども、このときばかりは、(女の浅はかさに、どうしても、背を向けるわけにはいかない)って、思ってしまった。
 なので、言ってしまったのだった。
 「マザメ先輩さーァ!!
 問いは、的を{射|い}てるかもしれないけど、もし、{訊|き}く相手を間違えているとしたら、ぼくら四人は、連行されて収監! 自然エスノは、計画も{儘|まま}ならないうちに、絶滅へと追い込まれる。
 マザメ先輩の一言で、すべてが終わってしまうんだ。カアネエやシンジイの長年の労苦も、理由は知らないけど、ザペングール島のおねえさんの大怪我も、すべて無駄になってしまうんだ。
 ムロー先輩やツボネエが、今でもぼくらの味方だって、確かな{論的証拠|エビデンス}を掴まなきゃダメってことさ。マザメ先輩は、何かを直感して、それを確信したから、今の問いを、ムロー先輩にぶつけたんだよねぇ? だよねーぇ♪
 ぼくたちは、今、微妙な立ち位置で、片足を交互に地に着けながら、ヨーロ、ヨーロって、*やじろべえ*みたく、仕方なく突き動かされてるんだ。
 一瞬の油断が、ぼくらみんなを、地獄へ突き落すことになるんだよ。自覚しようよ。ねぇ、えーかげん!」
 
 そんなふうなことを言い終えると、矢庭にツボネエの声……。
 「起きてたんだーァ!! スピアの……アニキーぃ♪」
 そのあと、少しの間。
 ムロー先輩が、言った。
 「ツボネンちゃん♪
 わしの机の引き出しから、黄緑色の小さい紙の箱を、持ってきてはくれんかァ」
 ツボネエが、応えて言った。
 「はーぃ♪」
 その小さな紙の箱を受け取ると、ムロー先輩は、なんとも言い難い、微妙に幸せそうな顔になって、{斯|こ}う言った。
 「{明日|あす}の命を知るとな。人間、不思議なもんでなァ。一瞬でいいから、自分に、ご{褒美|ほうび}を与えたいって、そう思うものらしいんだ。
 こういう芸当を、素直に受け{容|い}れると、何故か不思議と、森の中の水たまりで求愛の乱舞をしている数百の赤とんぼたちの美しい愛の営みを、思い出さずにはいられない。
 おまえらにも、{直|じき}に、{解|わ}かることだ」
 ムロー先輩は、そう言い終わると、三分の一に減って揉み消されている紙巻きタバコに、火をつけた。そしてまた、言った。
 「オーガニック。無添加の天然のタバコの葉っぱに、同じくオーガニックのミントの葉っぱを混ぜて、ギュッと固く巻いてある。だから、こんなに細いんだ。そもそも、これが{細|ほそ}いか太いかなんて、おまえらには、判らんだろうがなァ。
 明日の命が知れると、妙に、健康のことが、気にかかるようになってなァ。まァ、おまえらが言いたいことは、判る……(アセアセ)。
 自分で育てた無添加無農薬の植物や、オーガニックを{謳|うた}った商品でないと、どうも、安心して食べれなくなってしまってなーァ……」
 
   《 変身ムロー先輩が、楽園・味覚・理性を語る 》

 〈新新ジャンル〉と謳われた、微妙にノンアルコールの甘酒を発泡させたみたいな、炭酸飲料……麦とトウモロコシの発酵酒を、チビチビと{啜|すす}るムロー先輩……。
 暫しの……間。
 ムロー先輩が、ムロー学級の五人を眺めながら、語りはじめた。

