MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

一息75 ミワラ〈美童〉の後裔記 R3.4.2(金) 夜7時

#### 後裔記「史料室で見かけた意外な二人の意外な目的!」 少年サギッチ 齢9 ####

 史料室で回想。おれが住まう深層住宅の由来に酔う。そこで声を掛けてきた意外な二人。同じウミネコの話でも、意外な一言に反応した二人。*祖先の捜索*に駆り立てた*二人の執念*の真相とは!

 一つ、息をつく。

 なるほどねッ♪
 HGVテックの研究棟の地下にある、深層住宅のことさ。

 「ビルが林立する大都会じゃあるまいし、{何|なん}で地下に、しかも、縦方向にだけ細長く掘ったところに、狭い狭い社宅の部屋が連なっているのか……まァ、そんな歴史があったとは……。でもそれが、おれら子々孫々の誰でもなく、あの、メタボのウミネコの遺伝子に刻まれてたとは……まァ、いっかーァ♪」と、{何気|なにげ}に、ほぼ無意識に、独り{言|ご}ちていたおれだった。

 少しの間……するとまた、次から次へと、新たなる言葉が、突いて出てきた。続いて、また無意識に、言ちるおれ。
 「地上の住まいをあのままにしといたら、延々、海や空からやってくる文明界の{見世物|みせもの}商人たちに見つかりはしないかって、いつもビクビクしてなきゃなんない。
 それにさァ。{奴|やつ}らが空からやってくるたびに、また、茶と黒の鳥たちに大集結してもらって、翼の{絨毯|じゅうたん}を被せてもらわなきゃなんないしさ。なんか、申し訳ないよなァ。
 そのまま、森ん中に穴を掘らなかったのは、山だから、岩盤の地層でもあったのかもな。隣りの島から掘り始めて、わざわざ山の奥の遺跡の下まで掘り進んだってことは、そこから地上に出るまでの地層が、いちばん柔らかかったってことかもしれんしな。
 何せ、穴掘り名人なんだもんな、おれらのご先祖さまはッ!
 で、{下手|へた}に浅く横に掘って、万が一、発掘をおっぱじめっちまった文明人たちに見つかりでもしたら、それこそ、絶好の観光資源の見世物小屋……じゃなくて、見世物{洞穴|どうけつ}だからな。
 縦に長けりゃ、隣りの島から掘って出て来た穴を、そのまま使えるし、もし発見されそうになったら、出口を{塞|ふさ}いで、{暫|しばら}く大人しくしときゃいいんだからさ。
 てか、そのための部屋だったのかな。今、おれが住んでる地底の狭い部屋は……」

 ここは、その研究棟のなかにある史料室……の、黙読コーナー。
 まァ、一応は〈黙読〉って名前が付いてる場所だから、努めて小声でブツクサ言ってたつもりだけど、このだだっ広い史料室の利用者のなかで一人だけ、そのおれの蚊の吐息のようなブツクサが気に入らないらしい男が{居|い}た。
 おれの背後の書棚の前で仁王立ちして、何やら熱心に、目次だけ読んじゃー元の棚に戻し、また次の本の目次を読んじゃー戻し……と、それを延々と繰り返しながら、仁王立ちのまま、カニ歩きをして、おれが腰掛けてる席に接近しつつある。
 で、遂に、おれを視認して。{斯|こ}う言った。

 「なんだァ。おまえかよッ! だったら、もっと早く言やァよかったな。うッせんだよ、おまえッ! ブツブツ……ブツクサって。黙って読めッ!
 てかおまえ、本も持たずに、何を読んでたんだァ? 何も読まずに、ただブツクサ言いたいだけなら、外でやれッ!」と。
 まァ、ご{尤|もっと}も。異論なし。で、一応、{訊|き}いてみた。
 「ねぇ。何を熱心に、ちょこちょこちょこちょこ、次から次へと、立ち読みしながらカニ歩きしてんのォ?」
 「おれかーァ?! おれのことは、いい。だから、気にしないで、出て行ってくれーぇー♪ アーアー♪」と、オオカミ先輩。ハッキリ言って、歌うほうが、うッせえ!
 で、ついつい、余計なことを言ってしまった、おれ。
 「ひょっとして、民族史とか、郷土史とか、そんな本ばっか、見てない? 目次の中に、自分の先祖に関わるようなキーワードがないかどうか、探してたりするぅ? シロデブ……じゃない、シロメタ……どっちでもいいけど、あいつがマザメ先輩に言ったことが気に掛かって、その気になって、自分の祖先のこと、調べてたりして……。
 てかさァ。そんな個人的なこと、本にするかなァ。あったとしても、もしちゃんとした製本だったら自費出版で、小冊子みたいな粗末な{綴|と}じものだったら、精々{頒価|はんか}百円みたいな、趣味の本だよ。
 たぶんそれも無いだろうから、先輩が今やってることって、考えのない{徒労|とろう}ってやつじゃないのーォ?!」……と。
 こういうバヤイ、はっきりと言ってあげたほうがいいと思ったので……でも、口にせずに思うだけに{止|とど}めるのが、普通……(アセアセ)。
 案の定、オオカミ先輩が、その余計な話に応えて、おれに言った。
 「そうか。そうだな。気づかなかったよ。あわや、骨を折って損をするところだった。礼を言う。ありがとちゃん♪}……みたいなッ!

 また、暫くの間。そのあいだにオオカミ先輩、おれの隣りの椅子を引いて、腰掛ける。そして、言った。
 「おまえは、いいよな。調べなくても、先祖の中に例外を探す必要が無いからなッ!」
 「例外? 何の話ーぃ?!」と、おれ。
 「{鷺|さぎ}助屋一族。一人の例外もない。隣りの島の何とか{V|ブイ}テックの発案者で、あっちとこっちの何とかV社の両方の創業者だ。
 スピアだって、そうさ。血統書付きだ。座森屋一族。一人の例外もない」と、オオカミ先輩。何やら、不満というか、不服というか、{兎|と}に{角|かく}、不機嫌!
 「先輩だって、どこかの一族なんでしょ?」と、おれ。べつに、深い意味は無かった。言い換えると、何も考えずに、ただ何気に出た言葉!
 「ない! いや、ある。幽霊一族だ」と、オオカミ先輩。
 (なんじゃーそッ……おっとと、何じゃそりゃ!なんて、冗談で済みそうな空気じゃないな。黙ってるに限る。言語を省いて、何とやらァ♪)と、思い直して押し黙っていることができたおれ。偉いと思う。自画自賛♪
 ところが……。
 「{訊|き}かれないと、答えずらい」と、オオカミ先輩。
 「じゃあ。なんーじゃ、それは……ですかァ?」と、おれ。日本語に、なってない!
 「オヤジは、直ぐに消える。そして{終|つい}には、{居|い}なくなった。
 オッカアは、今の時代には、有り得ん! まるで、江戸時代にでも住んでいた女で、あの世からおれを監視して、必要とあらば、ひょっこりとおれの前に現れて、{訳|わけ}つの{判|わか}らん{御託|ごたく}を並べると、納得したようにサッサとあの世に帰っちまう。
 だから、幽霊一族……つっか、幽霊一家だッ!」と、オオカミ先輩。
 「ふーん。そうなんだァ♪」と、おれ。
 「てか、つっか、納得すんのかい!」と、オオカミ先輩。
 「闇雲に否定するのは、大人のすることっしょ!」と、おれ。
 「納得!」と、オオカミ先輩。
 「で、何で、例外を探さなきゃなんないのォ?」と、おれ。そこは、ハッキリさせておきたかったので。
 「例外ってことは、幽霊じゃないってことだ。幽霊じゃないってことは、ちゃんと成仏した普通の……というか、真っ当な人間ってことだろッ!」と、先輩。
 「でも、本には、出てないっしょ!」と、おれ。
 「見つけた」と、先輩。
 「マジっすかァ! すっげーぇ!!」と、おれ。
 「一人目は……」と、先輩。
 「そんなにーぃ!!」と、おれ。
 「声が、デカイ! 魔性の{鮫|サメ}{乙女子|おとめご}が、目を覚ますぞッ!」と、先輩。
 「それだけは、それだけは、それだけは、ご勘弁!」と、念を押し押し、おれ。
 「聞くは数奇、語るは{波瀾|はらん}。古来、偉人変人は、数知れず。
 で、一人目……大学の教授のような学士。
 次、一国の大臣のような士君子。
 次、{酒々落々|しゅしゃらくらく}と女豪を{湛|たた}えた{御寮|ごりょう}さん。
 次、無為自然で老荘的な{民|たみ}。
 次、{拘泥|こうでい}なく風流な流転人。
 次、{豪傑|ごうけつ}肌が{祟|たた}って、獄中{遣|や}る{方|かた}無く{堅気|かたぎ}同然の同僚……元い。同獄の女に手を出し、獄中結婚した不届き者。
 次、その続き。獄中にあってはその野郎の子を産み、{娑婆|しゃば}にあってはその子を女手ひとつで育て上げた、その野郎の見上げた恋女房。
 で、結論。
 数々の候補が{挙|あ}がった中で、おれの祖先は、その獄中で産れた子だった。
 以上」と、先輩。何故か、どや顔! 意味不明……。
 「えッ! 一人目はァ? 二人目……てか、オオカミ先輩の祖先って、最後の獄中産れの子と、獄中結婚したその子のオヤジとオカンの、三人だけーぇ??」と、おれ。{判|わか}りきったことを、{敢|あ}えて言ってしまった。{大人気|おとなげ}ない……元い。{子供気|こどもげ}ない……??

 まさに、そのときだった。
 「あんたらかい! {判|わか}ってたら、もっと早くすっ飛んできて、おまえらのドタマ{蹴|け}り回して、キンコン♪ カンコン♪ 言わしてたのにさァ!
 うッせーんだよ、さっきから。
 あたい、今、大事な調べごとしてんだ。
 黙って読めないんなら、とっとと出て行きなッ!」
 と、言わずもがな。
 {既|すで}に……てか、とうの昔に、お目覚めでいらっしゃった魔性の鮫オトメゴが、二人の背後で、仁王立ち!
 どこかのオオカミ先輩より、よっぽど様になっている……てか、比較にならないくらい、恐ろし{気|げ}!

 オオカミ先輩が、絶妙な小声で、おれの目を見ながら、言った。
 「おまえ、今おれに言ったのと同じこと、先祖捜索中のこの生きものに、言えるかァ?」
 無論、おれの首が、無意識に、高速スイングするのだった。
 「寒いのーォ?!」と、マザメ先輩。
 「うぅ、うぅぅ、ぅん! 大丈夫。ありがとォ」……と、有りったけの勇気で言葉を絞り出した、おれなのだった。

####
「自伝編」夜7時配信……次回へとつづく。
「教学編」は、自伝編の翌朝7時に配信です。

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その編纂 東亜学纂
その蔵書 東亜学纂学級文庫
その自修 循観院

一学71 ミワラ〈美童〉の然修録 R3.4.2(金) 朝7時

#### 然修録「世界に君臨するプレゼンの神様。その原動力は、禅!」 少年サギッチ 少循令{猛牛|もうぎゅう} ####

 我が国の*存亡のカギ*は、*プレゼン*にあり。プレゼンは、原始仏教にも通じ、洋の東西を理解で繋ぐ、*偉大なる学問*? ではそれを、どうやって学ぶ?

 一つ、学ぶ。

 経営哲学の自己啓発といえば、オーストリアのピーター・ファーディナンド・ドラッカー。
 驚異のプレゼンといえば、アメリカのスティーブン・ポール・ジョブス。
 この二人を{繋|つな}ぐ{言乃葉|ことのは}を、そのドラッカーが、語録に残している。

 「最底辺から一段上がったら、しゃべったり書いたりした言葉でどれほど他人に影響を与えられるのか、それが実態としての自分の能力を想定する」

 経営哲学と、それを実際に{人前で言葉で提案|プレゼンテーション}することの両者の本質は、無二にして一つでなければならない。それを、この世界的な二人の偉人が、実践によって、証明して見せたのだ。
 であれば、オオカミ先輩が、島の子どもたちに心を奪われた発明発想法と、ここにあるプレゼンも、その{神髄|しんずい}であるところの本質は、まったく同じでなければならない……と、いうことにならないだろうか。

 ここで、苦言を一つ。
 我らヒト種は、経営哲学などといった座学のイメージが強い学問には喜んで興味を示すが、プレゼンといった技能的な行為については、まったく無関心……というよりは{寧|むし}ろ、避けて通っているようにも感じられる。
 「{愚|おろ}かだッ!」と、言いたい。
 でも……。
 プレゼンの技術的な行為とは、どのようなものなのか。
 言わずもがな、それは、発言のことだろう。
 日本人は、{古|いにしえ}より今現在に到るまで、驚くほどその発言というものに無関心で、{故|ゆえ}に、未だに、めっちゃ!ヘタクソだ。
 これは、有り{得|え}ん失態……元い。醜態だ!

