MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

『後裔記』第2集

EF ^^/ 後裔記 第2集 第19回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第19回 一、想夏 …… 立命期、最後の一年 (9) 少女に思えたその声は、確信に変わっていた。 暗闇とほとんど同じ色で、ぼんやりと何かが見える。 肝臓を輪切りにしたような、{歪|いびつ}な形をした学習用の座卓。 その左横には、姿見の大…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第18回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第18回 一、想夏 …… 立命期、最後の一年 (8) 八月。 七月と変わらぬ一日が、始まった。 亜種記に描かれてた{美童|ミワラ}たちは、同じ八月、離島疎開した。 だが、今となっては、疎開したところで安全な島など、どこにもない。 出遅れ…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第17回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第17回 一、想夏 …… 立命期、最後の一年 (7) エセラとカズキチは、空想の中で、はっきりと少女の姿を見ていた。 配置に着いた二人は、それを確かめるべく動き出した。 古びた焼杉を下見張りにした勝手口らしきにところに、片引き戸がつ…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第16回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第16回 一、想夏 …… 立命期、最後の一年 (6) 怪奇な古ぼけた家、ここは、もうどれくらい生きものが住んでいないのだろうか。 エセラは一人、古屋の裏側に廻り、勝手口の前で立ち止まった。 ここから入れば、どの方角からも、背中の曲が…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第15回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第15回 一、想夏 …… 立命期、最後の一年 (5) その夜、妹たちとトモキは、早々にガースカ就寝。 母のゆか里は{胡坐|あぐら}、エセラはその前で静座である。 母、俄かに語りだす。 「何度も言わないから、辛抱してお聴き。 ほのみやえみ…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第14回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第14回 一、想夏 …… 立命期、最後の一年 (4) 良く晴れた昼下がり、この自然{民族|エスノ}の集落の{子等|こら}は、太陽神への恐れを知らない。 浦の砂浜に集い、思い思いに転がって過ごす。 仰向けになって目を細めて太陽神を見遣ってい…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第13回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第13回 一、想夏 立命期、最後の一年 (3) 夏も盛り、ある夜のことだった。 エセラは、{仕来|しきた}りの旅への焦りで、寝つけない夜を過ごしていた。 そこへ、ほのみたちを寝かしつけたばかりの母が、エセラの枕元に座った。 そして、…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第12回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第12回 一、想夏 立命期、最後の一年 (2) 武家屋敷になぞらえるならば、そこに、おはぎが登場しても、不自然ではない。 でも、ここで武家屋敷に譬えたのは、精神面でのことだ。 生活面でなぞらえるなら、オンボロ長屋で暮らしている貧…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第11回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第11回 一、想夏 立命期、最後の一年 (1) 毎年、そして毎日も、律儀に何かが消えてゆく。 海水浴場の看板、鳥や魚や貝たち、漁船に桟橋に港の市場、カントダキ屋、イルモン屋……。 カントダキ屋で「関東炊き」と呼ばれていたおでんは、…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第10回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第10回 嗚呼、迫る エセラ、十二歳。 窓の外を見ると、今でもそこに、父さんが居るような気がした。 実際は、雑木林が繁っているだけだった。 その雑木林の斜面を少し登ると、半島の南端に辿り着く。 崖の下には、ダキの浜がある。 {磯…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第9回

家族 エセラ、十一歳。 書くと、頭の中を整理できる。 だから、書いているだけ。 これが後裔記だとは、誤解しないでほしい。 ぼくの頭の中には、息恒循の教学書で学んだ数々の断片が{放|ほ}ったくられている。 依然、大きな努力はせず、{己|おの}の命はこの…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第8回

傍観者 エセラ、九歳。 二年ぶりに、後裔記を書く。 あれから、二年……。 二年経ったぼくは、やっぱり真相のことを考えていた。 ほらまたァ! ぼくの頭の中に、真相と題した映像が、映し出されている。 人は、無力だ。 その無力さは、考えれば考えるほど、怖…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第7回

エセラ、別れの空 エセラ、七歳。 一年ぶりに、後裔記を書く。 ここの海は、{男神|おがみ}のような荒くれたところもないし、女神のような神秘の{煌|きら}めきもない。 港でも町でも、気遣いを覚えるような人通りを見たことがない。 だからぼくは、この港町か…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第6回

本気の亜種記 エセラは、燃え尽きるように、後裔記を書いた。 それを、亜種記と呼びたかった。 だが、呼ぶ前に、燃え尽きた。 これを最後に、また暫く、後裔記のフォルダを閉じる。 天、{曰|いわ}く。 和の{民族|エスノ}は、先人たちの努力労苦をよく敬し、…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第5回

お試し亜種記 一年が経ち、エセラは六歳になった。 矢庭に後裔記を書きはじめ、物語は、唐突にはじまった。 とうさんに、言われた。 「おまえたちには、生まれ持った美質がある。 それを、護り抜け。 そのためには、武の心が必要だ。 それを、養え。 そのた…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第4回

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/第4回 2024.1.2 配信 五歳が見た夢 宇宙人や幽霊との遭遇より、もっともっとびっくり驚く未知の世界がある。 それが、子どもたちの夢の中だ。 エセラ、ある日の後裔記。 また、夢を見た。 目が覚めたとき、ぼくは、その物語を正…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第3回

エセラ、五歳 『ボクは5才』 そんな映画を観た。 夢の中で。 いつもの巻き巻きモニター。 目が覚めて、{現世|うつしよ}の巻き巻きモニターで、調べてみた。 あった。 二六三〇年の「こんにちは」の年、実際に上映されていた。 ぼくの脳ミソは、どこからその…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第2回

エセラの日記 エセラの十三歳から十四歳のころの物語である。 彼は今、十五歳だ。 彼が今どうしているかは、なぜか知りたくない気分もある。 最後に読んだ少年エセラの後裔記は、まるで、本当の日記のようだった。 どこかの爺さんが、少年時代のことを懐かし…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第1回

まえがき わたしは、テレブ。 七十六才。 {美童名|みわらな}は、サーレ。 五十八年前、ズッケロさんとペーペとわたしの三人で、{仕来|しきた}りの旅に出た。 そのズッケロさんが、亜種記を編んだ。 十四年前のことだ。 ズッケロさんの{武童名|たけらな}は、…