 「まァまァ。
 ちょっとだけ、ゆっくり、飲ませてくれ。
 その{訳|わけ}は、{斯|こ}うだ。
 十九世紀の初頭、イギリス……特に、マンチェスターのジン・パレス。居酒屋の起こりの話だ。
 酒を売る店の中に、カウンターが、置かれることになった。労働者たちは、まるで、ベルトコンベアに{載|の}せられた**物**のように、急いで酒を飲んで、〈酔っぱらい〉という不良ロボットに変えられると、次々と店外に放り出され、再び工場へと、送り返されて行った。
 今で言う、バーだな。
 明日の命が知れるとな。そんな酒の飲み方は、したくないんものなんだ。
 タバコ、{然|しか}りだ。タバコは、安らぎと息抜きと精神の集中力まで高めてくれると、西洋の狩猟民族たちは、長い間、そう信じて疑うことを知らなかった。
 十七世紀から十八世紀には、パイプで……タバコの葉っぱを切り、パイプに詰める。
 十九世紀の初頭になると、それが、葉巻に{替|か}わる。吸い口を切って、火を起こして、口にくわえるだけ。
 それから{暫|しばら}くすると、マッチも、発明される。火打ちをしなくても、{擦|す}るだけで直ぐに、火がつく。
 そして十九世紀の後半、シガレットが、登場する。

 一本を吸い終わるまで、葉巻は半時間。シガレットは、精々五分だ。居酒屋のカウンターと、同じことさ。
 安らぎも、息抜きも、すべてが、スピードアップだ。それが、文明人たちが考えた、亜種存立のための進化だったというわけだ。
 だが、その進化のメカニズムの正体は、ベルトコンベアに旧態人間たちを載せて、自然界から放り出す。そのメカニズムが、葉巻がシガレットに取って{代|か}えられた様に、様々な工夫によって、スピードアップされてゆく。
 文明人たちは、そのスピードアップが、身に{沁|し}みついていやがる。{真面|まとも}にぶつかれば、すべてが高速で、目が回って、瞬時に、廃残兵が{堆積|たいせき}した谷底へと、不法に投棄されてしまう。
 {故|ゆえ}に!
 {即|すなわ}ち!
 次の百年ごとの大戦は、我ら自然エスノにとって、決死……全滅必至の{闘戦|とうせん}と、相成ろう。和のエスノの人{等|ら}も然り、焼け跡で生き長らえることができるのは、幽霊か怨霊くらいのもんだ。
 余談が、過ぎた。
 では、三つの質問に、答えよう♪」

 急に眠くなったのは、ぼくだけではなかったみたいだ。
 睡魔に戦いを挑んだのは、ぼくらの心強い仲間……マザメ艦隊司令だッ! 見捨てて、眠りに落ちるわけにはいかない。でも、辛い。
 (あーァ……)と、{嘆|なげ}くぼく(ら)。  

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一学99 ミワラ<美童>の然修録 R3.7.11(日) 朝7時配信

#### 一学ワタテツ「〈考える〉という驚異の能力! その{機巧|からくり}を知りたい」然修録 ####

 『〈考える〉という能力。実は、どんな機巧なのか』 《〈考える〉は、四つのステージで暗躍する》《脳波は、神様が発明したコンピューターだッ!》《人は、肉体の生い立ちを語りたがる。では、脳は?》
   門人学年 ワタテツ 青循令{猛牛|もうぎゅう}

 一つ、学ぶ。

      **{主題と題材と動機|モチーフ}**

   《 {主題|テーマ} 》

 〈考える〉という能力。実は、どんな機巧なのか。 
 
   《 その{題材|サブジェクト} 》

 〈考える〉は、四つのステージで暗躍する。
 脳波は、神様が発明したコンピューターだッ!
 人は、肉体の生い立ちを語りたがる。では、脳は?

   《 この主題と題材を選んだ{動機|モーティブ} 》

 オオカミの後裔記……「船長の選択」の段落を読んでいて、{何気|なにげ}に思ったことがある。
 ザペングール島の、おねえさん先生は、考えることによって、オオカミたち四人の命を、救った。
 (生きたい)、(救ってあげたい)という思いは、ジジサマも、当の四人も、おねえさん先生と、なんら変わるところは無かったはずだ。
 だのに、実際に四人の命を救ったのは、おねえさん先生の〈考え〉のみだった。
 何が違うのかッ! 何が、違っていたのかッ!
 {何故|なぜ}、考えることに、そんな、実際の行動をも{凌|しの}ぐような、驚異の能力が、秘められていたのか……。
 どうにも、わからーん!! 