 その我らが祖先……ニッポン人は、古より、{美徳|バーチュー}を第一とし、それを{理念模範|パラダイム}とし、{論的証拠|エビデンス}を求めながら、公平に国家を{営|いとな}んできた。それが、この国を、「神の国」とか、「霊薬ある国」とか言わしめてきた{所以|ゆえん}だろうと思う。
 そんな海洋の中の一国一文明一民族のが、奇跡的に、現代に現存する。そんな古代国家の民たちが、{何故|なにゆえ}に自虐史観を植え付けられてしまい、祖先を{蔑|さげす}み、自国の歴史を恥じるところまで、心を腐らせてしまったのか。
 その{訳|わけ}が、我らが祖先、至誠を重んじてきた民のどこかに、{潜|ひそ}み隠れていた{筈|はず}だ。

 それは、〈思い考え行動する〉という一連の生の営みの中に、潜んでいた。
 {人前で言葉で提案|プレゼンテーション}する能力が、欠けていたのだ。
 〈思い考え**行動**する〉では、ダメなのだ。
 これを、〈思い考え**言動**する〉に改めなければ、我ら古代人に、未来は無い。
 その言動とは……{言乃葉|ことのは}と、{振|ふ}る{舞|ま}いのこと。
 奥ゆかしく情のこもった立ち居振る舞いも、言葉で説明しなければ、異文化・異文明の異国の人びとには、伝わらない。
 {況|いわん}や! 今や、我が国の文明人たちも、この異国の人びとに、含まれる。言葉で事細かく説明しなければ、{解|わか}り合えないのだ。
 余談が過ぎたけど、おれが言いたいのは、{兎|と}にも{角|かく}にも、「この発言力の欠如が、問題なのだッ!」ってことだ。

 儒学はもとより、原始仏教の唯識や発明発想法なんかに興味の大半を向けている寺学舎の先輩たちには、この、おれが言う〈プレゼン〉っていうやつに、学問としての価値を感じることは難しいことかもしれない……というか、感じられる道理がないとさえ思う。
 でも、ここで一つ、伝えたいことがある。
 冒頭で紹介したプレゼンの驚異・巨匠・教祖と目されるスティーブン・ポール・ジョブスは、どうやってその神がかりな発想と発言を、次々と湯水のように生み出してこれたのか。
 その答えが、「禅」なのだ。
 禅によって発想し、そこに発明発想法をも取り入れ、しかも、そこからが大変な大がかりな編集を、極めて効率的に進めることが可能な〈型〉を独自で構築したことによって、目まぐるしく変容する世間に{悉|ことごと}く呼応……正に驚異の発言を、演じ続けることができたのだ。
 ここでまた、{繋|つな}がった。 禅!
 その禅とは、ヨガと唯識と原始仏教の中にあり、瞑想と発明発想法の中にもある。なかでも〈ヨガ〉……なるほど、この〈ヨガ〉という言葉が生まれたインドでは、元々「つながり」という意味の言葉だったそうだ。
 寺学舎の諸先輩、{美童|ミワラ}の皆みなさま……これでもまだ、〈プレゼン〉に、興味が湧きませんかァ?
 それでもおれは、このプレゼンテーションを、学問と{捉|とら}えたい。
 その学問とは、{如何|いか}なるものかッ!

   《 言動の学とは 》

 文字どおり、〈言葉と振る舞い〉を学ぶこと。
 その〈言葉と振る舞い〉を修得する目的は、何か。
 修得すると、何が出来るようになるというのか。
 先ず、簡単に答えよう。
 聞く人……その聞き手に、身を乗り出させることができる。
 {即|すなわ}ち、おれの一言、一挙動で、君は、あなたは、興味が湧きあがってきてしまうってことだ。
 「プレゼンテーションは、学問だ」と言われても、「はーァ?!」という言葉しかでてこないのは、その〈プレゼン〉を、単なる発言、単なる情報の伝達など、それらを、ただ単に提供するためだけの手段……くらいにしか思っていない、{捉|とら}えていないからだ。

 では、学問としてのプレゼンの目的とは、何か。
 それは、体験を生み出すこと……体験の学。
 何を、体験しようというのか。
 それは……。
 聞き手が、心を動かす。
 聞き手の興味が、沸き立つ。
 聞き手が、やる気を起こす。
 それらを、自らの言動で、{目|ま}の当たりに体験する。

 ここで一つ、注意して欲しいことがある。
 この体験は、その相手が〈事実、現実、真実を知る〉ことに限定されないということだ。これを、専門用語を使って説明すると……。
 〈現実{歪曲|わいきょく}フィールド〉を構築することにもなるので、その自らの言動には充分な至誠を{以|もっ}てして、{余程|よほど}の注意を払うことが必要とされる……と、相成ろうか。
 〈現実歪曲フィールド〉というのは、耳慣れない専門用語だ。おれも、知らなかった。辞書で、その意味を調べてみた。
 誰もが不可能だと思っていることでも、巧みな話術によって、実現できると納得……信じさせること。
 卓越したプレゼンテーション能力のこと。
 聴衆の想像力を、かき立てること。
 {想像|イマジネーション}の世界に、引き込むこと。
 感動させること。
 そうした場面や雰囲気のこと。
 そして、もう一つ。
 スティーブン・ポール・ジョブスのプレゼンの脅威のほどを、表す言葉……それが、現実歪曲フィールドだ。
 簡単な言葉で言い換えると、魅力的とか、引力があるとか、心を捉えるとか、カリスマ性があるとか、そんなところかな。

 で、それを、どのように学問すればいいのか。
 その脅威の発信を、どのようにすれば構築できるのか。
 その方法を細かく分析……{或|ある}いは、そうした{類|たぐい}の書に触れ、それを自分の頭の中で分解して、考えて、整理整頓して、自分なりの新たなる〈型〉を構築する。
 例えば、そんな類の書に触れただけでも、次のような整理整頓に値する提言を、見つけることができる。

 一、メッセージの構築。
 二、アイデアの提示。
 三、相手の期待を高める。
 四、自分の記憶に刻まれた体験の提供。
 五、発信した相手を、伝道者に変え、育てる。

 {正|まさ}に、言うは{易|やす}しの何とやらだ。
 でも、これが本当にできたら、それこそ本当に、{凄|すご}い!
 {況|いわん}や! 学問の価値、ここにありだ。
 でも、相当な大努力が、{要|い}りそーォ!!
 嗚呼……(アセアセ)。

 後記として、一つ。
 肌には、色の違いがある。
 足には、大きさの違いがある。
 {身体|からだ}には、{丈|たけ}……高さの違いがある。
 でも心には、色の違いも、大きさの違いも、高さの違いも、{違|たが}えるものなど一切、何もない。
 これは、素晴らしいことだろう……と、思うおれ♪

 {因|ちな}みに、{武童|タケラ}の由来は、その昔、{丈等|たけら}と呼ばれていた狩猟民族の家父長たちだという説を聞かされたことがある。
 丈だけでは、現代までは生き延びることができなかったということか、{云々|うんぬん}……{不一|ふいつ}。 

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「教学編」朝7時配信……次回へとつづく。
「自伝編」は、教学編の前夜7時に配信です。

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その編纂 東亜学纂
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一息74 ミワラ〈美童〉の後裔記 R3.4.1(木) 夜7時

#### 後裔記「鳥たちの遺伝子の中で、あたいら祖先は生きている」 学徒マザメ 齢12 ####

 あたいらの祖先と、この島の鳥たちとの意外な関係……。*あたいらさえ知らなかった、自然人の歴史の真実*。それが{何故|なぜ}、*この島の鳥たちの遺伝子に*残されていたのかッ!

 一つ、息をつく。

 「珍しいねぇ。白いヤツが森に{来|く}んのって……」と、あたい。
 「{循観院|じゅんかんいん}に、ヒトが戻って来たって聞いたから……」と、白いヤツ。
 「てか、おまえ。まだ子どもなんかい! その{図体|ずうたい}にして……」と、あたい。
 「大きな肉体。大きなお世話。渡り歩くのが、ぼくの自然」と、白いヤツ。
 「そこは*歩く*じゃなくって、*飛ぶ*やろッ! おまえらのバヤイ……」と、あたい。
 「歩くのが、楽。飛ぶのは、しんどい」と、白いヤツ。
 「それは、見れば{判|わか}る。でも、歩いて海は、渡れんやろッ!」と、あたい。
 「泳ぐ」と、白いメタボ。
 「泳ぐ? 沈むやろッ!」と、あたい。
 「失礼なッ! 泳ぐのは、そんなに{嫌|いや}いじゃない。そりゃ、{脚|あし}は疲れるけんど。でも、歩くのと、大差ない。泳ぐときは、水の抵抗があるけど、歩くときだって、重力の抵抗がある」と、白メタ。
 「納得。でも、その重力じゃ……さァ。歩いてたら……さァ。すぐに{掴|つか}まって、食われるやろーォ♪」と、あたい。
 「白熊とかにーぃ?! カモね」と、シロメタ。
 「あんたも、タワシだねッ♪」と、あたい。
 「タワシ?」と、シロメタ。
 「ワシワシ言うハヤブサ……だったけぇ? 忘れた。あんたは、カモカモ言うウミネコさ。でも、白いメタボだから、シロメタにしといてやるよッ♪」と、あたい。
 「ミャーァ!!}と、シロメタ。
 「鳴くなッ! 重い。てか、濃ゆいぢょ、その鳴き声!」と、あたい。
 「{嫌|イヤ}そうだな物言いだなーァ」と、シロメタ。独り{言|ご}ちる。
 「当たりーぃ♪ 男ってもんはさ。愛情は濃い口で、言乃葉は薄口。それが、理想の男ってもんさ。てか、白熊じゃないってばァ。あたいらさ。人間に、掴まっちまうだろッ! あんた……おまえの、その重力じゃ!」と、あたい。
 「自然人は、ぼくらを{掴|つか}み上げたりなんかしないし、{況|ま}してや、ぼくらを{食|く}ったりなんか、しない。そんなこと、絶対に、しない!」と、シロメタ。
 「{何|なん}でそう、言い切れんのさァ!」と、あたい。
 「自然人とぼくらは、助け合いながら、生きてきたんだ」と、シロメタ。
 「どういう意味ぃ?」と、あたい。当然の、疑問。

 そのウミネコ、不器用に歩きながら、並んで歩くあたいのほうに、器用に首を{捻|ひね}って、濃い声で話す。
 これが、シロメタとの出逢い。
 てかこいつ、歩くの、意外と速い! どこまでも、ついてくる。あたいが、小走りで振り切ろうとすると、{何|なん}と!こやつも、走る。しかもそれ、意外と、速い!
 てな{訳|わけ}で、こいつが、循観院の最初で最後の来訪者……てか、お客さんとなった。循観院ってのは、あたいが住まう山小屋のこと。スピアみたく、{建屋|たてや}の名前をどうしようか{云々|うんぬん}で、悩む必要はなかった。
 こっちは、就寝許可証の木札じゃなくって、小屋の名前の木看板! 看板って言い方も、変ね。小屋のすぐ横に立ってる、木の幹を彫り込んだ、浮き上がり文字の表札……てか、まァ、やっぱ、看板だねッ!
 これなら、耐久性抜群! 何百年前からあるんだか……って感じだ。どうやら、あたいらの先祖は、この島に、かなり昔から、住みついていたみたいだ。
 あッ! また、余計なことが気になってしまった。〈浮き上がり文字〉のこと。誰か、カルプって、{振り仮名|ルビ}ってか、ご親切に、読み仮名を振ってくれてたやんかーァ?!
 でも、カルプってさァ。〈カルシウム・イン・プラスチック〉の略じゃなかったーァ?? 〈浮き上がり文字〉に〈カルプ〉っていう読み仮名を振るのって、{変|へん}くなーぃ?! まァ、余談中の余談、蛇足中の蛇足だけどさァ!
 で、{閑話休題|それはともかく}。
 循観院の{囲炉裏|いろり}に向かい合って、{座|すわ}って、お互いに腰を落ち着けて、シロメタの話を聴いたってわけさ。あいつも、器用に座って……って意味なんだけどさッ!
 ちょっと長い話だったから、あたい流に要約……っていうより、{随所|ずいしょ}{割愛|かつあい}すっからさ。
 そういう{訳|わけ}で、よろしくーぅ♪

 「おまえらほど、自分たちの先祖のことを知らない自然の生きものも、珍しいってもんだ。
 その昔、自然人だの自然{民族|エスノ}だのという言葉がまだ無かった頃のこと。ヒト種と言えば、当たり前のように、みんな、ほかの生きものたちと同様に、自然の一部だった。それが、源平の戦いの時期を境に、ヒト種の分化が、{始|はじ}まってしまった。
 廃残したおまえらの先祖は、谷間に隠れ住み、{対峙|たいじ}していた民族が、港や平地を支配した。
 その後、おまえらの祖先は、{人気|ひとけ}のない海岸に港を築き、無人の島に、集落を作った。だがそこにも、対峙していた民族が、やって来た。海岸は土砂で埋められ、森の木々は、{悉|ことごと}く切り倒されていった。
 おまえらの祖先も、ぼくらの祖先も、頼りの母なる大地や海から、締め出されてしまったのさ。おまえらの頼みの{砦|とりで}……長らく安泰であった谷間も、ある真の日、洪水で押し流されてしまった。
 それで、掘りはじめたのさ……おまえらの、祖先は。
 そして、地底に、集落を作った。もう、何百年もの間、掘り続けている。
 この島にある、おまえらの側溝乗り合いバス……だったけぇ? まァ、{溝|みぞ}を掘るのは、おまえらのお家芸って{訳|わけ}さ。まァ、余談は、{扠措|さてお}く。
 この島での、ぼくら鳥諸々と、おまら自然人との関わりの話だ。おまえらの祖先は、元々は、掘り屋じゃない。海賊だ。隣りの島に、船でやって来た。当時はまだ、無人島だったからな。
 で、おまえらの先祖は、この山に、登ってみようと思った。でも、歩けど歩けど、水道に{阻|はば}まれて、その{麓|ふもと}にすら{辿|たど}り着けない。瀬戸で隔てられた、別の島だったって{訳|わけ}さ。
 おまえの仲間の男も、同じようなことを体験したみたいだけどな。その仲間の男は、船で、この島にやって来た。でも、おまえらの先祖は、海底を掘って、やってきたのさ。
 ぼくらの遺伝子に書き込まれてるとおり、本当におまえらの祖先が、隣りの島に船でやってきたんだとすれば、ひょいっと、その隣りのこの島に渡って来りゃあいいものを……まァ、あんまりにも近いもんで、掘って{繋|つな}げてやれ!って、思ったのかねぇ。
 {土竜|モグラ}も{唖然|あぜん}! 立つ瀬がないってもんさ。
 で、その掘ったときの話さ。
 地上に出る寸前、遺跡の城壁の{石塁|せきるい}に、阻まれてしまったんた。で、そいつをかわして、地上に出るすがら、その石塁の周りも、掘ってみたって訳さ。すると、石門が出て、角楼も出てきた。だが、そいつがまずかった……」