      **題材の{講釈|レクチャー}**

   《 〈考える〉は、四つのステージで暗躍する 》

 禅僧は、坐禅をして無念無想になるそうだが、それは、よほどの修行の結果である。目を開けようが閉じようが、次から次へと、雑念が浮かんでくる。{挙句|あげく}は、眠くなる。
 爆睡! ここでやっと、無念無想……(ポリポリ)みたいな。
 かと思えば、夢の中で、また、バカなことを考えている……だけならまだしも、冷や汗をかいたり、怒鳴ったり、{空|くう}を蹴飛ばしたりもする!
 寝ても覚めても、考えている……夢を見るということは、考えるということーォ?! 鳥や{獣|けもの}も、夢を見るという。犬や猫が寝言らしきことを言うのは、周知の事実。と、いうことは、鳥や獣たちも、人間と同様、何かを考えているぅ?
 だとすると、「人間は、考える動物である」は、誤り?
 正しくは、「人間は、動物であるから、考える」?

 では、その正解を、求めよう♪
 「動物は、考える。人間は、言葉を使て考えることも、できる」
 ……と、これが、正解だ。
 その証拠に、人間は、夢の中で本を読んだり、人と対話をしたり、天才と呼ばれる人たちに到っては、夢の中で発明をしたり新しいことを発想したりまでやってしまう。と、いうことは、夢の中で、目覚めているとき以上に、猛烈に考えているということだ。
 そこで、整理してみると……。

   【覚醒ステージ】
 顕在意識。
 意識レベルは、強い。
 言葉で考える。
 因果関係を、言葉で説明できる。
 〈人〉

   【ぼんやりステージ】
 半顕在意識+半潜在意識
 意識レベルは、弱い。
 {為|な}すがまま、取り留めも無く考えている。
 妄想。
 〈人〉〈犬・猫・猿〉

   【夢のステージ】
 潜在意識。
 意識レベルは、微弱。
 好き勝手に{心象|イメージ}が湧いて出てくる。
 ただ引きずられるのみ。
 〈人〉〈犬・猫・猿〉〈鳥・獣〉

   【睡眠ステージ】
 無意識。
 意識レベルは、不通。
 考えない。
 ただ、生きているのみ。
 〈人〉〈犬・猫・猿〉〈鳥・獣〉〈虫〉
 
 覚醒ステージの〈言葉で考える。因果関係を、言葉で説明できる〉を、一つの文に{纏|まと}めると、〈言葉を使って、因果的に物事を考え出す〉と、相成る。
 ボケーッとしていたのに、ハッとして、またシャキッとして仕事をしはじめるなんていう情動は、正に、この言葉によって、因果的に意識を取り戻したと言える。
 かと思えばまた、上司のこととか、彼女のこととか、妄想がはじまって、また締まりの無い顔になって、ボンヤリしているうちに、到頭、うつらうつらと、眠くなってしまう。
 ここのところ、〈{莫|まく}妄想〉が、何度も主題を飾っていたようだけれども、そもそも動物とは、妄想する生きものなのだ。なので、生物学的にも、自然の摂理から観ても、妄想しないなんてことは、土台無理な話なのだ。

 もし、人間から妄想を取り去れば、発明も、新たな発想もない。妄想を取り去られた人間は、「そこに{居|い}る」とは言わず、「そこに置いて{在|あ}る」と、言うべきなのかもしれない。
 人間は、自らその〈置いて在るもの〉にはなれなかったけれども、それを造ることには、成功した。
 それが、コンピューターだッ!

   《 脳波は、神様が発明したコンピューターだッ! 》

   【カッ飛びステージ】
 {ガンマー|γ}型 30ー50{ヘルツ|HZ}
 感情は、過度の興奮状態(……{昴進|こうしん})。
 知的な活動も、過度の緊張!