 ここから先、その「まずかった」の説明を、大胆に割愛する。その話だけで、一冊の本が、優に書けそうだからさ。要は、{斯|こ}うだ。

 文明人は、観光資源になりそうな自然と、見世物にできそうな自然の生きものたちを、大捜索していた。
 そんな、ご時世……この島に、太古の遺跡が……しかもそれは、大和朝廷の時代に建立された、未知の{山城|やまじろ}。そしてオマケに、その遺跡を発掘したのは、自然人。島の動物や鳥たちと対話しながら、{頑|かたく}なに自然の一部として生き続けているヒト種の源流!
 こんな、金になる島を、文明人が、{放|ほ}っとくはずがない。だが、ここで、自然人たちと鳥たちの、自然の一部を{担|にな}っているという共同体感覚が、結束した。

 「{偵察|ていさつ}は、ぼくらに任せろよッ♪」と、鳥たち。
 文明人たちが、海から、この島を目指している。遺跡を見られたら、終わりだッ! この島が、観光名所となる。自然の一部のヒト種や動物たちは、見世物となるか、または追われるか、{何|いず}れにしても、{終|つい}には殺される。
 「{奴|やつ}らの{阻止|そし}は、ぼくらに任せろッ!」と、これも鳥たち。
 上陸できそうな海岸に、アプローチを試みる文明人たち。これに、悉く空爆! 食いまくって、文明人たちの頭上で、{糞|クソ}をひりまくる。
 その間、あたいらの先祖……自然人たちは、遺跡を埋め戻す。
 もし、ヒト種が再び一つになれたとしたら、自然{民族|エスノ}の人びとは、土木施工神様技師と呼ばれ、貧困や求職で{屈辱|くつじょく}を味わうことはないだろう。その可能性は、言わずもがな。絶対必定の、ゼロ・パーセントだッ!
 ここまでは、{上手|うま}くいった。でも、文明人たちは、いつまた、海からのみならず、空からもやって来るか知れたもんじゃない。でも、遺跡は{既|すで}に、盛り土の下だ。もう、心配はない。鳥たちは、飛んで逃げてもいいし、島でウロウロしてても、{何|なん}ら{虞|おそれ}を{為|な}すことはない。
 でも、問題が一つ、残されていた。自然人たちの、住まいだ。何百年も、地底で暮らしてきたのだ。この島での地上での営みは、まるで、正に、世界を統一した{覇者|はしゃ}が、{酒池肉林|しゅちにくりん}に浴して{豪華絢爛|ごうかけんらん}にして{煌|きら}びやかな生活をおくる大宮殿のようなものだった。
 そのお粗末で質素な大宮殿が、空から丸見えなのだ! 自然人たちは、鳥たちに、言った。
 「ぜんぶ、ぶっ{壊|こわ}す。ぼくたちは、地底に戻る」
 でも、いくら掘ってこの島に来たとはいえ、その地底の穴とは、ひと一人、やっと通れる程度の、ただ掘削して前に進むためだけにあるような、狭い狭い、真っ暗闇の{洞穴|どうけつ}に過ぎなかった。

 ここで、鳥たちが、話し合った。
 「なァ、おまえたち。ちょっと、聞いてくれないか。あいつらの{巣|す}、確かに粗末だ。あいつらの言うとおり、壊したって、{惜|お}しくもなんともない。でもそれは、おれたちの種の長い歴史かえら{捉|とら}えた、{飽|あ}くまで個人(鳥)的な感想に過ぎない。
 竹を割り、それを建て込み、組み上げ、その上に、ホウビシダを丹念に重ね、イグサを巧みに編んで雨仕舞いをしている{奴|ヤツ}らの大努力……みんな、空から、見てたよなッ?
 そのときの、ヤツらの嬉々とした顔、不可解、不可思議だとは、思わなかったかァ? やつらにとっては、数百年越しの、悲願の、地上での住居なのさ。
 なァ、おまえらッ! ここまで聞けば、オレっちが何を言いたいか、もう、{判|わか}ったことだろう。あいつらの悲願の地上の住居を壊さずに、文明の奴らに見つからない方法……それ、おれたちが考えてやるべき……てか、考えてやんなきゃなんない事なんじゃないのかねぇ。
 オレっちは、そう思う。{故|ゆえ}に、{皆|みな}の意見を{乞|こ}う」
 と、これは、ハヤブサの祖先。

 「柄じゃないが、承知した。おれらは、木に着いて待機する。指示を待つ」と、黒い{鴉|カラス}。
 「おれらの土着は、{伊達|ダテ}じゃない。地で待機する。指示に、従う」と、茶色いハヤブサとトンビ。
 「ぼくらは……」と、そいつらが口を開こうとしたとき、正に矢庭……ハヤブサが、吠えた!
 「お前らは、白い。目立つ! 海岸を{隈|くま}なく歩いて、{斥候|せっこう}となれ!」
 それで、シロメタの祖先ら白いものたち……{即|すなわ}ち、ウミネコ、カモメ、シロサギたちは、これに従った。「そりゃないっしょ!」と言って、落ち込む白の鳥たち……。
 {海鵜|うみう}が、それを見かねて、塞ぎこんで肩を落として立ち去ろうとする白の鳥たちに、声をかけた。
 「ぼくら、飛ぶのは不格好だけど、黒だから、役に立てる。不格好でも、誰かの役に立てるってことを、今ぼくが、正にこのぼくが行動、実践して、ぼくらの子々孫々に伝えてやりたいんだ。繋ぎたいんだ、海鵜の誇りを!
 だからさ。白だからって、落ち込むなよッ!
 だって、飛ぶのも、泳ぐのも、歩くのも、ぼいらより{遥|はる}かに、カッコいいじゃん♪ おまえらってさァ……」

 結果、茶と黒の鳥たちは、周辺の島の仲間たちをも召集して、翼を、{千切|ちぎ}れるくらいに大きく広げて、自然人たちの長屋式点在大宮殿を{悉|ことごと}く{覆|おお}い、文明人たちの照射から護り抜いた。

 ここまでの話、一昼夜×七日間!

 {因|ちな}みに、ここで割愛した膨大な蛇足の中に、今回の主題がある。
 その主題と結論が、これ。

   一、昔むかし……。
     寺学舎の起こり。

 武将も、家臣も、家来たちも、水軍から{雇|やと}われ駆り出された海賊たちも、鍛冶屋や長屋で働く大人の男や女たちも、無論、子どもたちも、{皆|みんな}がみんな、分け隔てなく、この寺学舎で学んでいた。

   二、その昔に起こった{戦|いくさ}から……今。
     循観院とは。

 戦乱。
 激しさを増しながら、すべてを{奪|うば}っていった。
 寺学舎に{集|つど}うことは{疎|おろ}か、この世で再会することさえ既に{叶|かな}わなくなってしまった者たちの顔が、夜ごと夜ごと脳裏に浮かび、そのうちの幾人かは、枕元に立って{怨念|おんねん}を語り、別れを告げて、消えてしまうのだった。
 そして彼ら、彼女たちは、この世あの世の分け隔てなく、互いに誓い合った。
 「みんな、循観院に集おう。昔そうだったみたいに、分け隔てなく、みんなが対話しながら、一人ひとりが学んだことを、みんなで、共有し合おう。
 そうだ。おれたちはみんな、自然に戻ったんだ。{還|かえ}って来たんだ。だから、自然の生きものたちみんな、循観院に、集おう♪ そして、取り戻そうじゃないか。おれたちの自慢だった、共同体感覚を!
 助け、助けられ、助け合い、みんな同じ顔をして、みんな、同じ方向を見つめている……。
 THE統合種、金太郎飴{民族|エスノ}さッ♪
 それが、これからのおれたちだ。
 統合……。
 みんなは、おれたち。おれたちは、みんなだ」……と。

 蛇足。
 ハヤブサが、本当に懸念したのは、色じゃないと思う。{即|すなわ}ち、白じゃない! じゃあ、何か。それは、カモメたちの、整列{癖|ぐせ}だ。
 黒や茶の鳥たちが広げ{繋|つな}げ敷いた翼の{絨毯|じゅうたん}……その下に、自然人たちの悲願、地上のマイホームが……竹やシダやイグサで囲まれただけの、まるで竪穴式住居のような粗末な家が、大事に大事に、鳥たちの絨毯に{護|まも}られ、隠されている。
 その茶や黒の翼の絨毯に、まるで伝統芸能の{刺繍|ししゅう}のように描かれる、これ{正|まさ}に、これ極めて文明人好みの、真っ白い線で描かれた{幾何学|きかがく}模様……それが、白いあの子たち、カモメの兵隊たちなのだ。
 自らそのことに気づかされた瞬間、白いその子たちは、以心伝心! 真っ白い幾何学模様の刺繍が、そいのままの形で、まるでカルプで作った文字のように、ふわっと浮かび上がった。
 そして、その刺繍は、その上空で徐々に広がりを見せながら、青空へと上昇してゆく。そして、海へ……。そして、消えてしまった。
 以来、白いその子たちが、森に姿を現すことは、二度となかった。

 その当時、カモメもウミネコも、一つのカモメだった。でも、本当は、今もそうなのだ。何も、変わってはいない。変わったように思わされているだけ。分類好きの文明人たちが、勝手に分類して、そのそれぞれに、名前を付けただけの話なのだ。
 その白い彼ら彼女たちの一つの種の後裔の一羽が……今、あたいの目の前に座し……その短い{脚|あし}を、あたいの前に放り出し、一昼夜……それを、三日三晩! さらにまた、三日三晩!
 ただ囲炉裏の炎のみで隔たれ、ただその小さな炎だけで暖を取りながら、あたいに向かって、ひたすら、喋り続けたのだった。 

 そして最後の夜、依然、年齢不詳のまま喋りつづけていたシロメタが、遂に観念して、囲炉裏の前に、横たわった。そして、{斯|こ}う言った。

 「助けたり、助けられたり……。それがぼくら、自然の一部の生き方だった……かァ。
 今は……。今はもう、その過去じゃない。
 そりゃ、今だって、ぼくらも、あんたらも、自然の一部さ。
 でも、一部は一部でも、それは、昔と同じ一部じゃない。
 孤立した一部、引き裂かれた一部さ。
 てか、寝ちゃうカモーォ♪」

 (おやすみなさい……)と、あたい。
 誰にともなく、そう、心の中で、{呟|つぶや}いていた。

####
「自伝編」夜7時配信……次回へとつづく。
「教学編」は、自伝編の翌朝7時に配信です。

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その編纂 東亜学纂
その蔵書 東亜学纂学級文庫
その自修 循観院

「教学編」日曜朝7時配信 R3.3.28 一学70

#### 然修録「目的心理学の生い立ちを追う……も、モヤモヤは続く」 少年スピア 少循令{猫刄|みょうじん} ####

 哲学者たちは、人間の条件反射に、いくつかの{類型|パターン}があると信じた。その流れから、*心理学は生まれた*。そこまで{判|わか}ったところで、*力尽きたぼく*。目的心理学とは何ぞやの*モヤモヤは*、まだまだ*続く*……。

 一つ、学ぶ。

 高学年が哲学・儒学で、低学年が心理学の流れ……。
 サギッチが、この流れを止める。これは、間違いない。
 ぼくも、心理学よりは、まだ儒学のほうが興味深いし、特に江戸期・維新期・明治期の偉人伝は、面白い。
 でも一つ、不思議に思っていることがある。
 同じ心理学でも、目的心理学は、なんとなく、馴染み{易|やす}いような気がする。
 疑問に思ったら、やれ!調査、それ!調査……と、その前に、その行為行動の目的を、明確にしておく……だったよねぇ?
 その目的とは、目的心理学の性質を知り、己の道に活かす。それがために、心理学の誕生から、目的心理学の生い立ちまでを調べる……だ。

   《 心理学の誕生 》

 人間に関すること……頭脳、思い、考え方に関するあれこれの知識……その記録は、古来、数知れない。
 その古代に生きた民族が、歴史の当代やその時代の人物を描写することから始まり、古代ギリシア・ホメーロスの叙事詩、諸書を{編纂|へんさん}した聖書、帝政ローマ・プルタルコスの伝記等など……。
 数知れぬ伝説や童話、{寓話|ぐうわ}や神話が、その時代時代の人間という存在を、素晴らしい形で、今に伝えてくれている。