   【覚醒ステージ】
 {ベータ|β}型 20ー30HZ
 感情は、興奮状態。
 知的な活動は、そこそこ緊張。 

   【ぼんやりステージ】
 {アルファー|α}型
 (1)10ー13HZ
  感情は、安静(閉眼)な状態。
  知的な活動は、ごく平凡。
 (2)7ー9HZ
  感情は、変化なく安定(恒常的)。
  知的活動は、まあどうにか適度。
  頭は休んでいるので、常識外れなことも考える。
  半面、斬新なアイデアも、思いつき易い。

   【夢のステージ】
 {シーター|θ}型 6ー7HZ
 感情は、{眠気|ねむけ}と疲労感。
 知的活動は、やや低下。
 
   【睡眠ステージ】
 {デルター|δ}型
 (1)4ー6HZ
  感情は、入眠状態。
  知的な活動は、かなり低下。
 (2)1HZ……1秒間に1回振動(波の山が1つ)
  感情は、完全睡眠状態。
  熟睡……無意識。
  知的活動は、{殆|ほとん}ど低下。
  産まれたばかりの赤ん坊と同じ。
  空腹や接触に、機械的に反応するのみ。

 (無意識と言っておきながら、刺激に反応するぅ?)と、ここに納得がいかない人は、多かろうと思う。
 頭脳が働く……脳波数が変化すること。
 ……と、それ以前に、ただ生きていることを、{掌|つかさど}るものがある。
 {即|すなわ}ち、それが、〈命〉というもの。
 なので、頭脳が〈考える〉ことをしなくても、赤ちゃんは、腹が減れば泣くし、手を突っつけば、反応して動く。
 つまり、脳ミソ……脳髄は、〈刺激や内的な変化〉→〈命〉→〈反応〉という機能を、脳波に関係なく、持っているのだ。

 その機能とは……。
 (1){感覚器官|リセプター}に、刺激が与えられる。
 (2)これを、電気信号に変えて、〈命〉に送る。
 (3)この信号が、{予|あらかじ}め組み込まれているプログラムに{順|したが}って、生きるために最適な反応が、選択される。  (4)それを、電気信号の指令に変えて、{行動器官|アクセプター}に送る。
 (5)反応の行動を、起こす。

 この、一連の働きのことを、〈本能〉と呼ぶ。
 どうだろう……何かと、そっくりではないかッ!
 そう、コンピューター!!
 太古、その*本能*という名のプログラムの詳細設計をしたシステムエンジニアは、言わずもがな……人間ではない。
 神様!
 {嗚呼|ああ}、恐るべし!
 
   《 人は、肉体の生い立ちを語りたがる。では、脳は? 》

 さて、この本能というプログラム……赤ちゃんは、その誕生の直後から、自ら、猛勉強をはじめる。
 無論、まだ言葉を知らないわけなので、その勉強の方法は、外からの刺激や、身体の中の変化を、先ずは感じるしかない。それによって、{心の中に映し出された象|イメージ}が、頭脳に浮かんでくる。
 このイメージが、頭脳に記憶される。すると、何か新しい環境に遭遇したときに、その記憶の中から自動的に、必要と思われるイメージが、呼び起こされる。それを参考にして、適切な行動器官に、指示の電気信号が、送られる。
 この段階では、まだ鳥や{獣|けもの}と同じだ。なので、ここまでの機能を、〈脳の動物系〉と呼ぶ。
 また同時に、本能として、過去の記憶から、自動的に最適な体験を選択して、その時々の行動に役立たせる{訳|わけ}だから、これを、〈直観〉ともいう。