 なかでも詩人たちは、人間の〈生〉を{捉|とら}えた。
 それは、どれを取って見ても、{既|すで}に完成された、切り離すことのできない、最小単位としての一つの総体、一個の全体……{即|すなわ}ち、独立した一人という人間の基本形を、様々な次元から描いている。
 詩人たちは、その次元に生きる人間を、ある時は死なせ、またある時は生かし、生かしては行動させ、その人間たちが、{如何|いか}に生きるという事と真剣に向き合い、苦悩していたかを、描いた。これだけでも、{至極|しごく}{卓越|たくえつ}した能力と、呼べる。
 {然|しか}し、詩人たちにだけ与えられた本当に卓越した能力は、そこではなかった。詩人たちは、複雑な人間の〈思い〉と〈考え〉と〈行動〉を、難しい解説を読んだり聞かされたりしなくても理解できるように、その{悉|ことご}くを、簡単な短い文章で、書き表すことができたのだ。

 {何故|なぜ}、詩人たちは、そんな才能を持つことができたのだろう。
 それは、物事を推察して読み取るという能力に、他ならない。それがなければ、人の行動の陰に隠されたものや、人間の{間|あいだ}に保たれているものなど、見える{筈|はず}もないからだ。
 この才能を、人びとは、〈直観〉と呼んだ。

 古来、人間たちが直面してきた様々な課題は、大なり小なり、どれを取って見ても、常に変化と刷新を繰り返してきた。
 もし人間が、一つの{類型|パターン}しか持たない条件反射の脳力のみで、これらの課題を解決しようとしていたならば、{唯々|ただただ}失敗を繰り返すだけで、我ら人間は、{悉|ことごと}くこの世から{葬|ほうむ}り去られ、とうの昔に、{亡|ほろ}んでいたことだろう。

 異なった性質課題が、次から次へと{襲|おそ}い掛かってくるのであれば、過去の条件反射……即ち、行動のあれこれを、その都度、一つひとつ、{吟味|ぎんみ}しなければならない。
 オオカミ先輩が直面した隣りの島の子どもたちの手作りゲームにしても、同じことが言える。
 その場限りの条件反射だけでは、いつまで経っても、ゲームの上達は望めない。コマ一つひとつの性質を、正しく**読み取る**。これが、オッサンを最小限の行動(コマを動かすこと)で追ん出すという課題に対する、最も効果の上がる**分析**反射なのだ。
 そこに気づいた島の子どもたちは、ゲームという課題に対する条件反射を吟味することによって、周囲と協力して生きることを知り、人間が直面するあらゆる課題に対して、常に幸せな答えを導き出すという才能……美質を、{見出|みいだ}そうとしているのだと思う。

 このように、様々な現象は、すべて一人の人間、個人に対して、起きている。{古|いにしえ}の人びとは、「そこに、ある一定の条件反射を{一纏|ひとまと}めにできるような、何か法則のようなものが存在するに違いない」と考え、そう信じた。
 すると、以後、そんな人間のよく{解|わか}らない脳力の法則について、数々の哲学者たちが、様々な法則を見出し、その一つひとつに名称を付けていった。

 カント、シェリング、ヘーゲル、ショーペンハウアー、ハルトマン、ニーチェ……。
 無意識の原動力、道徳律、意志、無意識……。

 これらのすべての法則を、己の心の中を観察することのみで、答えを引き出そうという、{所謂|いわゆる}〈内観〉を試みる人たちも、多く現れた。でも、この方法は、潮が引くように、消えていった。
 自分の心を読み取って、それを客観的に吟味し、その法則について正しく語ることが出来るのであれば、哲学も心理学も、人間の世に生まれてくることは、なかっただろう。

 {斯|かく}くして、まだ名も無い心理学は、哲学の手を借りながら、のちに〈人間学〉の両輪……哲学と心理学へと、成長発展してゆくのであった。

   《 心理学の目覚め 》 ……とか、
   《 進化を{捉|とら}えた目的心理学 》 ……とか、

 {纏|まと}めてみたい主題は、いくつか頭には浮かんでくる訳なんだけれども、{兎|と}にも{角|かく}にも、頭が、疲れた!
 ……なので、以上。

 これ、べつに、マザメ先輩の真似をした訳じゃ、ないからねーぇ!!
 ぼくだって……心理学、得意じゃないんだから(アセアセ)。

####

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第4集「自伝編」土曜夜7時配信 R3.3.27 一息73

#### 後裔記「岸辺に干された敷布団とぼく。{煌|きら}めく太陽神」 少年スピア 齢10 ####

 岩場に敷布団を敷いて、*この世を見渡す*。世間は、*戦の準備*。{俄|にわ}かに{瞑想|めいそう}。矢庭に{焦|あせ}り。「この島を、出よう!」 ここに{居|い}る限り、ぼくらの運命は、*始まらない*。

 一つ、息をつく。

 オオカミ先輩の然修録……その自反。
 「先輩健在、ここにあり!」って感じ。
 いいね♪
 でもさ。気づいてたァ?
 もう、{師走|しわす}だよッ!
 この島に{居|い}る限り、対人関係で{凹|へこ}んだり悩んだりすることって、無いような気がする。
 {武童|タケラ}たちは、着々と戦争の準備をしてるっていうのに、{美童|ミワラ}……特にぼくら、浦街寺学舎のムロー学級8名は、離島で{安穏|あんのん}と、何も変化の無い毎日を送っている。
 悩まなきゃなんないのは、そこじゃないのかなァ。
 でも、ここは島。
 {慌|あわ}てて旅に出たら、真冬の寒空の{下|もと}、刺すような空気を割りながら、{荒|すさ}んだ三角波に揺られ揺られ、日々日々、{唯々|ただただ}{遥|はる}か遠く先の水平線を目指して、ひたすら航海を続けなきゃなんない。 しかも、まさか、オンボロ漁船でぇ? それさえも、慌ててからじゃ、調達は困難だと思う。
 この島に来て、3か月を過ぎて……もう、4か月になる? {兎|と}にも{角|かく}にも、この星の一年が、終わろうとしている。

 ところでもう一つ、然修録の話。
 マザメ先輩の自反。
 自分の人生に、不安を感じている。
 それを主題に{掲|かか}げたのに、その内容は、省略ーぅ?! でも、{解|わか}る。本当に不安で、本当にどうしたらいいか{判|わか}らないときって、悔しいくらい、何一つ、言葉にならない。

 それにしても、驚いた。
 話、飛びまくってるね……(アセアセ)。
 短期荷重で争うときは、敵としては物足りないヤツだった。でもそれが、長期荷重での争いに転じた途端、今までの人生で経験したこともない強敵になった。
 短期荷重……持ち上げる、ベランダに運ぶ、手摺りに被せる。
 長期荷重……担う。廃墟の階段を下りる。岸辺まで運ぶ。
 真冬の湿った敷布団、恐るべし!
 峠お越えて廃墟の階段を上るという長期荷重を闘ってくれたオオカミ先輩……マジ、有難う♪

 で、今日は、五省舎{事|こと}秘密基地に、一人でやって来た。
 言わずもがな、公団型集合住宅の廃墟。その二階の部屋。今日はまだ、〈就寝許可証〉の木札が、生きているぼくの目に映らない。
 まだ、寝てるのかなァ? 寒いしな。おにいさんの思い出ばなしは、夏ばっかだったからな。冬は、苦手なんだろうな、きっと……たぶん。
 ぼくが頭に載せて運んできた〈夏掛け〉と言われても反論出来ないくらい薄手の毛布を、おにいさんの{煎餅|せんべい}布団の上にして、四隅を重ね合わせるように、{被|かぶ}せてあげた。
 「焼け石に水だろッ!」って、思うよね?
 でもぼくは、重ね着の達人なんだァ♪
 冬物の繊維製品なんて、一つも持っていない。だから冬になると、ぼくは、8枚とか9枚とかの夏用の服を、重ね着してる。無論、純正はぜんぶ、半袖だ。それを、長袖にする方法を、母さんがーァ♪ 夜なべーぇをしてーぇ♪ ……教えてくれた。
 重ね着式冬用二層毛布が、ゆっくりと、盛り上がった。
 「ありがとう」
 それは、気のせいかと思って忘れ去られても不思議のないくらい、か細く小さな声だった。依然として居並ぶ、{空|から}になって久しい2段式寝台の数々……。
 すると{俄|にわ}かに、〈就寝許可証〉の木札が、薄っすらと*おにいさん*の枕元に、浮かび上がってくる。
 このまま、この世の中が終わってしまうのではないかと思わせるような物静かな時の流れのなかで、ぼくいが被せた薄っぺらい毛布が、{膨|ふく}らみを帯びる。徐々に、徐々に……。
 すると直ぐに、{何故|なぜ}かまた、沈みはじめた。徐々に、徐々に……。そして、〈就寝許可証〉の木札も消えて、見えなくなってしまった。ただ、「ありがとう」が、言いたかっただけみたいだ。
 (美しい人……)と、なんか、そんな言葉が、ふと頭の中に浮かんだ。(この世にも、居るんだな。心の美しい人……)と、{何気|なにげ}に、そんなことを思った。
 ここ数日の晴天続き。(湿った敷布団でも、干すかーァ♪)と、思い立つ。敷布団を抱えて、廃墟の共用部の階段を、下りる。抜き足差し足、忍び足……いつもの、習慣。外に出る。岸辺を、見渡す。
 「{平|たいら}っぽい岩場が、いいかな。んっとーォ……あァ! ……んっとーォ……まァ、あそこで、いっかーァ♪ 一応」と、最近のぼくは、何をするにしても、こんなふうに、{独|ひと}り{言|ご}ちる。なんか……暗いよね(アセアセ)。

 敷布団を、広げる。
 干すという目的を変える気はなかったけど、その上に、寝転んでみた。意外と、心地がよかった。こんなとき……心地がよくて、特に他に、急いでやらなきゃならないようなことも、思い当たらない……みたいな。
 そんなとき、最近のぼくは、{唯々|ただただ}何気に、いろんな{想|おも}いを巡らす。
 (独り{言|ごと}っていうか、誰かに聞いて欲しいんだか、なんか、どうしてあげたらいいんだか判らないような、なんかそんな、一人でぼそぼそ{喋|しゃべ}ってる大人って、多いよなッ!)と、これは、声を出さずに、ただ思っただけ。
 風もなく、今朝は早起きだった太陽神が、{赤裸々|せきらら}に{煌|きら}めいている。なんか、笑ってるみたいだ。{兎|と}にも{角|かく}にもこの時節、これほど有難いことはない。
 起き上って、{胡坐|あぐら}をかく。想いに{耽|ふけ}る。また、寝そべる。何気に考える。起き上って、胡坐をかく。また、想いに耽る。寝そべる。また、何気に、何かを考える。
 そうこうしながら、(どれほどの時間が、流れ去ったことだろう……)と、時折そんなことを思いながらも、それでもまだぼくは、何気に、どうでもいいようなことばかりを選んでいるかのように、そんな、どうでもいいようなことを、また、考えはじめた。

 (**今日**という{戦|いくさ}も、半分、終わったなッ! 午後の戦は、時間任せ。そして、今日もまた、一日が、終わる。
 **一週間**という戦も、水曜日が終わったころには、同じような気分になる。また、もうすぐ、一週間が終わる……。
 そして、〈ものまね大賞〉でも競うかのように、まったく{同|おんな}じ感じで、一か月の戦が過ぎ、一年の戦も、過ぎてゆく。
 そしてまた、どれほどの時間が、流れ去ったことだろう……と、思ったとき、矢庭に、ハッとする。
 ぼくの一生という戦が、終わったのだ。
 その**とき**は、何の{前触|まえぶ}れもなく、突然、やってくる。そして、{呆気|あっけ}なく、ぼくの人生は、終わる。
 {疲弊|ひへい}したぼくの肉体が、横たわっている。
 「{死骸|しがい}は、食わない」って言ったのは、誰だったかな。{鷲|わし}じゃない「ワシワシ」言う……トンビじゃない、{鷹|タカ}でもない……そう、ハヤブサだったけぇ?
 ぼくの運命は、廃残兵の{流転|るてん}の旅。
 ぼくは、その{殿|しんがり}。
 ぼくの人生は、{先達|せんだつ}や先輩、同輩や後輩たちへの、社交辞令。
 春を待っていたら、そんなふうに、ぼくの人生は、終わってしまう。
 春を待たずに、この島を出なきゃ!)

 そう思った途端、ぼくは、(みんなに、お別れの挨拶をしなきゃ!)と、思い立ち、急に、忙しくなった。
 (でも、最初の挨拶が、あいつじゃなァ……。パス。後回しだな。でもなんか、お風呂の湯舟に浮かんでる、プラスチックのアヒルのオモチャみたいだな。軽いんだろうな、本当は。歩いてるときは、メタボのボテボテのペタペタ歩きなのに……)
 と、そこで、思うのを{止|や}めた。
 思ってることを気づかれると、面倒だからだ。
 カモメなら歓迎するけど、あの一匹狼……元い。一匹ウミネコの可愛くない歩学の講釈は、正直、どっちゃーでもいい!

 昼どきを過ぎた途端、何やら少し、肌寒くなってきた。太陽神は、同じ色で煌めいているっていうのに、{何|なん}で午前中より昼過ぎのほうが、寒く感じるんだろう。
 だからと言って、コンクリート打ち{放|っぱな}しの廃墟の中に、入る気にはならない。そっちのほうが、もっと寒いだろうから。太陽神がやる気満々のうちは、このまま外に居るほうが、無難だと思った。

 (子どもって普通、こんなんじゃないよな……きっと、間違いなく。たぶんだけど。
 然修録?
 後裔記?
 書かないよな、普通……そんなもん!
 社史? 読まないよッ! 普通……そんなもん)

 ……と、そんなことを思いながら、何か他の事を考えようとしたけれど、どうも、{塩梅|あんばい}が悪い。どうにも、気になって仕方がない。
 何がって、あいつ!
 プカプカというより、潜航していた{涙滴|るいてき}型のでっぷりした潜水艦が、浮上してきたみたいだ。
 岸辺に上陸!
 まん丸い腹を左右に振りながら、狭い砂浜から岩場を伝って、ぼくを無視して、直ぐそばを歩き去ろうとしている。
 せめて、ぼくに近いところだけでも飛び上がって、警戒という社交辞令を見せてくれても良さそうな{場面|シーン}だ。
 どうしても、飛ぶのが{嫌|イヤ}だと言うなら、せめて、走って過ぎ去るとか……。
 でも、実際は……。
 ペッタンペッタン、立ち止まり、横目でぼくを、チラッ!
 ペッタンペッタン、立ち止まり、横目でぼくを、チラッ♪

 目の前を、今日の対戦相手が、通り過ぎてゆく……。
 無心、{唯識|ゆいしき}、{瞑想|めいそう}……。
 {嗚呼|あァ}今こそ、心の修行の成果が、試されるとき……。
 
####

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「教学編」土曜朝7時配信 R3.3.27 一学69

#### 然修録「{何故|なぜ}人は救われないのか。怒鳴りの心理を自反」 学徒オオカミ 少循令{石将|せきしょう} ####

 男どもが弱くなった理由? そんなもん、*単純明快*! 自称、可哀想な人たちが救われないのも、これ*当然*。で、本題。*目的心理学的に*、素直に*自反*♪

 一つ、学ぶ。

 親愛なる学友、マザメ女子に一言。
 「振るなッ!」
 しかも、心理学?
 {況|いわん}や、苦手に決まっとるやないけーぇ!!
 せめて、儒学にしてくれ。
 ……で、何を書けってぇ?
 「弱くなった。特に、男ども。そのへんのところを、調べる。目的心理学的に、その原因を、説明してよねぇ♪」……ってかい!
 次に、それを、おれに振った理由は、{斯|こ}うだ。
 「外との関係は、オスのほうが、実践豊富。狩りをするから」
 ってことはだ。{即|すなわ}ち……。、
 「男どもが、対人関係で弱くなった理由を、目的心理学的に、説明する」
 と、相成ろう……が、その前に、おれ的な見解が、二つある。それを、正直に書く。

 【い】 神様も仏様も、どんなにいっぱい{賽銭|さいせん}を投げたところで、どれだけ毎日毎日{拝|おが}んだところで、誰一人、救ってなんかくれやしない。
 これ、当然。
 救われた自分が見たければ、自らそんな自分自身に成って、それをこの世に映し出すしか方法はない。
 そんなこと、わざわざ目的心理学がどうのこうのって、回りくどい説明をしなくっても当然……と言うか、必然。しかも、必定だ。

 【ろ】 対人関係……その相手が、{喰|く}えない野郎でも、食える{猪|イノシシ}でも、{何|なん}だっていいけどさ。
 「オドリャー! スドリャー!」で{襲|おそ}い掛かってきたら、こっちも「オンドリャー! スンドリャー!」で、真っ正面からぶつかっていくしかないだろッ! 相手がデカけりゃ、ボウズリか単管パイプ、用意しときゃいいだけの話さ。
 「わりゃナメとんかァ! ゴラゴラゴラーァ!」とまで言われて、「いや、す、すみませーん♪(ペコリペコリ)」なんて言って、ヘラヘラ笑ってるような性別不明変種の軟体動物は、大魔神の{踵|かかと}にでも押し{潰|つぶ}されて、ペッタンコになって、死んじまえばいいんだ。
 そんな軟体変態動物を、そのまま、{他人事|ひとごと}みたく見て見ぬふりをして{放|ほ}ったくっとくから、そいつらが山ん中……じゃなくて、家ん中で心腐らせて、陰でコソコソ、陰湿な心の犯罪を繰り返すのさ。
 ぶん{殴|なぐ}りもしない。ぶん殴ってももらえない。それは、あの世での生き方さ。この世でそんなことをやってたら、立ち{所|どころ}にヒト種は絶滅さ。

 正直な見解、おわり。
 次、本題。 

      **オオカミの自反**

   《 直ぐに{怒鳴|どな}るのは幼稚の{証|あか}し 》

 わざわざ大勢が集まっている場所で、わざわざ{絞|しぼ}り出すように何かを思い出して、みんなの前で相手を怒鳴って、{扱|こ}き下ろすヤツが{居|い}る。
 その相手とは、絶対に反論もしてこなければ、{況|ま}してや、逆切れして殴り掛かってくる恐れなどまったくない、いつも大人しい、内気で色白で、{痩|や}せていて無筋の、弱々しい男の子ーォ!!
 さて。ここで、問題です。
 {理不尽|りふじん}に怒鳴る{阿呆|あほう}と、黙ってただ怒鳴られる阿呆。そのどっちの男の〈{呆|ほう}〉が、心が弱いでしょうか。
 「そりゃ、黙って下向いて、ヘラヘラ笑いながら頭{掻|か}いて、ペコペコ謝ってる{華奢|きゃしゃ}でひ弱な男のほうに、決まってんじゃん!」
 ……ですかァ? やっぱ、当然、そう思うよね?
 でも、不正解! 残念でした。
 普通、弱いほうが先に、{虚勢|きょせい}を張るんだよッ!
 剣道の試合だって、そうじゃん。弱いほうが、強いやつの周りを、グルグル廻りながら、「キャー! スギャー! アジャーァ!」って、{煩|うる}せーのなのって……じゃねぇかい?
 ここの{場合|ケース}で言えば、理不尽にわざわざ、みんなが見てる前で怒鳴り散らしてる{卑怯|ひきょう}で{卑劣|ひれつ}な男の{魂胆|こんたん}、見え見えだろッ?
 「こいつ、気に入らねぇ。俺の言う事を、聞きやしねぇ。調子こきやがってぇ。マジ、腹が立つ。今日こそは、見てろよッ! みんなの前で、俺に怒鳴られて、俺に{何|なん}の抵抗もできないカッコ悪いところをみんなに見られれば、{観念|かんねん}して、俺に従うようになるだろうからなッ!」
 と、精々、こんなところさ。
 で、怒鳴り散らした{後|あと}、冷静な顔に戻って、自分の株を下げないために、斯う言うんだ。

 「いやァ、つい熱くなって、自分を見失っちゃったーァ!!
 ダメなんだ、俺。
 {他人事|ひとごと}みたいに知らん顔してる{奴|やつ}とか、知ってるくせに知らん顔して卑怯な奴とか見ると、ついカッカきちゃうんだよねぇ♪
 この性格、直さなきゃ、直さなきゃって、いつも思うんだけどさ。また、やっちゃったねぇ」……(ポリポリ、ペコリ、ニンマリ♪)。

 とまァ、こんなところだろうな。
 本来、男が他の男たちを従わせようと思えば、その従ってくれた男の言動のすべての責任を負って、しかも普段は、その男の模範となり、尊敬に値する言動に努めなければならない。
 {然|しか}し実際は、ここでの例のように、従う従わないに関わらず、自分にとって都合の悪い相手に対して、理不尽な理由で怒鳴り散らすといった場面は、特に珍しいことではない。
 それは、明らかに{虚勢|きょせい}を張っているだけなのであり、自分の強さを周りの人たちに{強烈に訴える|アピールする}ことで、その怒鳴り散らされている相手よりも優位な立場に君臨したいというのが、その男の本心……{魂胆|こんたん}なのだ。
 こういう{類|たぐい}の虚勢へと到らせる{所謂|いわゆる}一つの劣等感を、「優越コンプレックス」って言うそうだ。
 これ、おれが苦手な心理学でしたーァ♪ (アセアセ)。

 ここで一つ。
 落とし穴があるので、補足しておく。
 誰かに怒鳴り散らされた場合、その怒鳴っている目的に心を集中して、それを正当に{捉|とら}えなければならない。
 その目的とは、大きくは、次の二つに分かれる{筈|はず}である。
 【い】 誠意と熱意で熱血的になってしまったが、純粋に相手のことを思って、勇気のある注意をしてくれた。
 【ろ】 不純で自己中心的な目的のために、悪意を持って人格攻撃をしてきている。誠意の{欠片|かけら}も無い。

 さて、ここで{愈々|いよいよ}というか、「やっと」と言うか、おれは、本題の**自反**をしなければならない。
 【イ】 上記の相手の目的を一切考えもせずに、すぐにカッカと熱くなってしまう。これは、己を正さねばならない。
 【ロ】 相手が熱くなるのを感じるや、こっちも負けじとすぐにカッカと熱くなって、矢庭に反撃に出てしまう。これも、己を正さねばなるまい。
 相手の熱が冷めるのを待って、相手が正しいところは素直に認め、また逆に、自分の行動で正当なところや、心掛けていることを、穏やかに説明する。{即|すなわ}ち、遠回しにしてグサッと刺さるような言い方で、相手に反省を{促|うなが}すべきであるということだ。 

 これが、逆の立場だったら、どうだろう。
 もし、せっかくの誠意を、その対象の相手に〈悪意〉に誤解されたら、それこそ、腹が立つことだろう。{故|ゆえ}に、誤解されないように注意を払った言動も、必要となろう。
 例えば、「おまえは、こうだからダメなんだ」みたいな所謂〈YOUメッセージ〉型は、決めつけたような印象を与えてしまうので、人格否定に誤解され{易|やす}い。
 対して、「おれは、こう思う」とか、「ここは、こうしたほうがいいと思う」のような所謂〈Iメッセージ〉型で言うと、相手が穏やかな印象を受けるので、伝わり易い。

 今、ふと思った。
 おれは、怒鳴り散らす相手を、年上に限定している。
 これが、年下だと、どうだろう。そう、極端な話、赤ん坊!
 悪意は無いにせよ、自分が言いたいことが伝わらなくて、ただ泣きじゃくっている。{喋|しゃべ}れないんだから、当然だ。
 ……と、いうことはだ。
 悪意にせよ善意にせよ、相手に伝わるような喋り方ができないということは、赤ん坊と同じではないか。
 つまり、精神構造が、赤ん坊と同じ。即ち、幼稚ということだ。言い換えれば、精神的に未熟な人間。大人になれない、お子ちゃまってことだッ!
 そんな相手に、直ぐにカッカと熱くなって腹を立てるおれは、鳴いている赤ん坊に、「{黙|だま}れ! ゴラゴラゴラーァ!!」と、腹を{空|す}かして泣いているだけの無力な赤ん坊を、ただ{虐待|ぎゃくたい}しているだけの、極悪非道な人間ってことになるのではないか……嗚呼、桑原桑原!

 そうだよッ♪ わかったッ!
 怒鳴り散らしている相手が誰かということを、意識しなきゃいいんだ。というか、意識しないようにしたほうがいい。その代わりに、「オドリャー! スドリャー!」以外の、ちゃんとした意味のある単語や熟語の文脈だけを、聴き取ればいい。
 問題解決のカギは、「誰が……」を消し去り、「何を?」に集中することだ。もし、その「何を?」を、たった一つだけでも聴き取ることが出来て、「おれがやるべきことは、これだったのかーァ!!」と、思えたとしたら……これぞ正に、あの**ことわざ**♪

 「棚ごと{叩|たた}き落とすのを思い{止|とど}まったら、その棚から、{牡丹餅|ぼたもち}が、落ちてきたーァ♪」
 ……って、こんな{諺|ことわざ}、あったけーぇ?!

####

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第4集「自伝編」金曜夜7時配信 R3.3.26 一息72

#### 後裔記「講釈要約の後半、{鷺|さぎ}助屋の遺伝子が語る!」 少年スピア 齢10 ####

 アヤツの講釈の要約の後半は、ぼくとマザメ先輩にしか出来ない。それは、{何故|なぜ}か! 今、明かされる。*戦うことを選んだ鷺助屋の血*、その*言い分*!