 直接、イメージを*観る*から、直観。
 〈命〉が直接刺激を感じて反応するほうは、*直感*と呼ぶ。

 で、いよいよ、人間だけが持つ能力……言葉の登場だ。
 右脳をフル稼働させながら、イメージを記憶しては、また引っ張り出すという、鳥や獣と同じ能力だけで、猛勉強をはじめた赤ちゃん……。
 次は、「これ、なぁにーぃ?? あれ、なぁにーぃ??」と、質問攻めが、はじまる。これは、その呼び名が知りたい……というより、記憶しているイメージの一つひとつの物や人に付いている名前を、訊き出そうとしていると言ったほうが、近いかもしれない。これは、一転して、左脳の仕事となる。
 こうして、外部から教えられたり学んだりした言葉を、内部のイメージの一つひとつと結びつけてゆく。この、内部の人や物と結びついた「マンマ」とか「ワンワン」とか「乳首」とかいった言葉のことを、〈バロール〉と呼ぶ。
 また、まだこの段階では、記憶されているイメージの中の物や人は、互いになんの因果関係もなく、ただ{発生した一連の処理|トランザクション}に{順|したが}って、{法則性もなく|ランダムに}散らかっているだけだ。
 これを、〈空間配置型〉の記憶といい、イメージの記憶が、これに当たる。

 ここで、{躾|しつけ}に{於|お}ける、我が子の右脳と左脳の活用法について、説明する。
 沸騰しているヤカンを、触ろうとする。
 手を、パチンと、叩く……右脳が、働く……イメージが、記憶される……「いけません!」と言って、{叱|しか}る……左脳が働く……言葉が、イメージと結びつく。
 こうやって学習した我が子は、次からは、「いけません!」と言っただけで、出しかけた手を、引っ込める。
 「それくらいのことなら、うちのワンちゃんにだって、出来るわよォ!」という、反論じみた言葉も聞こえてくるが、この段階では、まァ、その通りである。

 ところが、恐るべし赤ちゃん!
 三歳ごろから突然、「これ、なぁにーぃ??」の質問が、一転して、「{何故|なぜ}ーぇ??」とか、「どうしてーぇ??」の質問攻めに、大転換される。
 これを、〈論理思考〉という。
 やっとここからが、人間特有の、能力だッ♪
 イメージと言葉の記憶以外に、その因果関係も、記憶したいと思うようになる。
 何故なら、その因果関係を記憶しておけば、将来何かが起きたときに、その事象が、周りにどんな影響を及ぼすかを類推したり、その次に何が起こるかを予測したりすることが、できるからだ。

 この卓越した能力、素晴らしい能力は、大事な〈命〉を{護|まも}りたいという強い願望と、そのための燃えるような情熱によって、進化を果たし得たものなのかもしれない。
 こうなってくると、最も大事なことは、記憶の中から、どの言葉を引き出すかに{懸|か}かってくる。この、脳の記憶の中の言葉と、それを選び出す脳の働きを合わせて、〈脳の言語系〉と呼ぶ。
 書を読んで、先人偉人の語録に感憤して、己の行動に活かすということも、この、〈脳の言語系〉が、為せる技なのだァ♪
 
      **{蛇足|スーパーフルーイティ}**

 人間に生まれて、光栄に思う。
 牛くんやカナブンたちのぶんまで、一所懸命、〈考える〉ことに精進したいと思う。 
 
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Ver.,1 Rev.,8
https://shichimei.hatenablog.com/about

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一息102 ミワラ<美童>の後裔記 R3.7.10(土) 夜7時配信

#### 一息ツボネエ「川筋の長屋……人生最初で最後?の休養日」後裔記 ####

 《ムローの長屋生活、喜ぶスピアの兄貴》《〈風呂〉の観を{呈|てい}さなかった山女の有り{様|よう}》《SAKE、デビュタント!》《この世の〈就寝許可証〉》
   少女学年 ツボネエ 齢8

 一つ、息をつく。

   《 ムローの長屋生活、喜ぶスピアの兄貴 》

 「4人で、よかったんだなッ?」と、ムロー。
 「はい」と、ハリツケゴクモン……ではなく、オオカミ先輩♪
 「ならば、よし」と、ムロー。
 「ここ、どこォ?」と、マザメのねーさん。なんか、居心地が、悪そう。
 「仮の住まいだ」と、ムロー。
 サギッチは、無言。「腹が減って、喋る元気なんかねぇよッ!」と、顔に書いてある。
 そして最後……スピアの兄貴!
 なんか、嬉しそう。人呼んで、長屋大好き男!