 一つ、息をつく。

 第一声!
 「さすがは、オオカミ先輩♪」
 ぼくが予想するに、これには、マザメ先輩も異論は無いと思う。
 {何故|なぜ}なら……。
 サギッチが書いた講釈の下書き原稿の内容は、ぼくがオオカミ先輩に{諳|そら}んじて聞き取ってもらった内容の、{優|ゆう}に二倍はあった筈だからだ。それを……あそこまでの要約を、{遣|や}って退けた。その努力がどれほど、オオカミ先輩の日頃の行動を超えているか!
 それが、どれほどの功績に値するのか、その近似値を、本当に実感できるのは、二人だけだ。聴講によって原文の容量のほどを知るぼくと、その原稿を胸に{携|たずさ}えて、峠道を上って行ったマザメ先輩……。
 余談は、ここまで。
 要約のつづき……その、残りの三つ……と、その前に、一つだけ。
 この要約という作業の発案者、マザメ先輩から頼まれたこと。

 「アイツの長い講釈の{焦|こ}げて食えない{衣|ころも}を、乱暴に削ぎ{棄|す}てていくと、七つの副題が、姿を現す。最初から四つ目までは、まァ、アイツの読書の成果。でも、残りの三つは、{鷺|さぎ}助屋の遺伝子が、悪さをしてる。入れ知恵をしてるってことさ。
 それは、アンタが思い出そうとしたり、諳んじようとしても、表には出てこない。そう、{曲者|くせもの}さ。アンタ自身が、感じるしかないんだよ。
 だから、要約、誰かに手伝わせてもいいけど……誰かって、一人しかいないけどさ。{兎|と}に{角|かく}、後半の三つだけは、あんたの頭が思い出したり、口が諳んじた内容だけじゃなくて、アンタの腹の脳が感じたことを加味して、要約して欲しい{訳|わけ}さ。
 わかったーァ♪」

 言わずもがな、{解|わか}りたいなんて思わないけど、「うん」って言うしか対処の術を知らないぼくなのでした。
 余談の蛇足、以上。 

   《 五、文明人衰退の真相 》

 文明{民族|エスノ}は、自己破滅の道連れを求めている。きっと、寂しがり屋なのだ。これは、{児戯|じぎ}に類する作り話ではない。現実の話なのだ。我ら自然人と{対峙|たいじ}している文明人は、どんな性質を持ち、どんなふうに見えているだろうか。やり手のビジネスパーソン? 有能な外交官?
 ……では、答え合わせ。
 正解は、統合失調症。{或|ある}いは、精神分裂症。無論、これらは、ヤツらが考案した病名だ。もう少し、具体的に言おう。メランコリーな、文明人。彼らが自分たちのために考案した病名を、いくつか列記する。
 {抑鬱|よくうつ}神経症、神経症性{鬱病|うつびょう}、気分変調性障害、持続性抑鬱障害……等など。
 {躁鬱病|そううつびょう}という病名が考案された頃はまだ、西洋医学に至誠を感じることができた。だが、〈神経症ビジネス〉という言葉が{巷|ちまた}に流れ出したころから、病名が、どんどん増えはじめたのだ。
 文明界の現状の話は、ここで、{扠|さて}置く。

 要は、神経症ビジネスの顧客を総括して、メランコリー文明人と呼ばれているということだ。
 メランコリー文明人は{何故|なぜ}、{憂鬱|メランコリー}という総合神経症疾患に病んでしまったのだろうか。
 彼ら彼女たちは元々、〈洗脳ビジネス〉の顧客に選ばれた、高学歴の人たちだ。対峙する我ら自然人との闘いのために、忠純な兵士として育て上げる。それが、洗脳ビジネスの目的だ。その洗脳のために仕掛けられた{広告戦略|プロパガンダ}のことを、文明界の巷では、〈洗脳ビジネス〉と呼ばれている。
 洗脳ということは、{脳髄|のうずい}に働きかける訳だから、当然、ある程度以上の{知能や知性|インテリジェンス}を自認する{自尊心|プライド}の高い人たちが、その対象として囲い込まれた。

 この洗脳ビジネスは、成功したかのように見えた。{然|しか}し……。
 危うし! 自然{民族|エスノ}……とは、ならなかった。半世紀に{亘|わた}って、用意周到、{虎視眈々|こしたんたん}と育て上げてきたメランコリー文明人を、〈神経症ビジネス〉の顧客にされてしまったのだ。
 結果、メランコリー文明人に、ある症状が見えはじめた。周囲に同調しないと、生きていけなくなったのだ。彼ら自身が、この症状にどんな病名を付けたのかは忘れてしまったので、ここでは仮に、〈依存症性同調障害〉とでも名付けておこう。
 自滅的な社会現象……{即|すなわ}ち、これら新たなる神経症の出現によって、我ら自然人は、負け試合を、延命という名の{闘戦中間の休息|ハーフタイム}に、持ち込むことができたのである。
 自然{民族|エスノ}を{亡|ほろ}ぼすことを共通の目的意識として、共同体感覚を{培|つちか}って、今まさに、その長きに{亘|わた}った悲願の日々が成就しようかという、そのとき、彼ら彼女たちを、制御の利かない過度の同調という障害が発生、発病してしまったのだ。
 赤い服が{流行|はや}りだしたと聞くと、もう、制御が{利|き}かない。周囲との調和も対照(実際に照らし合わせてみること)もそっちのけで、ただただ慌てて〈赤〉を{揃|そろ}えるために、西へ東へ、南へ北へと、{奔走|ほんそう}する。
 昨日までA子ちゃんが好きだって言ってたのに、何人かがA子ちゃんを嫌っていることを知ると、その日その時から、〈あたい、A子ちゃんなんて、実は、好きじゃなかったのよねぇ♪〉に訂正変更して、その{吹聴|ふいちょう}に躍起になる……みたいな。
 マザメ先輩が、然修録に書いていた話じゃないけど、自然も、文明も、和も、どの亜種のどいつもこいつも、人間は確かに、弱くなったのだ……と、思う。

   《 六、生命体となった〈数〉 》

 文明{民族|エスノ}を二世界三亜種の{覇者|はしゃ}に{伸|の}し上がらせようとしているは、新たに生命体の{類|たぐい}に仲間入りした〈数〉という{奴|やつ}らだ。
 言わずもがな、その{礎|いしずえ}を築いたのは、メランコリー世代の文明人であるが、これ前述のとおり……彼ら彼女たちは{既|すで}に、弱体化の一途である。
 このメランコリー世代が弱体化{或|ある}いは老いてゆく{最中|さなか}の陰で、頭角を現す者あり。その彼ら彼女らは、神経症ビジネスにも、洗脳ビジネスにも、宗教ビジネスにも、依存することはなかった。彼ら彼女たちが依存したもの……正にそれが、〈数〉なのだ。
 そんな彼ら彼女たちは、その〈数〉に一定の法則と無限の特性があることに気づき、〈数〉に{意図|いと}を持たせ、{息吹|いぶき}を吐き出す機能を組み上げた。
 さて、彼らが気づいたその特性とは……。
 たとえば、四当五落。メランコリー世代にとっても、懐かしい言葉として記憶に{甦|いみがえ}ることだろう。受験戦争。四時間寝るか、五時間寝るかで、当落が分かれる。
 次。一石二鳥。一石一鳥で甘んじているようでは、{戦|いくさ}には勝てない。そんな考えを持っている文明人との戦にあっては、一石二鳥くらいで甘んじているようでは、到底勝利は見えてこない。

 {遂|つい}に頭角を見せたその{主|ぬし}{等|ら}……〈数〉の入信者たちは、目前の問題や逆境の難題を、確率や割合という〈数〉に置き換えるという発想を持った。
 しかも、そのために必要と考えて自ら修練して、{湧|わ}き{出|い}でる分数や少数を暗算で処理し、概算で百分率や歩合をも{弾|はじ}き出せるようになっていった。
 そんな彼ら彼女らのことを、シゾフレニア世代と呼んでいるそうだ。様々な電子機器を携帯し、瞬時に素早く、計算したり情報を集めたりする能力に、恐ろしく{長|た}けている。我ら自然{民族|エスノ}にとっては、{遂|つい}に、こいつらこそが、脅威だ。

 だが、その能力には一つ、大きな問題があった。あらゆる計算や情報収集の方法を知ってはいるが、{何|なん}のために、何を、どうやって計算するかは、誰かから指示してもらわなければ、判らないのだ。
 さらに、その計算や情報の集め方が正しいのか、或いは間違っているのか。その行為行動が、善なのか、{将又|はたまた}悪なのか。そんな、一番大事な判断が、自分では皆目見当がつかないのだった。
 {故|ゆえ}に、シゾフレニア世代の文明人たちは、**言いなり**の労働を{生業|なりわい}とすることを、余儀なくされた。その〈言いなり〉という、意思を持たない心が、〈数〉という名の、こちらもまた意思を持たない生命体と、結びついたのである。
 これがまた、{厄介|やっかい}な、新種の脅威となってしまった。

 〈シゾフレニア世代の文明人〉と〈数〉の連合軍は、メランコリー世代の多勢の{群|む}れにも増して、巨大化しつつある。この再編成されようとしている新たな多勢に勝つためには、{我等|われら}〈自然人〉と〈和の人たち〉の連合軍は、一石三鳥の脳力と、その実践行動力を急務として、{鍛|きた}え上げなければならない。
 これは、桁数の多い割り算と同じことだ。桁数が増えれば、思考の量も増える。思考が増えれば、より高度な集中力が、求められる。その成果は、言わずもがな。計算能力と問題解決能力の、向上だ。
 だが、これでもまだ、一石三鳥とはならない。
 発想力が、欠けているのだ。

 ここで、一つ。
 留意しておかなければならないことがある。
 「{斬新|ざんしん}な兵法が、必ずしも、有効とは限らない」と、いうことだ。{寧|むし}ろ、{古|いにしえ}の過去に秘蔵された数千数万の兵法の実際や、その語録の中に、最も我等の期待に{適|かな}う答えが隠されていることのほうが、多いのだ。
 斬新さに魅せられて目が{眩|くら}んだり、己の独創性に酔って、進むべき道を見誤ったり、そんなことをしていたのでは、われら自然{民族|エスノ}にも、和の{民族|エスノ}にも、未来は無いということだ。

   《 七、数に対抗し{得|う}るもの 》

 {算法や問題解決の手順|アルゴリズム}の修得以外に、脳力を鍛えるためにやるべきことが、二つある。
 それは、音読と手書きだ。
 さらに進めて言えば、朗読と、写本だ。
 この二つが、{武童|タケラ}や{美童|ミワラ}の得意分野だと思っている自然{民族|エスノ}の諸氏諸君は、多いと思う。
 では、問う。
 得意とは、何がどこまで出来るこを、指すのか。
 答えよう。
 それは、速度だ。
 では、説明しよう。

 思い出してもみよッ!
 日常の、朗読室……。
 入る前に、持ち込む本の読む範囲を決め、その範囲にある漢字すべてに、2Bの鉛筆で、{振り仮名|ルビ}を振る。
 場面は変わり、巡回授業所の準備……当番の講釈人。その準備とは、手書きで、原稿や資料を作ること。しかも、漢文の勢いで、漢字を多用する。
 但し、その単語や熟語の意味、{延|ひ}いてはその由来をよく理解して、誤用は許されない。出来上がった文体は、{宛|さなが}ら漢文調。それ即ち、簡潔明瞭!

 これらの目的は、簡易な数字を一行並べただけの足し引き算を{幾通|いくとお}りも暗算する{其|そ}れに、等しい。
 その目的とは、{況|いわん}や!
 速度だ。
 遅ければ、{何|なん}の意味もない。
 速さが、脳力を高める。
 その次に、まだやるべきことがある。
 分析、評価、自反。
 そしてまた、まったく同じ本の同じ範囲を、朗読する。
 或いは、講釈の原稿を{推敲|すいこう}して、まったく同じ場所、同じ時間に、再度、講釈する。無論、場所は同じ朗読室の檀上でも、その日その時間、巡回授業所は、開講していない。

 次。
 敵を知る。
 コツは、場合分けと、時間分けだ。
 世代別、出身地別、血液型別に分類して、そのそれぞれを、分析する。分析し{尽|つ}くしたならば、次は、それを自ら、評価する。自分のことを一番{解|わか}っているのは、自分である。他人が評価するよりも{遥|はる}かに、厳しい評価となろう。
 そこまでを終えたならば、それを{日毎|ひごと}月別に、{更|さら}にそれを、年次の{括|くく}りで、自反する。
 以上。
 たった、これだけだ。
 ここで一つ、注意しておく。

 〈数〉は正直者だが、それがどうしたことか、他人を{騙|だま}すのに、最もよく利用される。それも、この〈数〉という{奴|やつ}の素顔の一つだ。
 特に、その道の専門家と自称する者が扱う〈数〉には、相当な注意が必要だ。具体的に言おう。正常値、全国平均、実態調査の統計数値……みたいな言葉には、気を付けろッ!
 {最|もっと}も{尤|もっと}もらしいのに、{何故|なぜ}、注意が必要なのか。
 答えよう。
 {限定地域特有|ローカル}で、{偏|かたよ}っていて、狭い範囲の中の相関関係しか持たないからだ。
 {飽|あ}くまで個人的な感想や見解として作文された調査データでさえ、自称専門家が作りさえすれば、それは{直|ただ}ちに、正常値とか標準的とか平均値などといった、{曰|いわ}く付きの称号が与えられてしまう。
 人は、その称号で判断して、架空の因果関係を、自ら作文させられてしまう。しかも、それを信じると、自分で決めてしまう。数字に{拘|こだわ}り過ぎると、真実を見失うだけでなく、知らず知らず、まったくの{嘘|ウソ}を、自ら{捏造|ねつぞう}してしまうのだ。
 それが、どういう意味か、考えてもみよッ!
 答えよう。
 己の命のみならず、大切な人たちの命をも、{奪|うば}い取ってしまう。
 それが、この世に{平時|へいじ}など存在し得ないという真実の{所以|ゆえん}なのだ。

 以上だけど、要約だってのに、やっぱ、長いよね(……アセアセ)。
 最後に、やっぱりこれ♪
 ……蛇足。

 「四当五落」とは、確かに受験生の現実的な〈数〉だと思う。でも、ぼくらの{脳髄|のうずい}や肉体がヒト種である限り、四時間や五時間の睡眠では、到底足りない。
 大人の年代である{武童|タケラ}たちに必要な睡眠時間は、七時間。子どもの年代である{美童|ミワラ}に到っては、七時間でも足りず、特に脳髄形成期の幼循令に{於|お}いては、10時間を超える睡眠時間が必要なんだそうだ。
 みんなも、こんなの読む{暇|ヒマ}があったら、早く寝ればーァ?! 
 
####

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「教学編」金曜朝7時配信 R3.3.26 一学68

#### 然修録「変わってしまったと変わるは違う。渾身の自反」 学徒マザメ 少循令{悪狼|あくろう} ####

 変わってしまった世間を{嘆|なげ}くなかれ。*本当に変わってしまったのは*世間ではなく、*自分自身*。弱くなった男どもの真相の究明は、男児{美童|ミワラ}に振る。アタイは、女。*渾身の自反*。

 一つ、学ぶ。

 誰かと同じことを書くようだけど、ツボネエちゃんの「ヤバイは、トカゲの{尻尾|しっぽ}」じゃないけどさァ。
 {棄|す}てる……。変わる……。
 これって、知らず知らず、あらゆる方面で展開して、知らず知らず、あらゆる方面で完結しては、また、あらゆる方面で棄てられては、日々日々、変わり続けている。
 一つ、誤解を避けるために、もう一度、同じことを書きます。
 {兎|と}にも{角|かく}にも、学校の先生たちは、頑張ってる。大事なことに気づいた先生が、少しだけ増えたってこと……みたいな話を、前回書いたつもりなんだけど……なんか、自ら尻尾を切って、トカゲじゃなくって、尻切れのトンボみたくなっちゃった{訳|わけ}さ。
 それって、なんかさ。切れが悪いっていうか……なので、その続きみたいな話から、入ります。
 本当に変わってしまって、長い間、洗脳されたことに気付くことも出来ず、世間の人たちから差別の冷たい目で見られてきたのは、果たして、学校の先生たちだけなんでしょうか。
 あたいは、違うと思う。

 本当に変わってしまったのは、生徒自身。
 それは、先生のことを、とやかく言っている、張本人!
 そう、あんただ。
 その、その自分自身ってことさ。
 べつに、先生のことを闇雲に擁護してる{訳|わけ}じゃない。そんなこと、さらさら思ってもないし、誤解されるようなことを、微塵も漏らした覚えはない。ただ、{良|い}いと思ったらすぐに「良い」と言うし、悪いと思ったら直ぐに、「悪い」と言う。{唯|ただ}、それだけだ。
 本当に言いたいことは、別になる。
 「どんなふうに、変わったかッ!」だ。
 先ずは、答えよう♪
 弱くなった。
 特に、男ども!
 なので、そのへんのところを調べて、目的心理学の見地から捉えて、その原因を、説明して欲しい。誰に言ってるかってぇ? 決まってるじゃん♪
 オオカミの野郎さッ!
 だってさ。外との関係は、外で狩りをするオスたちのほうが、実践豊富だろッ? なので、よろしくーぅ♪

 で、あたい? {解|わか}ってるさ。書くさ。でもさ。女は、忙しいんだ。女は、男どもより五感が優れてるから、悩みも多いのさ。だから、悩むことにかけては、女の右に出ることができる男なんて、いない。
 てなわけで、個人個々の人生の悩みを{主題|テーマ}として、目的心理学的に、あたい自身、自反を試みてみようと思う。
 女の{優|すぐ}れた五感の話……アテズッポーで書いてるんじゃないから、それだけは、よろしくねぇ♪ 「どういうことォ?」って、思うよね?
 答えます。
 元々ヒト種は、メスが成って、そこから変種として、オスが成った。優れている女の五感のうち、その最たる能力が、視覚。男どもより遥かに鮮明に、世の中のものを観てる。特に、緑色の解像度に到っては、8Gっくらいかしらん♪
 前置きは、以上。
 但し、一つ、断わっておくわねッ♪

 あたいの自反(自分に{反|かえ}って、素直に自分を{顧|かえり}みること)は、{飽|あ}くまで、欧米で一番有名な心理学者兼教育者であったアドラーさんの目的心理学に、基づいている。
 これは、あたいが決めたこと。そのアタイの論を否定するあなたが{居|い}るとすれば、その〈否定する〉と決めたのは、あなた自身です。だから、肯定するって決めたあたいも、否定するって決めたあなたも、どっちにしたって、自分で決めたことに変わりはないし、他人からとやかく言われる筋合いも無い。
 なので、フロイトさんやその弟子のユングさんが提唱する心の闇のすべて一つひとつに病名を付けて、「病院に行って、治療してもらいましょう♪」的な〈原因心理学〉に入信している方々から見れば、アタイの思いや価値観なんて、唯ただ、反感を覚えるだけだと思う。
 だからと言って、それをアタイが、どうこう変えれる{訳|わけ}じゃない。自分を変えれるのは、自分しかいない。変わるかどうかを決めれるのも、自分しかいないのさ。
 ただ、「アタイの自反を読んで気分を害したって、それは、アタイのせいじゃない。そんなもん、知るもんかァ!」……なんてことは、口が{裂|さ}けても言わない。
 魔性の{鮫|サメ}女って呼ばれてるから、{既|すで}に口は裂けている……って、どうせ男どもは、みんなそう思ってるんでしょうけど……まったく、失礼な話よねッ!

 てなわけで、ちょっと前置きが、長くなっちゃった訳なんだけどさ。
 ここで、アタイの自反を読んで気分を害される前に、{謝|あやま}っとく。
 でもさ。未然のうちに、それを防ぐ{術|すべ}なんて、アタイらみたいな凡人が、知る訳ないじゃーん?!
 てな訳で、悪しからず……ってことで、よろしくねーぇ♪

      **マザメの自反**

   《 いつまでも、くよくよと悩む 》

 営業マン最大の失態、プレゼンの失敗。
 人生最大の{悲哀|ひあい}、失恋。
 それが、{臆病|おくびょう}という当然の情緒の芽生え。
 手痛い挫折を味わってしまうと、{斯|こ}うも人間とは、{脆|もろ}いものか! と、驚く。
 一歩さえ踏み出すことの出来ない、別人のような病人になってしまう。
 でも、それはただ、消極的という、人間なら誰しも、しかも永続的に、時折験するもの。でも、それを積極的に変えなければ、滅多に訪れないビジネスチャンスも、素敵な素敵な、しかも自分に興味を示してくれている異性を{繋|つな}ぎ止めることも、どんなに願っていたとしても、到底{叶|かな}う{筈|はず}もない。
 前回失敗したからといって、前回失恋したからといって、次もまた**必ず**失敗したり失恋するなんてことは、絶対に有り得ません。これは、この星の生きもの一人残らず、一匹残らず、すべての生きものたちが、心の奥底で承知していることです。
 でもね。
 海や湖に深さがあるように、挫折にも、深さの違いがあると思う。
 その最も深いところにあるのが、逆境……修羅場……イザナキが見て、イザナミが住まった、あの正に{黄泉|よみ}の国の{如|ごと}く、実際にそんな{悍|おぞ}ましい世界が、この世に存在して、しかも、ちょっとした何気ない一瞬の心の{緩|ゆる}みで、その悪夢のような世界を、己の{現|うつつ}の世界で、目の当たりにすることになる。
 ここで、アドラーが世界中の症例や実例を集めて、何かを感じたからこそ確信し得たその真実を表した一言を、紹介します。

 「劣等感を言い訳にして人生から逃げ出す弱虫は多い。**しかし**、劣等感をバネに偉業を成し遂げた者たちも**数知れない**」

「経営の神様」と言われた松下幸之助公は、貧しさ{故|ゆえ}に、小学校の四年生で中退を{強|し}いられたそうです。あなたは、それよりも{酷|ひど}い貧しさで、今、{飢|う}えと闘っているのですかッ?
 身長が低いことに劣等感を感じている男どもが、何と多いことかッ! アルゼンチンの世界有数のサッカー選手、リオネル・メッシを、知らないんですかァ?
 彼は、身長の低さを武器にして、大柄の選手の足元を{擦|す}り抜けてゆくという、小柄ならではの巧みなドリブルで、朝飯前に次々と、ゴールを決めてゆきました。

 ここで一つ、仮説を立てましょう。
 ハンディがあればあるほど、劣等感が深刻であればあるほど、それに対する反発力がバネとなって、〈頑張る〉という思いもよらない日常を、経験することになる。
 この仮説、絶対に有り得ないと、言い切れますかァ? 「YES?」 ほう! じゃあ、それを、どうやって証明しますかァ?
 この**頑張り**のことを、日本語で言うと、「補償」です。己の損失を、補う……と、いう意味です。
 イソップ童話の、『ウサギとカメ』の話……ではなく、その教訓を、ご存知ですかァ? 
 最初から恵まれている人は、努力の偉大な力に、気づけないのです。なので、生まれながらにして恵まれているその{殆|ほとん}どの人が、最終的には、成果を得られていない{場合|ケース}が、{殆|ほとん}どなのです。
 生まれて暫くの間だけ、{羨|うらや}むような恵まれた生活をおくるのと、人生の最終章に、夢をも超えた成果を得て、その達成感を宝にして余生を楽しむのと、もし、そのどちらかを選ばなければならないとしたら、あなたは、どちらの人生を選びますかァ?
 人生は、ただ楽観的なだけでも、かといって無謀な行動に走ってしまうことも、どちらもダメな生き方なのです。
 そこのところを、アドラーは、{斯|こ}う言っています。

 「楽観的であれ! 過去を悔やむのではなく、未来を不安視するのでもなく、今現在の〈**ここ**〉だけを見るのだ」

 過去の失敗に{囚|とら}われていては、いつまで経ってもその{檻|おり}から出ることは出来ない。自分の未来を見ずに、その生涯を、終えることになってしまう。
 未来を不安がってしまえば、{何|いず}れ必ず、その当の未来という不安の中心に、立つことになってしまう。「太陽に向かって、吠える♪」という、気持ちの良い演出を、自ら実践することは、もう、出来ない。
 なので、**今ここ**、**今この瞬間**のことだけを考え、今ここで、この瞬間に出来ることを、唯ただ、一所懸命にやればいい。
 ただ、それだけのことなのです。
 但し、ここで一つ、大事なことを、言っておきます。
 楽観的なのと無謀なのとの違いは、何だと思いますかァ?
 キッチリとした計画と、周到な準備と、一日も欠かさない{弛|たゆ}まぬ努力……と、この三つの{会得|えとく}が根づいた自分……その実際に起こった結果を見ることが出来る心身の状態のことを、楽観的と言います。

 きっと、いつか必ず、うまくいきます。
 うまくいくからこそ、それは、この世に存在することが出来ているのです。

 以上、なんだけど……。
 実は、あと二つ、書きたかったアタイなのでした。

 その、一つ目……。
   《 自分の未来に、絶望してる 》
 その、二つ目……。
   《 これからどうしたらいいか、{判|わか}らない 》 

 もしまた機会があれば、それはそれということで……(アセアセ)♪ 

####

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第4集「自伝編」木曜夜7時配信 R3.3.25 一息71

#### 後裔記「重労働に秘められた目論見、講釈の要旨その前半」 学徒オオカミ 齢13 ####

 善意で引き受けた重労働、そこには要領に{長|た}けた後輩の*目論見*が、秘められていた。遂に明かされる、サギッチの*長ったらしい講釈の要約*……その前半!

 一つ、息をつく。

 寒空の{下|もと}……。
 湿って重々しい、実際に重い敷布団を{担|かつ}いで、峠を上る。そのすぐ隣りを歩く少年、{一|ひと}。ブランケットのような薄手の毛布を畳んで頭の上に載せ、軽快に二足歩行……。見ようによっては、ふざけているようにも映る、その態度!

 秘密基地……元い。{五省|ごせい}舎? 実際、どっちゃーでもいい。おれにとっては、ただの目的地に過ぎない。{兎|と}にも{角|かく}にも、そこに、やっと到着。
 いつも一人で寂しいだろう幽霊さんの隣りに寝転んで、話し相手になってやろう……というスピアの思い{遣|や}りは、尊重してやらねばならない。なので、この重労働を渋々、快い顔で引き受けた。そのスピアが、言った。
 「そこでいいよ♪」
 そことは、掃き出し窓の前の、太陽の光がよく入る板の間。
 (取り敢えず、荷を降ろせってことかァ。まァ、そうだよなッ♪)と、思うおれ。
 「そっちの向きじゃなくて、窓際に添わせて広げてよォ!」と、スピア。
 (広げるーぅ??)と、思うおれ。
 「ノート、これ使ってよ。そのまま、オオカミ先輩の後裔記の下書きノートにしちゃっていいからさァ♪」と、スピア。新品の大学ノートと、スピアの背中から降ろされたリュックザックの中に入っていた筆記具を、受け取る。
 「兎に角、長いんだよ。アイツの講釈。{脚|あし}、冷えるし、痛いじゃん。だからこれ、正解でしょ?」と、スピア。
 徐々に、情況の全容が、見えてきた。スピアが、サギッチの講釈の全容に{亘|わた}る記憶を、{諳|そら}んじる。それをおれが、その新品のノートに書き{留|と}める。これから、そんな展開が始まる。それは、意外と直ぐに、予測することができた。でも、{何故|なにゆえ}に!
 スピアが、言った。
 「ぼくが、数字が苦手なの、知ってるでしょ? だから、『数字で捉えた{何|なん}ちゃらかんちゃら』っていうアヤツの講釈の要約は、当然パス。頼れる高学年の先輩たちは、ここには{居|い}ない。なんで、頼めるのは、オオカミ先輩だけ。ほかに、選択肢無し。決まり♪
 ねぇ。早く始めようよォ!」
 一瞬、{目眩|めまい}と立ち{眩|くら}みを覚える。諳んじ始めたスピアを{止|とど}める{術|すべ}は、武の心をどう{捉|とら}えても、その術に結び付く糸口は、一本も見つからない。太陽が、動いている。そんな、気がした。よく見たけど、それを確かめることは、出来なかった。