 {土壁|つちかべ}に囲まれた六畳一間だけの居宅が、一つ屋根の下で、長い平屋を成している。
 その長屋に沿って、子どもたちの粗末な長靴でも靴下を濡らさずに渡れそうな浅い谷川の支流が、延びている。そのせせらぎでは、油断しきったアマガエルが、ピョンピョン{跳|は}ねて遊んでいる。
 「おい! 醤油を、借りて来い」と、ムロー。
 「わかった。友達作戦で、いい?」と、アタイ。
 「手段は問わんが、こいつらの誰かを連れて行け。そのほうが、余計な時間を取られず、{幾|いく}ばくかの気兼ねも省ける」と、ムロー。
 「わかった。速攻逃げきりだねッ♪」と、アタイ。
 「それでいいが、借りたものは、必ず、{何某|なにがし}かの礼を添えて、速攻で返せ。いいなッ!」と、ムロー。
 「その前に、風呂に連れて行こうよ。だって、臭いじゃん!」と、アタイ。
 「わかった。銭湯に着いたら一番に、誰か麦と{蕎麦汁|そばじる}を融通出来んか、番台のオヤジから情報を取れ! 但し、くれぐれも、貸しをつくるでないぞッ!」と、ムロー。

   《 〈風呂〉の観を呈さなかった山女の有り様 》

 オオカミ先輩とスピアの兄貴とサギッチの先輩くんは、その後裔記から察するに、まだ文明が健全だったころに発祥した〈風呂〉という文化施設を利用しているような、そんな観を呈した生活ぶりだった。
 でも、マザメねぇさんのバヤイは、山小屋……元い。循観院に、風呂があるようには、読み取れない。
 と、いうことは……雨水を、{溜|た}めていたァ? 谷川に溜まっている{静水|せいすい}を、浴びていたーァ?! 夏なら{兎|と}も{角|かく}、長かった冬……火を起こして湯にしたところで、その直後の湯冷めは、強烈だッ!
 それより何より、マザメ様が、そんなことに手間をかけるような女だとは、どうしても思えない。ムローも、マザメのねぇさんのことは、{殊更|ことさら}に気にしていたようだ。
 こんなことを、言っていた。

 「アイツら、立命期の男ども三名……。
 その立命期の後半、少循令の初期段階に{於|お}いて、強いて「功績があった」と何か例を挙げなければならないとするならば、それは唯一、マザメくんを連れ出し、しかも生かしたまま、この島まで旅の共を勤め上げたことだ。
 それが今後、{如何|いか}なる{禍|わざわい}の{種|たね}になるかは……兎も角! 自らの行動から、女性を大事にするということを学んだのであれば、それは素直に、『よし♪』とすべきところだろう。
 女という{種|しゅ}は、頭脳は{聡賢|そうけん}だが、その心は、{危|あや}うく怖ろしい。
 海の神が、{男神|おがみ}のスサノオだったから良かったものの、これがもし、女神のアマテラスだったならば、マザメくんに{好|よ}からぬ{嫉妬|しっと}と怖れを抱き、海も空も、もっと激しく、{荒|すさ}んでいたことだろう」……と。 

   《 SAKE、デビュタント! 》

 陽が、落ちた。
 銭湯から戻ったアタイらは、醤油と麦を、ムローは、小川を{遡|さかのぼ}り、{渓流|けいりゅう}の静水で{戯|たわむ}れていた天然{鰻|ウナギ}を、持ち帰っていた。たいそう立派な、{厭|いや}らしい太さをしている。
 再び、再会したみんなが揃ったところで、ムローが、言った。
 「寺学舎の我らが学級八名のうち、ここに六名が、無事にというか、なんちゅうか、兎にも角にも、{相|あい}{揃|そろ}った。
 この目出{度|た}い席に、(果汁とか牛の{乳|ちち}とかの調達を、忘れとるやんけーぇ!!)と、思われてしまうところだが、この島にそんなもんがあるという話は、一度も耳にしたことがない。
 {故|ゆえ}に{皆|みな}、これを、{呑|の}め♪」
 「これ、水?」と、マザメのねぇさん。
 「違う。文明がまだ健全だったころに発明された、機能性飲料だ」と、ムロー。
 「言わないのォ?」と、スピアの兄貴。
 サギッチの顔を、覗き込む。

 「なーんじゃ、そりゃ!」と、皆の期待に応えて、サギッチの先輩くん。
 「{蕎麦|そば}{焼酎|じょうちゅう}と、呼ばれておる。アマガエルたちから、そこの静水を{一汲|ひとく}み{拝借|はいしゃく}して、薄めてある。適度な冷水で、いい感じだァ♪
 拝借とは言っても、返す必要は、無いがなッ!」と、ムロー。
 「目出度いかどうかは別にして、兎も角、乾杯しようよッ♪」と、マザメのねぇさん。
 グラスは、{何故|なぜ}か土壁と同じ色の、茶碗……それでもまァ、ほどなく、乾杯を済ませた。
 四人の先輩たちの{覚束|おぼつか}無い飲みっぷりに、思わず苦笑する、アタイ。そして、{斯|こ}う言った。
 「SAKE、デビュタントだねぇ♪」
 「ナ・ン・ジャ・そりゃーァ♪」と、歌いだすサギッチ。
 「初心者という意味だ。べつに、褒められた{訳|わけ}じゃない!」と、ムロー。

   《 この世の〈就寝許可証〉 》

 「てか、初舞台だよ。修行環境仮想薬で{創|つく}った、修羅場の{一|ひと}コマ……」と、アタイ。
 「はッ! はーァ??」と、スピアの兄貴。
 「元々、酒の{類|たぐい}は、プロパガンダや洗脳によって狂わされたような、異常な心を仮想的に創り出すための妙薬だった。
 それを、自ら実体験し、その状況下で、{如何|いか}に正常な思考をし、如何に適切な行動を{為|な}し遂げられるかという、仮想修羅場空間に{於|お}ける修行を、目的としていたのだ。
 だが、どんな薬も、元は、毒だ。
 醗酵アルコール飲料という、{類|たぐい}{稀|まれ}な効果を発揮する修行薬だが、それだけに、{病|や}みつきとなる危うさを、多分に{孕|はら}んで{居|お}る。
 心を狂わされたまま、元の正常な心に戻らなかった中毒者が、続出したのだ。
 それが、ヒト種が分化し、文明{民族|エスノ}という亜種が誕生するまでの歴史……史実の一つだ」……と、仮想修羅場体験中の四人に、真顔で説くムロー!

 「それはそうと、さっきから黙りこくってるけど、なんか、文句でもあんのかい?」と、オオカミ先輩にからむ、マザメねぇさん♪
 すると、{俄|にわ}かに、なんら{躊躇|ためら}う様子もなく、ごく自然に、オオカミ先輩が、応えて言った。
 「マザメ!
 牛の乳が無いんなら、おまえのオッパイ、吸わせろッ! ちょっとくらいなら、出るだろッ! {乳|チチ}……」
 「オッパイ? どこにあるのォ?」と、サギッチ。
 「なんか、怖ろしい夢、見てた……(ムニャムニャ)」と、独り{言|ご}ちるスピアの兄貴。
 言わずもがな、その怖ろしい夢は、夢では終わらなかった。
 ムローが、蒲鉾の板に、マジックインキで、何やら文字を書いている。書き終わると、無言のまま、その蒲鉾板を、四人に示した。
 〈就寝許可証〉と、書かれていた。

 四人が寝静まったのを見届けると、ムローは、立ち上がった。
 そして、{斯|こ}う言った。
 「暫くここで、ゆっくりすればいい。家に風呂は無いが、湯銭だけは、どうにかしよう。{乙女子|おとめご}に、不自由や恥ずかしい思いは、させたくないからな。
 おまえには、苦労をかけるな。
 まァ、勘弁してくれーぃ♪」……と。
 てか、それって、なんか、夫婦の会話ァ?
 ……みたいな(えーぇ!!)。

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