 サギッチの「数字で捉えた云々……」の講釈、そのモチーフというか、理屈というか……兎も角それは、七つの見出しで{括|くく}ることができそうだった。息恒循でもあるまいし、そんなにいっぱい、余計なことを!
 結局……二人の共同作業の結果、その最初の四つは、確かに算数の範疇と捉えることが出来たが、残りの三つは、算数というほどのものはない。なので、前半の四つは、おれが要約し、残りの三つは、スピアが要約する……ということで、一件落着した。無論、納得したという意味は、{兼|か}ねてはいない。
 ここは、とやかく言うべきところではない。ワタテツ先輩が然修録に取り上げた『{闘戦経|とうせんきょう}』ではないが、ここは正に、「{因|いん}と{果|が}とを弁ぜず」で、ある。

   《 一、大航海時代の算数的発想 》

 大航海時代……。
 冒険家が地球を一周して、地球が丸いことを証明して見せた。だが、自然人たちは、その当時{既|すで}に、しかも、とっくの昔に、そのことを自ら証明して、知り得ていた。自然を観察すれば、直ぐに判ることだ。
 船が遠ざかると、下のほうからだんだんと見えなくなる。
 高い山から海や平原を見ると、曲線に見える。
 月の欠けたところも、曲線だ。
 {即|すなわ}ち、地球の影が丸いということだ。
 月食の満ち欠けも、これと同じ理屈。
 地球の影が、丸いということだ。
 星の影が丸いと、その星自体も丸いという仮定は、月の形と、日食のときの太陽の満ち欠けの様子を見れば、容易に証明することができる。
 まァ、そこまで観察しなくっても、「太陽も月も丸いんだから、地球だって丸いだろッ!」って話だ。

   《 二、算数で捉えた天地創造の真相 》

 天地創造の真相は、その{殆|ほとん}どが、大{隕石|いんせき}の落下。
 特に、ザックリ六五〇〇万年前の天地創造は、{凄|すご}かった。直径13キロの巨大隕石が、時速10万キロの{猛烈|もうれつ}な{速さ|スピード}で、地球に激突!
 数年間、その{粉塵|ふんじん}で、太陽の光が閉ざされてしまった。
 {因|ちな}みに、隕石が歩いている人の頭に当たる確率は、六千億分の一。百万分の一以下の確率の天災は〈予知不可能〉と規定されているらしいので、予防や対策は無用……と、いうのが、現代の通説となっている。
 {方|かた}や、文明界で日常的に起きている人災の代表格……交通事故。この事故に{遭|あ}う確率は、なんとーォ!! 一万分の一。嗚呼、恐ろしや人災。恐ろしや、文明界!

   《 三、銀河系は大宇宙の算数銀座 》

 太陽系が属している銀河系には、恒星と呼ばれる太陽のような核融合で自ら光っている星が、これがまたなんとッ! 一千億個もあるという。
 {更|さら}に、小宇宙とよばれる銀河系のような星雲も、大宇宙には、これまたまたなんとッ! 一千億個もあるそうだ。
 こうなってくると、さすがに、この{途轍|とてつ}もなく広大な宇宙に、宇宙人が{居|い}ないなんて「有り得ねーぇ!!」と、思えてくる。その宇宙人が居そうな星は、そう遠くない。
 そのイプシロン星のあるエリダス座までは、約11光年。同様に、次に近いタウ星のある*くじら*座までは、約12光年。
 宇宙は、無限だ!
 でも、その無限の宇宙の外側には、一体全体、何があるのだろう。
 バカデッカイ巨人が、大宇宙を一族の家宝として、神棚に上げて祭っているのかもしれない。だとすると、その巨人は、宇宙外大星人!
 その点、数というものは、**真の無限**が、いくつもある。
 自然数の、一、二、三……無限!
 値の等しい分数、二分の一、四分の二、六分の三……無限!
 自然数以外の特定の性質を持った数列……例えば、一、三、五……無限!
 でも、あの、頭が変になりそうなくらい巨大な大宇宙でさえ、無限であることの証明は、不可能なのだ。有限の形あるものとして、巨人が神棚に上げているかもしれない。この〈有限〉を否定したところで、それを証明して見せることはできない。無限の否定を証明できないのと同様に、有限の否定の証明も、不可能なのだ。

   《 四、最強多勢の大数に落とし穴あり 》

 ヒト種の一部の人間たちが、この数の神秘と、そこに秘められた力を知って、それを学び、{操|あやつ}りはじめた。いろんなものを操れるようになってくると、こんどは有ろう事か、自然の存在が煙たくなってくる。
 数という無敵の知能を有する軍師を得たその一部の人間たちは、次々と自然を、そして{忠純|ちゅうじゅん}にして{頑|かたく}なにその自然の一部で在り続けようとする生きものたちを、次々と{亡|ほろ}ぼしてゆく。
 その文明軍の兵士たちは、数々のものが、それぞれに大数となるまで{籠城|ろうじょう}し、ただひたすらに待つ。大数に到るまで、兵士はもちろん、{兵糧|ひょうろう}から何から何まで、何があっても動かさない。{護|まも}りに、徹する。
 結果……{即|すなわ}ち戦果が、お決まりの確率どおりになるまで、数を積み重ねるということだ。
 例えば……。
 サイコロの〈一〉の目が出る確率が六分の一になるまで、サイコロを振り続ける。
 少人数ながらやっと立ち上げた保険会社……その設立初年度で、10人しか契約できなかったとする。その10人全員が、その翌年に病気や事故で死亡したら、その保険会社は、設立二年目にして、巨額の負債を残して倒産という悲劇に、見舞われてしまう。
 子どもたちが好きな、草野球♪ 一度限りの打席でヒットを打ったら、何と打率十割の、プロスカウト必至のスーパーヒーロー♪
 逆にアウトになってしまったら、打率ゼロ割バッターで、末代までの恥!
 結局大事なのは、試合に出続けて、確率が三割で安定するまで、数を稼ぐことだ。
 でもそこに、落とし穴あり! 数を稼ぐだけでは、三割には届かない。それが、高原現象!
 打率三割が見えた途端、何者かに手足を操られて、打率の上昇運動にブレーキがかかる。どんなに必死に大努力をしても、二割キープが精一杯なのだ。それでも{諦|あきら}めないで、打席に立ち続ける。
 すると、{摩訶|まか}不思議! それが、諦めかけた次の打席の一打目か、数百打目の追い詰められたツーストライクの捨て身!渾身!の一打かは{判|わか}らないが、いつか必ず、たった一打のことがきっかけとなり、晴れて念願の三割の山場を、超えることが出来るのだ。

 以上。これだけでも、マザメは、「長いよッ! 馬鹿か、オマエはーッ!!」と、吠えると思う。その確率は、言わずもがな。誰に{訊|き}いても、十割だ……(アセアセ)。

 蛇足……新品の大学ノートの運命。
 スピアが諳んじた{彼|か}の有名な当番講釈人の持論の数々で、全{頁|ページ}白紙の真新しいノートの十割の頁が、黒々とした鉛筆文字で埋め尽くされたのだった。

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「教学編」木曜朝7時配信 R3.3.25 一学67

#### 然修録「この世に{平時|へいじ}は存在せず。『闘戦経』に学ぶ」 門人ワタテツ 青循令{猛牛|もうぎゅう} ####

 この世に*平時なし*。唯識的に言えば、平時という宗教を信仰する人たちが、*己のためだけに*、それを自らこの世に*投影しているだけ*。{飽|あく}くまで、個人的な幻想に過ぎない。*真実のこの世*の{現|うつつ}が、〈{如何|いか}なる時〉かは、『闘戦経』に学べ!

 一つ、学ぶ。

 ムローが傾倒する{唯識|ゆいしき}的に言うと……。
 {平時|へいじ}と戦時の区別など、この世には存在しない。俺たちにとってのこの世……{即|すなわ}ち自然界は、常に、戦時である。
 自然の一部である生きものたちは、無意識にそれを知り、{在|あ}りのままの自然を、自らの心で、この世に投影する。{然|しか}し、自然から離れてしまった文明人たちは、宗教への逃避や{微温湯|ぬるまゆ}で心を揺さぶる洗脳という悪意の力に、屈してしまう。
 結果、平時という架空の夢の世界を、自ら、この世に投影してしまうのだ。

 いま懸念すべきは、この〈平時の投影〉という異常な精神行動を、文明{民族|エスノ}のみならず、和や自然の民族のなかにも、見て取れることだ。
 この、平時という幻想を投影させられている人たちは、天空に爆弾の煙幕が覆い被さり、その爆弾が頭上数センチのところまで迫って来ても、未だ{猶|なお}、煙幕に平和という絵空事を、投影し続けている。
 そんな〈お目出たい〉生きものたちの命を護るのは、自然という心理を生まれ持って知り、その真実をこの世に投影し続け、自然の一部で在り続けている少数派の亜種……それが、我らが自然{民族|エスノ}なのだ。
 その、自然の一部で在り続け、当たり前の世界をこの世に投影し続けている我らは、ヒト種分裂時代に突入して以来この方、一体全体、どんな**生き方**をしてきたのだろうか。

 平安時代の末期……そう、それはおよそ、九百年の昔のこと。
 その時代に、在りのままの自然、普遍にして未来{永劫|えいごう}、不変の戦時……{況|いわん}や、その当節。それ{正|まさ}に、この世の{現|うつつ}!
 そこで生き続けるために……。
 その極意を説いた書……即ち、〈生き方〉を指南する書、『{闘戦経|とうせんきょう}』。それ、{所謂|いわゆる}兵書というものが、その平安という世の末期に、我が国に{於|お}いて初めて{著|あらわ}されたのだ。
 簡単に洗脳されてしまったり、また安易に、原始仏教から離れた仏教ビジネスのお得意様になったりしてしまう、現代人……文明{民族|エスノ}。
 {如何|いかん}とも耐え{難|がた}く、つい{憂|うれ}えてしまう。
 そんな、姿形が我々と近似している亜種の人間たちを見るにつけ、その{忌忌|ゆゆ}しき彼らの絶望的な現実の原因は、正しく、彼らの祖先に有りと見て取れてしまうのだった。
 そんな彼らの祖先たちは、我らが祖先が古来受け継いできた指南書の学を、断ち切ろうとした。その理由は、明白。{煙|けむ}たいのだ。ここに、その断ち切られ、{葬|ほうむ}り去られ、{廃|すた}れてしまった俺ら自然人の〈生き方〉の極意……その、ごくごく一部を、列する。

 【い】 兵の道にあるものは{能|よ}く戦うのみ。
 【ろ】 先づ仁を学ばんか。先づ智を学ばんか。先づ勇を学ばんか。壮年にして道を問ふ者は南北を失ふ。先づ水を{呑|の}まんか。先づ食を求めんか。先づ枕を取らんか。百里にして疲れる者は、{彼|か}れ{是|こ}れをいかんせんとする。
 【は】 眼は明を{崇|とうと}ぶと{雖|いえど}も、{豈|あ}に三眼を願はんや。指は用を{為|な}すと雖も、豈に六指をもちいんや。善の{亦|ま}た善なるものは{却|かえ}って{兵勝|へいしょう}の{術|すべ}に{非|あら}ず。
 【に】 死を{説|と}き生を説いて、死と生とを{弁|べん}ぜず。{而|しか}して死と生とを忘れて、死と生との地を説け。

 〈唯識〉にあるような註釈も訳出も、不要だろう。況やこれは、外国語ではない。我が国固有の言語、日本語だ。学ぶ姿勢が無い者に、何をしてやっても無駄というものだ。
 それでも必要とあらば、この指南書から〈学ぶ〉という{習|なら}わしが復活した暁にでも、我らが自然の一部の後裔の誰かが、そんな余計な仕事を{已|や}む無く快く引き受ければよい。
 でもまァ、{然|しか}しながら、今まさにその已む無き時!
 要は、{斯|こ}ういう意味である。

 【い】 この世の{現|うつつ}という戦いの世界にいるのであれば、しっかりと構えて、敵の真っ正面から、堂々とした態度で戦うのみである。
 【ろ】 仁は、優しさを持った真心。智は、知性を持った判断力。勇は、気力を備えた勇ましさ。先ずは、そのどれから学ぶべきか。道……{即|すなわ}ち、どう生きればよいかなどと、いい歳をしてそんなことで悩んでいるようでは、本当に歩むべき人生を見失い、その方向性を見誤ってしまう。百里の道を歩んで努力の疲れを知った者は、(はてさて、先ずは水を飲もうか、何か腹に入れようか、それとも枕を抱くか!)などといった{児戯|じぎ}に類するような悩みを抱くことはない。
 【は】 目があれば、それは確かに、ハッキリと物を見ることができる。だからと言って、その目が三つも必要だろうか。五本ある指は、それぞれが見事に役割を心得て、器用にいろんなことをしてくれる。だからと言って、それを六本に増やしたら、果たしてそれを使いこなせるだろうか。善は確かに良いものだが、その善をただひたすらに重ねたからといって、戦いの{術|すべ}にはならない。
 【に】 死とは何か、生きるとはどういうことかなどということを理解しようとしても、そんなものは、{解|わか}るはずもない。そんなことより、死だの生だのといったことは一切忘れて、己が死ぬべき地、己が生きるべき地のことを考えよ。

 「**善**処します」は、一度限りしか効果がない。
 ……と、いうことのようだ。
 耳が痛ければ、そんなもん、切り落とせば{善|よ}し♪

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